第110話 バカVSまぬけ
いよいよラスボス戦ですわ。
最終回ですわ。
今までお付き合いいただき、ありがとうございました。
なかなか主人公が最終回のラスボス戦で、感謝の言葉を書くようなもんじゃねぇーけど、それはアタイの味なのです。
読んでいただいた皆様方、ありがとうございました。
何度も書こう。ありがとうございました。
アタイは念じる。
どうもありがとうございました。
めちゃくちゃ心から感謝するから、このラスボス戦はパスしていいっすか?
なんか負けそうなんだよなぁ〜。
おめでとう、という拍手で終わりにしてくれねぇーかな?
神田英二。
バハムートの大きな羽が生えていて、髪はマグマのように燃えている。それにリヴァイアサンのような尻尾が生えている。おまけに右手が凍っていた。
盛り盛りのヴィジュアル。
闘気が溢れ出して、真っ黒の煙が空に向かっている。
めっちゃ強そう。
つーか、強いんだよ。
前に戦った時、撃沈したもん。
「小林光太郎」
と英二が言った。
「いや。ナオヤ・シューベルト」
言い直さなくていいよ。呼び方なんて別にどっちでもいいんだから。
「どっちが魔王にふさわしいか決着を付けよう」
「別に魔王になんてなりたくねぇーよ。お前がなればいいだろう。だから俺はミクを貰う」
「俺だってミクの方がいいわ」
と神田英二が激怒する。
「お前、前世でミクを殺してたくせに、よく言えるな」
「気づかずにバカなことをしただけだ」
「それってまぬけって言うんじゃねぇーの?」
と俺が言う。
うわぁ〜めちゃくちゃ怒ってる。
神田英二から黒い煙が溢れ出している。
「たしかにお前は強い」と俺は言った。「だけどお前でも魔剣を持った俺には勝てない」
「お前まさか、あの伝説の魔剣を抜いたのか?」
バグ呑みで吸収していた魔剣の柄を取り出す。
「折れちゃってるじゃねぇーか」
と神田英二が驚く。
「ブオーン」
と擬音を俺が口にする。
柄を振り回す。
「ブオーン、ブオーン、ブオーン」
「やべぇー。すげぇバカがいる」
と神田英二が言う。
「この魔剣は目に見えねぇーんだ」
「……」
「ブォーン」
「バカじゃねぇーの?」
俺はミクを見た。
彼女が逃げる時間稼ぎが出来たらいいと思って俺は喋っていた。
俺達が喋っているうちにミクは走って逃げていた。
「ライトセーバーって知ってるか?」
と俺は尋ねた。
「もしかして魔剣がライトセーバーなのか?」
「ライトセーバー知ってるか? って聞いただけだ。こんなガラクタがライトセーバーなわけねぇーだろう」
俺はゴミを捨てた。
「ふざけてんじゃねぇーよ」
神田英二から氷の塊が発射される。
鬼才小林光太郎VSまぬけの戦いが始まった。
そして終わった。
終わりました。
いやー、余裕でしたわ。
だってアイツの攻撃スキルが無効化されますねん。
ノーダメージですわ。
どんな攻撃されても俺の目の前で攻撃スキルが消えますねん。
そりゃあ、さすがに初めはビビりましたわ。
アイツの攻撃、すげぇー早いんだもん。
氷が飛んで来て、避けて避けて、それでも避けていたら、何発目かに命中してしまう。
だけど攻撃スキル無効化が発動して、俺はノーダメ。
「グハハハハハハ」
俺は笑ったね。腹を抱えて笑ったね。
どれだけ強い攻撃をしてきても、連射してきても、無効化されますねや。
「お前に俺は倒せない」
勝つ事を確信してから、宣言したね。
「お前は弱い。ゴミ以下だ」
宣言したら、言いたくなって敵役みたいな事を言っちゃったね。
「お前が魔王になる? その弱さで魔王になるなんて? グハハハハハ。笑わせてくれるわ。ミクは俺のモノだ。神田英二よ。お前にはやらん。グハハハハハ。俺こそが世界最強だ」
調子に乗ったね。
乗りまくったね。
だって相手の攻撃が効かないことがわかってるんだもん。
調子にだって乗らさせてください。
グハハハハハという笑い方もさせてください。
「俺が魔王になるグハハハハハ」
と俺は言った。
「お前みたいな卑劣な奴を魔王にさせない。俺がミクを必ず守る」
神田英二が言った。
「それじゃあ攻撃を撃ってみろ」
俺が言う。
炎とか氷とか、黒い玉みたいなモノが飛んで来た。
全て俺の目の前で消える。
「グハハハハハハハ」
俺氏、大爆笑。
こんな愉快なことあるものか。
ラスボス戦でノーダメージ。
アチラさんの攻撃は効かんけど、コッチの攻撃は効いたね。
むちゃくちゃ効いたね。
英二は俺に攻撃をしても意味が無いと分かり、逃げるのみ。
「グハハハ」と俺は笑いながら攻撃、攻撃。
まぬけの英二も物理だったら効果があるんじゃないか? って気づいて接近戦に持ち込もうとして来たけど、俺は距離を詰めさせなかった。
アイツが近づいてきたら離れたね、そして攻撃しまくったね。
ココまで来たんだったらノーダメージでクリアしたい、という気持ちが芽生えたのだ。
手も足も出ない英二に攻撃を浴びせた。
彼は地面に倒れた。
もう力が無いのか、ヴィジュアルが人間の姿に戻っていた。
「俺の負けだ」
と英二が天を見上げて言った。
「悪かった。前世でお前達を殺して悪かった」
と彼が言う。
「ずっとお前の友達でいたかった。ずっとミクの恋人でいたかった」
英二が泣いていた。
「俺もお前の友達でいたかった」
と俺は言う。
少年漫画なら英二は味方になるのかもしれない。
でも違う。これは少年漫画じゃない。
「好きな女の子を殺されて、母親を殺されて、自分も殺されて、お前を許すことなんてできねぇーよ。マジで」
最大級の魔力を込めて、俺は茶玉を放った。
巨大なとんがりコーンが英二に突き刺さり、この異世界の惑星を少しだけ割った。
『魔王に成長しました』
と脳内で声が聞こえた。
さすがに倒した後は魔王っぽくグハハハと笑えなかった。
俺達は友達にも仲間にもなれたんだろう。
だけどアイツは気づかないうちにバカな事をしていた。
殺せるのなら、殺す。
それが俺の責任だった。
アイツを生かすという選択肢は俺にはなかった。もし生かしたとして、大切な人がまたアイツに殺されたら、それは自分が見逃したせいだからである。
魔王城を壊す。
ドドドド、茶玉で破壊する。
大きなビルが消えた。
日本があった場所が消え、砂漠が一面に広がっていた。
もう、この世界に日本は無い。
お嬢も田中も妹も内藤さん達も地球に帰れたんだろう。
俺はミクを探した。
「ミク」
と叫んだ。
彼女が岩から顔を出す。
ポニーテールが可愛くて、ずっと好きだった女の子。
「倒したの?」
「倒した」
と俺が言う。
「転送装置は?」
「城ごと壊した」
と俺が言う。
「よかった」と彼女が言った。
「私達も帰ろう」
とミクが言った。
うん、と俺は頷く。
俺達が帰る場所は日本じゃない。
日本はすでに地球に戻っている。
俺達が帰るのは鬼ヶ島だった。
直子。前世の母親が統治していた島。
あの小さな島から俺は魔王として、色んな種族達が助け合いながら生きて行けるような世界にしたい。
「ミク。俺、魔王になったんだよ」
と俺は言った。
うん、とミクが頷く。
「俺のこと好き?」
「さっきも答えたでしょ」
「ワイ、もう我慢できまへんまへんねん」
ブッチューーーとキスをする。
友達を殺してしまった。
大切な人達は地球に帰ってしまった。
「光太郎、泣いてるの?」
「……エッチしよう」
と俺は言った。
前世からずっと君だけを守りたかった。
君だけを助けたかった。
「私、……初めてなの」
「かまへんかまへん。オジサンが舐め回したるさかい」
とエセ関西弁で俺が言う。
「変態」
とミクが恥ずかしそうに呟く。
無能で殺されて、生まれ変わって、ちょっとだけ変態になってしまったけど、俺は彼女を助けに来たのだ。
スキルを持たないバカ冒険者が女の子とキスしたら魔力が全回復するようになり、やがて幼馴染を救うために魔王と戦う(旧題:無能な馬鹿が世界最強) お小遣い月3万 @kikakutujimoto
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