番外編IFその2~もしも、セヴランのウソが大公の耳に入っていたら~ 俯瞰視点(7)

「……………………」


 あれから1か月後。セヴランは自室におり、放心状態でベッドに転がっていました。

 彼から活気を奪ってしまった理由、それは評価の急落。


 ――嘘つきな人――。

 ――情けない人――。


 今やセヴランは、その2つを象徴する人物となってしまっていました。

 侯爵家の嫡男。裕福な家の次期当主。そんな好条件があっても、それを0――どころかマイナスにしてしまうものがあるため、相手にしてくれる人はいません。下級貴族でさえも、近づかない存在となってしまいました。

 そして更には、


『申し訳ございません。快復したとしても、娘を送り出すことはできません』


 療養中のナディーヌに泣き付き関係を戻そうとしたものの、失敗。丁重に断れてしまいました。

 そのため婚約結婚できる可能性は0となってしまい、セヴランは絶望していたのです。


「…………こんなことに、なるなんて…………」


 力なく、天井を見上げていたセブラン。彼はポツリと、呟きました。


「…………相手が、誰もいなくなってしまうなんて…………。新たな日常が、早々に崩壊してしまうだなんて……。こんなことなら…………嘘をつかなければよかった……」


 あの時、こうしていたら――。違う未来になっていたのに――。

 そう呟きますが、いくら後悔してもやり直しはできません。


「どこだ……? どこで、俺は間違えたんだ……? あの時、ナディーヌが拒否しても縁を切るべきではなかったのか……? そもそも、エリザベットとの縁を切るべきじゃなかったのか……? 分からない……。分からない……っっ! 俺はっ、どうすればよかったんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!! 誰かっ、誰か教えてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……!!」


 セヴランは呻き叫びますが、誰も答えてくれる人はいません。

 そのため、ずっとこのまま。


 エリザベットを裏切り、浮気をした男。更にはエリザベットをこき下ろし、関係解消後もバカにし続けた男。


 そんな彼はその後もいつまでも、一生涯――。こうして後悔と絶叫を続ける羽目に、なってしまったのでした――。




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婚約者を奪われて悔しいでしょう、ですか? いえまったく 柚木ゆず @yuzukiyuzu

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