lemonさんの想像力は日々暴れているようです
Lemon
lemonさんはお寿司屋さんで考える
れむのは、現在、頼んだ納豆巻きが来ないことに、苛立ちを覚えている。
こうして、何かが遅い時や、何かを不思議に思ったとき、れむのが持つ想像力は、そのクールな面とは裏腹に、この世のものとは思えないほど暴れ始める。
米不足ではないだろう。周りの席を見ると、マグロの下にしっかりと米がついている。
しかし、マグロの気持ちを考えると、少しかわいそうになってくる。そのマグロをマグロAとしよう。
マグロは泳ぎ続けないと死んでしまうと聞く。マグロAは、マグロBと親友だった。二人は、あまり体力のないマグロで、死ぬまで一緒に泳ぎ続けようと、心に決めていた。
しかし、マグロBがある日、あみに絡まってしまった。『B!大丈夫か⁉︎』Aはその場をぐるぐると泳ぎながら、マグロBを助けようと、必死に策を練る。しかし、悩んでいる間に、マグロBの引っかかったあみは漁船に引き上げられてしまった。マグロBは『寿司に……なりたいな……』と思いながら、そこで息絶えた。しかし、Bの夢は叶わなかった。その漁船は、マグロではない魚を捕るための漁船で、マグロBの亡骸は、海に捨てられてしまったのだ。マグロAは、親友を失い、悲しみに暮れながら、それでも泳ぎ続けた。そしてある日、マグロAは、一本釣りで釣り上げられてしまう。それでもマグロAは思うのだ。『Bがなりたかった寿司に……俺はなりたい………』と。そして今、こうして寿司になって、親友であったマグロBの願いを叶えてから、天国へ………
おっとっと、ついつい脱線してしまった。今考えるべきは、マグロに関してではなく、納豆巻きに関してだ。
確か、材料が足りないのかもしれないという考えだったな。
あ、もしかしたら、今、世界は納豆不足に陥っているのかもしれない。
納豆を作るためには発酵させる時間が必要だ。その時間を待っている間に、もう完成している納豆たちを、人類は食い尽くしてしまったのかもしれない。
そして、納豆不足は、日々納豆を大量に消費している国である日本から始まり、納豆を愛してやまない他の国でも深刻な問題になっており、世界中に広がっているのかもしれない。はっ、もしかしたら、もうどこかで戦争が勃発しているのでは⁉︎もしかしたら、日々どこかの子供たちが、納豆が欲しいと悶え苦しみ、日々街のどこかから納豆を寄越せと言う声が、怒号となって響いているのかもしれない。なんて悲しい世界なんだ………子供たちが納豆を食べることができないなんて………
いや、むしろ、納豆ではなく、ノリが不足しているのでは?
ノリは海藻からできていると聞く。その元になる海藻が、この頃ストライキを起こし『ノリになるくらいならこの地球とはおさらばだ』と地球から旅立っているのかもしれない。そして、その地球から旅立った海藻たちが、宇宙で高い知能を身につけ、その知能を子孫に受け継ぎながら繁殖したのちに、まだ地球で酷い目にあっているワカメ、コンブ、メカブと共に連合軍を築き上げるのかもしれない。こうして人間たちに強い恨みを覚える海藻たちは『よくもコケにしてくれやがったな!』ではなく『よくもノリにしてくれやがったな!』と雄叫びをあげながら、人類をノリにする光線を町中に放って、今まで自分達を散々食ってきた輩を、知性のないただのノリにして、人間の次の霊長類として、地球に君臨するのかもしれない。
しかし、10分ほど待ったのちにしっかりと納豆巻きは僕のお腹に入ったので、きっと今日の日本は平和なのだろう。
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