第109話 ヒロインの救出

 窓の鉄格子を俺は握りしめた。

「ミク」と俺は呟いた。

 彼女は牢屋の中。体育座りをしていた。

 俺の声を聞いて窓を見上げた。

「……光太郎」

 彼女が立ち上がる。

「ナオヤ・シューベルト様……」

 ミクが言った。

 彼女は前世の記憶を取り戻しているみたい。

「光太郎でお願いします」

 ナオヤ・シューベルトって言われてもピンと来ない。

「どうしてココに光太郎がいるの?」

「ミクを助けに来たんだ」

 と俺が言う。

「あっ、ごめん。でも英二とまだ付き合っているんだったら、おせっかいだったよな?」

 彼女が首を横に振る。

「自分を殺した魔族と付き合える訳ないでしょ。バカなの? しかも牢屋に入れられているのよ」

「付き合ってたじゃん」

「殺すタイミングを探してたのよ」

「えっ?」

「記憶を取り戻す前に殺しておこうと思ったの」

「それじゃあミクって、ずっと前世の記憶があったの?」

「光太郎は本当にバカだよね。私はアナタにお仕えしてます、ってアピったじゃん」

「そんなアピールされてない」

 彼女は制服のスカートを捲って俺にパンツを見せた。

「有難てぇー。急にエロ。有難てぇー」

「覚えてないの?」

 俺は思い出す。


 前世の記憶。

 ドラゴンが死んだ時、俺は落ち込んでいた。

 その時にパンツを見せてくれたら元気になる、みたいな事を言ったような気がする。

 私はアナタのためなら何でもする、と彼女は言ってパンツを見せてくれた。

 そして今世の記憶にもパンツを見せてくれた記憶がある。

 小学生の時、通学路の帰り道で彼女がパンツを見せてくれた。


「私はアナタのためなら何でもするのよ」

「でも英二がダンジョンから帰って来なくなった時に落ち込んでいたじゃん」

「ダンジョンの中で覚醒したと思ったの。早く殺しておけばよかった、と後悔してたの。いつ魔族になった英二が光太郎を殺しに来るか、と思ったら後悔だってするでしょう?」

「後ついでに聞いてていいっすか?」

「なに?」

「俺のこと好き?」

「好き」

 鉄格子を破壊した。

「ミク。俺とココから逃げよう」

 高田ミクがクスクスと笑ってる。

「好きかどうか確認しなくちゃいけなかったの?」

「俺も好き」

「なにそれ」

 と彼女は言いながら俺に手を伸ばす。

 俺も彼女の手を握った。


 魔王城から脱出。

 彼女をお姫様抱っこする。

 ミクが俺の首に腕を回す。

「ココから離れて遠くまで行って、2人であんな事やこんな事をしよう。ずっとくっ付いていよう」

「光太郎」とミクが言った。

「ダメよ」

「えっ? なんで? あっ、ごめん。俺イヤなこと言った?」

「違う。転送装置を壊してない。日本を地球に戻して」

「忘れてた訳じゃないよ。舞い上がっていた訳じゃないよ」

 と俺が言う。

「転送装置ってどこにあるの?」

「魔王城の、どこか」

「魔王城ごと壊して逃げようか?」

「うん」


 ちょっと荒い事をしまっせ。

 地上に降りてお姫様を下ろす。

 闘気を解放。

 俺の体から黒い煙が溢れ出す。

 そして土の魔力を溜める。

 一撃に集中。

 みんなオラに力を分けてくれ。世界中の人から1円ずつ貰えればお金持ちになるようにパワーをオラに少しでいいから分けてくれ。

 魔力を溜めていく。


 特大とんがりコーン。

 俺は城に向かって撃ち込んだ。

 城に大きな穴が開く。


 禍々しい者が城から出て来た。

 やべぇー逃げよう。

 俺はミクを抱っこして、飛んだ。

「まだ転送装置は壊れてない」

「どうしてわかるんだよ」

「だって」

 とミクが指差す。

「日本のビルが見えてるもん。転送装置を破壊したら日本は地球に戻るんだよ」

「仕方がねぇ」

 と俺は呟いた。

「このまま逃げたかったけど英二と戦うしかねぇーか」

 

 俺は彼女を地上に降ろす。

「ミクはどこかに隠れといてくれ」

 いよいよ次のエピソードで最終回じゃん。

 これってラスボス戦だろう?

 勝った奴が魔王になってしまうんだろう。

 絶対に俺が勝つ。そしてミクとあんな事やこんな事をしてやる。

 でも魔剣も抜けなかったし、もしかして負ける可能性もあるかも。

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