証拠を探しに行くことにします。
「そういえば昨日も毒物っておっしゃってましたが、どんなものなんですか? ゲームには全然出てこなかったんですが」
「なんでも『ヒロイン』だけが買う事の出来る特別な『蜜』って言ってたよ。差し入れられた毒物入りの食物を分析してもらったところ、とある致死性の神経毒を含む植物の蜂蜜だった」
「致死性の毒!?」
驚いたように訊き返すエステル。心なしか顔色が青ざめているようだ。
そうか。僕は仕事がら毒物を扱うことも多いけど、普通の人には縁のないものだよね。
ちょっと怖がらせてしまったかな。
「うん。使い方によっては薬になるけど、よほど詳しい専門医が慎重に扱わないと大変なことになるね。他の植物の花粉は一切検出されなかったから、温室かどこかでわざわざ薬物として使用するために作られた特殊な商品だと思うよ」
「そんな恐ろしいものをどうやって……」
「下町にある『月虹亭』っていう雑貨店の中に、『ヒロイン』専用の秘密のお店があって、そこで買っていたようだよ」
ここまで聞いたエステルが、たまりかねたように口を挟んだ。
「そ……それって月と虹の絵の看板がかかってる可愛らしいお店ですよね? その『女神の蜜』ってゲーム内で『好感度アップアイテム』として売られていた特別なアイテムです。それを使って作ったお菓子を攻略対象者に食べさせると好感度が上がるんです」
「好感度が上がる、というのは相手の心に働きかけて自分に対する好意を無理やり持たせるって事だよね? それって早い話が向精神薬を使って相手を洗脳しているって事じゃない?」
「そんな……」
「実際、この植物の毒って昔は媚薬として利用する人もいたらしいし」
「い、言われてみればその通りですよね。どうして気が付かなかったんだろう」
蒼ざめたまま震えるエステルはことの重大さを理解したらしい。
「それではもし本当に下町にその『月虹亭』というお店があって、そこでクリシュナン嬢しか入れないスペースに『女神の蜜』を売っていれば、あなたたちのお話が全くの嘘ではない、という証拠になりますわね」
冷静にピオーネ嬢。
「もしよろしければ今から行って確かめませんか? そのような危険な薬品が売られているのであれば、何らかの犯罪が絡んでいるのでしょうし、早めに調べるにこしたことはありませんでしょう?」
なるほどね。信じてほしければ証拠を見せてって話。
ちょうど良い。早めに『蜜』とやらを入手して先生に分析してもらえば色々と動きやすくなるかもしれないし、今から行ってみることにしようか。
「そうだね。それじゃ行き違いにならないようにコニーに伝言残して下町行ってみようか」
殿下に出くわさないように気をつけなきゃいけないけど。
とりあえずコニーには置手紙を残して三人で下町に行ってみることにした。
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