役割分担しました。
今後の目標が決まって落ち着いた様子のエステル。
あとは僕たちのやるべきことを考える番なのだが……
「正直に言うと、ポテスタースの『 主』についてもさっぱりわからん。古い伝承には出てくるが、もう長らく信仰されていないからな。そちらも目的や意図がわからんと動きようがない」
どうやらあの根性悪女神のイシュチェルだけでなく、僕の『主』である
まぁ、僕の『主』についてはわからないことだらけだから仕方がない。見た目はどう考えても邪神っぽいし。臭いもすごいし。
「ポテスタースはその女神イシュタムとは好きに話が出来るのか?」
「たまに夢の中で話しかけてくる事がありますが、こちらから呼び出す方法についてはさっぱり。自分の臓物がこの世界そのものになってしまっているので、ほとんど身動き取れないようですね。下手に動いたり力をふるったりすると、臓物内の世界にいる者たちがえらい目に遭いますので。ただ、眷属である僕を媒介に力の一部を顕現させることはできるみたいです。その条件はよくわかりませんが」
「お前、自分の主の事なのにあまりよくわかってないんだな」
「だって知らない間に眷属にされてましたし。僕、自分が死んで眷属にされてたって三日くらい全然気づかず普通に生活してたんですよ」
「ヴォーレ、お前……もともと抜けてるところはあったが、そこまで能天気だったか? まさか脳を蘇生しそこなったわけじゃないだろうな?」
「やかましい。なんか動きが鈍くなったなとか思ってたけど、薬盛られた後遺症だと思ってたんだよ」
「こら、また脱線してるぞ。それにしても、ポテスタースは本当に主と連絡取れないのか?」
「すみません。もう一回死ねば出てくるかもしれませんが、試してみるのは嫌です」
「当然だ。たとえ冗談でもそんな言葉は口にするな」
コニーの語調が思いがけず鋭い。
いつもの冗談めかした辛辣な口調ではなく、まっすぐに目を覗き込みながら真剣に言われてしまった。ちょっと不謹慎だったかもしれない。
「う、うん。ごめんね」
「とりあえず、クリシュナン嬢は下位貴族として必要な教養と常識を身に着けること。ポテスタースは自分の主と連絡を取る方法を模索すること。スキエンティアは……虫よけだな」
「虫よけ?」
「女神云々とは関係なく、貴族社会に不慣れなクリシュナン嬢を食い物にしようと寄ってくる連中も男女問わずいるはずだろう? そいつらに好き勝手やらせてしまえば、クリシュナン嬢が秩序を混乱させて誰かを破滅させることにつながりかねない。そんな輩が湧いてこないように見張ってやってほしい」
「なるほど」
「あとは私と一緒に女神どもの伝承を片端から調べてクリシュナン嬢を元の世界に戻すための情報を探すことだ」
「……私は生徒会の業務もあるのですが?」
「まぁ、がんばれ」
「ごめんね、あんまり無理しないで。僕も手伝えることは手伝うし、早めに主と話できるように色々試してみるから」
とにもかくにも今後の方針と当面の目標が決まったので一安心。
すっかり暗くなってしまったので、その日は大慌てで解散して家路につくこととなった。
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