最終話 二人の選択

 「ここが本当の大地母神様の神殿か」

 「ついに来たのね、私達」

 グランとアニーは、黄金の神殿の中を進んでいた。

 二人が歩いて行くと、やがて開けた場所に辿り着く。


 「ここが、クエストのゴールだな」

 美しい女性の石像の前に金の祭壇が置かれた部屋でグランが呟く。

 「うん、そして私達の明るい未来のスタート地点よ♪」

 アニーが拳を握り気合を入れる。

 「もう、課題とか言って嘘つくなよ?」

 グランがアニーに釘を刺す。

 「うん、いつも通り素直にグランを振り回すね♪」

 「いや、それもちょっと待てよな!」

 「たまには、グランが私をを振り回しても良いから♪」

 「それ、別に何の良い条件でもないから!」

 言い合いながら、二人で祭壇の前に並び立つ。


 すると、祭壇の上に茶色い土の色をしたペアリングが現れる。

 「凄い、この指輪から優しく暖かいけれど強い魔力を感じる」

 グランは指輪から母に抱かれる感覚を受けていた。

 女神の石像がグランに微笑んでいるように彼は感じた。

 「うん、私も感じる」

 アニーも指輪から魔力を感じていた、しかしアニーの方は石像が自分に対して

微笑みつつも圧を発している感じがしていた。

 「アニー、どうした?」

 グランがアニーを案じる。

 「……うん、ちょっと大地母神様に値踏みされてる感じがする」

 アニーは己の魔力で大地母神からの圧に抗っていた。

 「ちょ! 神様、勘弁して下さいアニーは俺の大事な人なんです!」

 グランがアニーを抱き寄せて、石像に叫ぶ。

 

 「……うん、グランの愛を感じる♪ 大丈夫、私は負けませんから」

 アニーは石像を睨む、そして指輪を手を掛けた。

 「神様、俺達を認めて下さい!」

 グランも指輪に手をかける、二人が指輪に手を乗せると二人の手に強烈な重力がののしかかる。

 「ぐあああっ!」

 「あああっ! 負けません、私にグランを下さいっ!」

 「俺も、アニーと一緒に幸せを掴みたいっ!」

 二人にのしかかるのは大地母神の試練、アニーが自分のお気に入りである地術師のグランに相応しい相手かを試しにかかる母なる大地の愛であった。


 「……ううっ、確かにアニーは強引で俺を振り回すのが欠点ですけど!」

 グランには、大地母神が直接彼の心にその娘で良いのかと問いかけられていた。

 「でも、俺はアニーが嫌いじゃない! 彼女が俺の人生を動かしてくれるっ!」

 グランが己の体から金色の光を発して抗う。

 「私も、常に私を案じて受け止めてくれるグランの優しさが好きですっ!」

 アニーも同じく体から金色の光を発する。

 「俺はアニーと!」

 「私はグランと!」

 二人で声を合わせ、互いの体から出る光を重ね合わせ金色のハート型のエネルギーを作り出す!

 「「一緒に、幸せになって見せま~~~すっ!!」」

 ハート形のエネルギーを大地母神の石像に叩きつけると同時に、二人は重圧を跳ね除けて指輪を掴み取った。


 その時、二人は草木が生い茂る爽やかな草原に立っていた。

 「……え、ここは一体っ?」

 「さっきまで、神殿にいたはず?」

 グランとアニーは当たりを見回して驚く。

 すると、大地が揺れて金色のドレスを纏った豊満な胸を持つ陶器の如く白い肌の美しい金髪の女性が筍が生えるように地面を突き破って現れた。

 「……二人の決心、確かに見届けました」

 女性は静かに語り出す。

 「……え、大地母神様っ!」

 「ほ、本物の神様って事っ!」

 グランとアニーは地面から生えてきた女性が、神殿の石像と同一人物であると気が付いた。

 「はい♪ 私が大地母神、あなた方の母です♪」

 大地母神が優しく微笑むと、グランとアニーはその場で固まった。


 「あなた達の事はずっと見ておりましたよ、よく頑張りました♪」

 大地母神が二人の手を取ると、アニーとグランの左手の薬指にはあの指輪が嵌められていた。

 「ゆ、指輪っ! これって、つまりっ♪」

 アニーが指輪を見て微笑む。

 「俺達、神様公認って関係になれたんですね?」

 グランの自分を見て感じ入る。


 「ええ、二人は永遠に結ばれましたこの絆は神でさえ別つ事はできません♪」

 大地母神が優しく二人に微笑んだ。

 「や、やった♪ 私、ずっとグランの事が誰かに取られないかって不安だった」

 アニーが泣きながら笑う。

 「アニー、俺もアニーの事が不安だったから誰にも渡さない為に戦って来た」

 グランも自分の気持ちを語る。


 「そのお互いを想い合う気持ちを忘れないでいて下さいね、産み、増やし、満たすべし♪」

 大地母神が二人を抱きしめると同時に、二人は元の神殿へと戻って来ていた。

 「……戻って来れたか、これでクエストは終わっりだな」

 「ええ、家に帰りましょう♪ 学園もあるし」

 アニーとグランは手をつなぎ、神殿を後にした。

 神殿から出て来た二人をノーム達が祝福した。


 「な、何て言うか凄い恥ずかしい」

 グランが照れる。

 「え~? 良いじゃない、当然の権利よ♪」

 アニーは逆にノーム達に手を振る、すると群衆の中から野良着のノームの老人が二人の前に現れる。

 「おめでとう、お二人さん♪ ところで、この街はどうする?」

 野良着の老人が二人に尋ねる。

 「一旦戻って、家族に話してみるよ学園も卒業したいし」

 「私も、グランと一緒にまた来ます♪」

 グランとアニーが答える。

 「そうか、ならまたしばらく領主も神官も不在じゃな♪」

 野良着の老人は笑う。


 こうして、二人は地底の大地母神都市を出て地上へと戻って来た。

 そして数年後、学園を卒業した二人は地上で結婚式を挙げて正式に領主として大地母神都市を治める事になりグランは万能の地術師として采配を振るった。

 アニーはそんなグランを支え、沢山の子宝に恵まれ二人は幸せに暮らしたと言う。


 魔法学園の万能地術師  完

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魔法学園の万能地術師 ムネミツ @yukinosita

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