うわぁ、本当に行っちゃったの? 過去に?

 その時ヨハネスが視界に入り、さっきの言葉を思い出した。

 ――さっきは真ん中から少しずれてたような……

 場所は移動しない――ってことは、空間座標は変わらない……

 え!? めっちゃマズいんじゃない!?

 そこまで0.5秒で考えたあたしは、急いで「強制停止」のボタンを押した。

 装置の上の空間が揺らぎ、無事に二人の姿が現れた。二人とも目をぎゅっとつむり、鼻をつまんで唇を引き結んでいる。

「無事戻ったよ」と声を掛けると、二人は目を開けた。

「でかした、茉莉。助かったぞ。わしとしたことが迂闊じゃった」

「い、一体何が。なんで、宇宙空間に放り出されたんですか!?」

「あー、やっぱりそうだったんだ。1,2秒行ってたけど、無事で良かったよ」

「転送後、数秒は元の空間の力場フィールドをまとっているから助かったんじゃな」

「あのー、一体何が起こったんでしょうか? 場所は動かないはずなんですが」

「設計通り、場所は動いていない」

「1年前だったら良かったのにね」

「?」

「宇宙空間じゃったが、正確には地球軌道上じゃったのだよ。白線が引いてあったじゃろ」

 そんなはずはない。おじいちゃん、よくこんな状況で冗談が云えるな。

「まだ分からんか? 半年前の地球はには無かったのじゃ」

「ああ、そうか! 公転か!」

「そう、つまり半年前の地球は、太陽を挟んだ向こう側にあったのよ」

 実験の時、ヨハネスの位置が少しずれていたのは、自転の影響を受けたからだ。

「公転と自転の影響を計算させるプログラムを組み込まないといかんな」

「でもそれを云うなら銀河自体も回転していますし、宇宙空間が拡がっていますからね」

「太陽を基準にして相対的に位置を割り出せばよいじゃろう。そうとしてもかなり面倒な計算になるな」

 めげないなぁ。まだ続けるつもりだ。でもその前にやることができたようだ。

「あの、お二人さん? プログラムよりもハードの方が大変みたいよ」

 偉大なる発明品のあちこちから黒煙が立ち上っていた。


                                     完

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松村博士の大いなる発明~タイムマシン 藍河 峻 @Chiharun

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