第26話 別れ

「じゃ、私は未来に帰るから」


 遂にレイカさんとの別れの日がやって来た。


 ルーラオム家の権力を存分に利用させ、王国一のヒーラーに治してもらったので、胸の傷は元通りだ。


 レイカさんはどうやら、魔王と雨の魔女を倒せば未来に帰れるという条件で、この時代に召喚されたらしい。


 そんな無理難題を押し付けてくる神? には文句の一つでも言いたいが、正体が分からないのでどうすることもできない。


 ゼストさんは、一人で流浪の旅に出てしまった。また新しい相棒を見つけるためだそうだ。


「どうかお元気で。きっと未来の異常気象も、雨の魔女が死んで解決されているでしょうから」


「そうだろうね。アレスくんも、もう一生分は戦っただろうから、ゆっくり過ごすといい。あ、そうそう。自伝でも書いて後世に遺しておくれよ。未来に帰ったら読みたいからさ。あと、私は巨乳美人だという設定で書くように」


 レイカさん……あんなに強いのにそんなコンプレックスを抱いていたのか。


「というのは冗談だが、なにかアレスくんとの冒険を思い出せる証拠が欲しくてね。頼むよ」


「はい。書きます! 長大で面白い奴を! 和国語にも翻訳されるような、名著にしてみせます!」


「その意気だ。じゃあな、アレスくん。これからは、というか、これからも、自由気ままに生きることだ。人生そう長くないのだからね」


「はい。レイカさんに救って頂いたこの命、大切に使います!」


「では、いずれあの世で会おう」


「はい、先に逝って待ってます」


 俺たちは固い握手を交わし、別れた。


 余生は優雅に、アレグレット城でヴィヴァーチェと過ごすこととしよう。


 晴れ渡った空を眺め、紅茶でも飲みながら。

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外れスキル【廃屋召喚】、実は未来の建物を召喚できるチートスキルでした 川崎俊介 @viceminister

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