机から横を見ると・・・

@junjun1694

三年前と今

 三年前、自分の机から横を見ると彼女がいた.2ヶ月前は何も知らない人であったのに.運命というのを私は信じないがとんでもないことを仕出かすそうで、二人を引き合わせたのだろうか.その彼女もよく横を見ていた、というよりは眺めていた.ただ二人で違うことは彼女は窓の外をずっと眺めているが自分は彼女を視界に入れつつ考え事をしながらなにかいいアイディアがないかとちらちら外を見ていたことであった.まぁ純粋に外を見たかっただけであるのに彼女を見ているのかとクラスメートにいじられることもあった.まぁ半分そうなんだけどと面倒に言い訳をしつつ、それでも外を見ることはやめなかった.

 三年前、自分の机から横を見るとみんなマスクを付けていなかった.食べるときは向かい合った.今となっては叶えがたい夢と化してしまったわけであるがあの頃はまだ顔をまじまじと見る機会が多かったなと思う.とはいっても唾が自分の弁当に入ることへの嫌悪感は自分の中であからさまに増大した.今となっては違和感の塊と化してしまっていて悲しい思い出になってしまった.

 三年前、自分の机から横を見るとみんな黒い制服を着ていた.そういえばそうだ.入った頃はとてもきれいに見えた制服も着なくなってみるとダサいの一言で済ますようになってしまった.黄色の帽子も同じなのだが.

 三年前、自分の机から横を見ると遠くに陸橋があった.絶え間なく渡る車に気が滅入ることもあった.この時間にあの人はなぜ橋を渡ることになったのだろうか.暇なのか、そうだろう.ハヨ帰りて〜よと呟きながら授業開始を待っていたりもした.車って意外と時間帯によって色が変わる気がして、昼間は色豊かな車が通りとてもカラフルであった.夕方に部活で通るときはそんな気がしないのだが.

 三年前、自分の机から横を見るとさらに遠くに電車が走っていた.15両のとんでもなく長い電車が遠くから見ると窓を横切るのに時間がかかって、鬱陶しいと思っていた.たまに来る10両がちょうどよい長さでラッキーと思いながら見るのだが、いざ帰りに乗ってみるとなんで15両じゃないんだと怒るわけである.近くで見る分には速くてかっこいいのだが.

 そして

 今、自分の机から横を見ると彼女はいない.そういえばあの後別れたまま他の人と付き合っている噂はよく流れる.元彼からの一言と尋ねられて言えることは特にないの一点張り.特にないって何かあるけどいうほどのものではないよという感触があるが本当の本当に言いたいことはないのに、ないと片付けるのも耐えられなくて特にないがいつの間にか土の中から滑り出てしまうわけである.バカみたいなことを言い合うのも悪くない気もするが今となってはただの阿呆なコトに退いてしまったわけである.その代わり横を見ると友達が一杯いる.わからないところはすぐに聞けてありがたい.

 今、自分の机から横を見るとみんなマスクを付けている.持論なのだが元々潔癖症の人は何も生活習慣を変える必要がないわけで、あの感染症は普通の人の意識をあげたんですよね.なかなか興味深い.でもいいこともあるそうでひげが生えてもそらなくてもいいとか口周りをきれいにする必要がないとか、一方でマスクはみんなと一緒の白色であったりしてあんまり個性を感じなくなった気もする.逆に個性を出し始めた人もいるが、、、.

 今、自分の机から横を見ると遠くに陸橋がない代わりに操車場がある.そう、教室が変わっただけである.そして窓から動いているものが姿を消してしまった.動いているのは大量のムクドリと川だけで何と虚しくなりけり、と感嘆の思いがある.車は一切見なくなったしでもどこからか救急車の音は聞こえたりもするが姿はない.ここは残念なところであったりもする.しかも止まっているのは8両くらいの特急電車だけ.おいら金ないよーと叫びながら一日中動かないニート電車を蔑むのであった.

 今、自分の机から横を見ると更に遠くに富士山がある.いつも思うのだが関東の人には日の出と富士山は一緒に見られないわけで可愛そうである.よく富士山から日の出を見て感動する人はいるが太陽と富士山のほうが断然いいだろうと思うのは私だけなのだろうか.


 3年間で変わったところしかない.そして三年前は違和感だらけしかない.なかなか時間は面白いものであるわけである.

 



 

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