巻き込むことにしました。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ、それじゃ生徒会室に行こうか」
ほっとした笑顔でお礼を言うピオーネ嬢とエステルをそのまま生徒会室に誘うと、二人とも驚いたように目を丸くした。
「勉強会。本当にやっとかないと、後で嘘だったって知られたら困るでしょ。控室借りて、ちょっとでも勉強しよう」
「それはその通りですが、お言葉に甘えてよろしいのですか?」
困ったように訊くピオーネ嬢。
「大丈夫。転校生が慣れるまではきちんとお世話するようにと学園長から申し付かっているから、これも仕事のうち。変に遠慮されるとかえって困るから、ついてきて」
「ではお言葉に甘えます」
冗談めかして言うとようやく納得したのか、二人でうなずきあってついてきてくれた。
三人で生徒会室に行くと、案の定コニーは多忙のようだった。
「殿下たちが強引に二人を下町に連れて行こうとして困ってたみたいだから、とっさに勉強会やるって言って連れて来ちゃったんだよね。少しだけ控室借りていい?」
「好きにしろ。俺もこの書類の処理が済んだらそちらに行く」
許可をもらって控室に入る。
「何の勉強する?」
「殿下たちにも今日はマナーの勉強をするとお話してしまいましたし、マナーの基礎をお教えしようかと。まずはカテーシーの練習ですわね」
「あの……ポテスタース卿、パブリカ様、先ほどから本当にありがとうございます。私……いえ、わたくし皆さんにお話したいことがあります」
何を勉強しようか話し始めるとエステルが意を決したように切り出した。
「クリシュナン嬢、下位の者が自分より高位貴族の話を遮って自分の話をしてはいけませんよ」
「わかっています。それでもどうしてもお話したい事が……人の生命にかかわるんです」
困り笑顔でたしなめてくれるピオーネ嬢に対し、エステルは真剣な顔で訴えた。
「昨日の話、パブリカ令嬢にも協力していただくって事かな?」
たぶん、人が好いピオーネ嬢なら一生懸命話を聞いてくれるとは思うんだけど……
とても素直で善良なこの人をこの非常識な事態に巻き込んだら、必ず怖がらせてしまう様な気がする。それに、あまり腹芸ができる人じゃないんだよね。
巻き込んでしまって大丈夫かな?
「はい。今日の放課後、殿下に下町に遊びに行くように誘われたのも『シナリオ』にあった『イベント』なんです。やっぱり女神が物語を強制的に実現させようとしているのではないかと……今回は避けられましたが、ポテスタース卿もスキエンティア様もクラスが違いますし、同じクラスで事情を知る方に協力していただかないと、取り返しがつかない事になるかもしれません」
「いったいどういう事ですの? それに人の生命がかかっているとは……??」
確かに、僕やコニーが一日中貼り付いていられる訳じゃない以上、同じクラスで力になってくれる人がいないと対応しきれないかもしれない。
致し方ない。申し訳ないが、この際ピオーネ嬢も巻き込むしかないのかもしれない。
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