第3話
『ースルメゲームに参加のみなさま―お早めに着席ください―これから神聖なる殺し合いが始まりますので―各自の個性や特徴、ポリシーを存分に発揮して―殺し合ってください―』
巨大なスルメの形のシンボルを頂上に置いた、高層ビル。
上空からの人口AIによる音声。
渡部美香は周囲を観察していた。
長髪だったはずだが、このゲームのために短く揃え、金色に染めている。
銀色の仮面を被った、スルメゲームの係員たち。
(ここに、弟を殺したヤツがいる・・・)
美香は記憶している。
二年前、これに参加した弟が、第三ステージまで行ってから係員に撃たれて死んだ瞬間。
(必ず見つけ出し、殺す・・・)
そのためにここまで来た。
「はーいみなさん! 500人が集まってくれましたねー。私が、今回のスルメゲーム第41回目を担当する、坂友冬美です! まだ、新人ですので至らぬ点もあると思いますが、よろしくお願いします!」
元気はつらつな女の子が出てきた。
ショートカットで黒髪、いかにも男受けしそうな丸い目。
「みなさーん、こーんにちはー!」
冬美は耳に手を当てる。
参加者から失笑が漏れる。
「このスルメゲームでは、みなさんに『真の強者』となってもらい、賞金500億円を総取りしてもらいます! 平等? 公正? そんなものは、クソのような価値しかありません! 強者のみが金を得る! それこそが、真の人間の世界のはずです!」
可愛らしい冬美からは、スルメゲーム社のポリシーが語られる。
「ガタガタうるせえんだよ!」
いきなりフランス系の男が怒鳴り、冬美はビクリと体を動かした。
「御託はいい・・・さっさと始めろ! こっちゃ生き死にがかかってるんだよ!」
「そうだっ、そうだっ!」
群集は怒鳴る。
「あ、あの落ち着いてください! みなさん・・・これは神聖なデスゲームです!」
「何が神聖なデスゲームだ!? 要は殺し合いだろうが!?」
「アドリアン・金田さん、落ち着いてください・・・!」
冬美の声におびえの色がある。
明らかに場になれていない新入社員のデスゲーム管理人だ。
一方、アドリアンは明らかに威圧や暴力に慣れている。
「こっちは500人からいるんだよ・・・! きっちり説明しろ!
「そうだっ、そうだっ」
「このファッキュー女!」
「な、なんてことを!? 神聖なるデスゲームを・・・! これ以上は、本当に撃ちますよ!?」
「やれるもんならやってみろ!」
「いい加減にしろ、お前ら!」
武藤は怒鳴っていた。
そして、冒頭の物語へと続く・・・・
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美香の眼の前に、鉄製の剣や槍、盾などが置かれている。
『―各自の個性に合った武器を選びましょう―間もなく、イカタコウニウニゲームの開始ですー』
武藤は、美香に話しかけ、
「君は盾にして、僕が槍にするというのはどうでしょうか?」
と持ち掛けた。
武藤の胸には、イカのワッペンがつけられている。
「・・・なんで、あんたと組むのよ?」
美香は警戒していた。
さっき、冬美を助けたが、裏を返せばそれほどまでにスルメゲームへの思い入れが強いということだ。
「見た所、あなたは信用できそう・・・というより、僕には友人がいません。さっきので、アドリアンを敵に回してしまった・・・正直、仲間が欲しいというのが本音です」
「だからって、私にはメリットがないわ・・・貴方はすでに目立っている」
こういうゲームで、”目立っている人間”というのはすでに不利だ。
「ええ、ですのであくまで紳士協定です。ゲームが始まったら、お互いは攻撃しない、というのでどうでしょうか?」
「・・・あんたが背後から突いてくる可能性は?」
「そこまでの馬鹿なら、一回戦も持たないでしょう。どの道、この『イカタコウニウニゲーム』では、半数近くが死ぬんです・・・どうですか?」
美香は考えていたが、実際に他にいい策もなかった。
冬美は、
「はーい、それでは。イカとタコさんチームと、ウニさんチームに分かれてもらいます! イカタコさんとウニウニさんで、交互に『攻撃タイム』と『防御タイム』に分かれてもらいますよー!? 『防御タイム』なのに、攻撃しちゃった人には死んでもらいます! それでは、はりきって行きましょう!」
スルメゲーム! スヒロン @yaheikun333
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