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「やっぱり、わしがやろう。開発・設計者としての責任もあるしな」
「いえいえ、やっぱり危険な任務には、僕のような若者が当たるべきです。博士にはタイムマシンを開発した、と云う素晴らしい業績がすでにあるのですから」
「いやいや、わしが」
「やっぱり僕が」
ダチョウ倶楽部のギャグが始まるかとも思ったけど、埒が明かないのであたしが助け船を出した。「なんなら、二人一緒に行けばいいんじゃない?」
「む。確かにそうだな。スタートボタンを押すだけなら、茉莉にもできるな」
「そうですね。さすが茉莉ちゃん。設定は僕らでやるから、スタートだけ頼むよ」
「リモコンも検討すべきじゃな」
二人は装置に繋げたノートパソコンの前に行き、キーボードをカタカタ押し始めた。
「未来には何があるか分かりませんから、まずは過去に行ってみませんか」
「そうじゃな。何かの拍子でこの場所に何かが入ってくるかもしれんからな」
二人の会話を聞いて、思いついた疑問を投げてみる。「もしかして、場所の移動はできないの?」
「そうなんだよ。下手に移動してそこに何かがあったら、どうなるか分からないからね」
「うむ、次に開発すべきはタイムビジョンじゃな」
「そういうことを踏まえて、半年前辺りは如何です?」
「そうじゃな、半年前はここには何もなかったからな」
「ねえ、半年前にはその時点での博士たちがいるんじゃないの? っていうか、半年前に未来から来た博士たちとは会ってるの?」
半年前に博士たち自身に会っていないのであれば、実験は失敗したと云うことになるんじゃないの?
「過去の自分たちと同じ空間に居ることによって、ドッペルゲンガー的なことになってもマズいからね」
確か、自分のドッペルゲンガーを見ると、近いうちに死ぬ、だったかな。
「でも半年前って、僕らは出掛けていて、ここには居なかったんだよ」
そういえばその頃、二人で何かの取材旅行と云って1週間ほど研究所を空けていたことがあったな。
「まさか、今日のこの実験のために出掛けていたとか?」
「いや、たまたまだよ。――とりあえず、10分で戻ることにします。さあ、設定は済みましたよ」
「じゃあ、茉莉。合図したらスタートと書かれたボタンを押してくれ」
「これね。ね、ほんとに大丈夫なんだろうね」
「ヨハネスは無事だったじゃろう」
「楽しみに待っててよ。10分後に戻ってくるから」
「うん。行ってらっしゃい」
二人は4本のバーで囲まれた空間に入った。
「では、茉莉、スタートじゃ」
あたしはスタートボタンを押した。
二人の姿が陽炎のように揺らめき、徐々に色が薄くなっていき、消えた。
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