第3話 ダンジョンへ行ってみれば
「……本当に、ここを踏破するって課題なんだよな?」
「ええ、ここを踏破すれば!」
グランとアニーは、片道一週間ほどかけて南の谷底にある古代神殿と言うダンジョンへと辿り着いた。
「山肌をくり抜いて作られてるな、凄い大地の力を感じる」
グランは神殿から自分が良く知る魔力をガンガン感じていた。
「グラン、大丈夫なの?」
アニーはふらついたグランを受け止めた。
「……あ~、何ていうか酒が満杯のジョッキの中にいる感じ」
「ま、魔力で酔ってるの!」
グランの答えに驚くアニー。
「あ~~~♪ こっちへおいで~って、呼んでる~~~♪」
へべれけになったグランが、何者かに導かれるかの如く神殿へと引き寄せられて行った。
「嘘っ! 待ってよグラ~~ン!」
普段とは逆にアニーの方がグランに振り回されていた、彼を追い走るアニー。
神殿の中は、清浄な空気で満ちており中心には金で出来た大地母神の像と祭壇。
祭壇の前で止まったグランにアニーが追いつくと、二人が立っている床が沈み出した。
「お、落ちる~~~っ!」
「だいじょ~~ぶ、これは多分昇降機~♪」
「グラン、酔いを醒まして~~!」
酔いがさめないグランと共に、アニーは地下へと降りて行った。
やがて、床が止まるとそこは広大な地下空間に作られた街であった。
「止まった、ここは地下の街?」
アニーが周囲を見渡すと、目の前に金をブロックにして作ったアーチ形の門があり
大地母神都市と古代文字で書かれた看板が掲げられていた。
「ううっ、気持ち悪い」
地下に着くと、グランは二日酔いのような状態になっていた。
「グラン! 良かった♪」
普通に話せるようになったグランを、アニーは抱きしめる。
「アニー、ここが目的地か?」
頭痛にたえながら、アニーに尋ねるグラン。
「ここはまだ入り口、街の奥の大きな神殿が多分ゴール」
アニーが答える。
「そうか、じゃあ行こうか? 俺も呼ばれてるみたいだし」
グランはそう言いアニーの手を取り二人で大地母神都市へと踏み入れた。
すると、街の建物から子供ほどのサイズの服を着た人型の生き物が現れた。
「おお! この街に人間の子供達が来ただと?」
グララン達を見て驚くのは子供ほどの身長の野良着を着た老人。
「え? ノ、ノーム?」
グランが驚く。
「グラン、ここってノームの街なの?」
アニーも驚いた、生き物の正体は土の妖精ノームだったからだ。
「おいおい、人間のお嬢さんは光術師かい? そっちの坊やは、地術師様か!」
ノームの老人はグランを見て腰を抜かした。
「ど、どういうこと! ノームのおじいさんに、グラン!」
アニーはわけがわからなかった。
「え、えらいこっちゃ! 地上からダンジョンをすっ飛ばして、地術師様が参られたぞ~~~っ!」
ノームの老人の叫びに反応するかのように、建物から老弱男女様々なノーム達が出て来た。
「本当だ、地術師様だ♪」
「女神様のお使いが来た♪」
「お祭りだ、大地母神様のお祭りだ♪」
グランを見たノーム達が次々に盛り上がる。
「えっと、盛り上がてる所に悪いけど説明してくれ!」
グランが叫ぶと、ノーム達が静かになった。
「え? 私、このダンジョンにある愛の祭壇で愛を誓いあえば神様がグランと私を祝福してくれて永遠に結ばれるって聞いて来たんだけど!」
アニーも様子のおかしさに、本当の目的を言ってしまう。
「え、学校の課題じゃなかったのかよ? 姉さんが絡んでたから、もしかして違うのかもとは思ったけど」
グランはため息をついた、そんなグランのそばにノームの老人が近づく。
「地術師様、お名前はもしやアースマイト様では?」
老人がグランの家名を当ててくる。
「はい、グラン・アースマイトですけど?」
老人なので丁寧に名乗るグラン。
「おお、アースマイト様でしたか♪ と言う事は、隣のお嬢様はもしやメリー家の王女様で?」
老人がアニーに聞いて来たのでアニーも頷く。
「アニー・メリー、第十王女です」
と、名乗るアニー。
「ふむ、これはめでたい♪ アースマイト家の方のご帰還じゃ♪」
ノームの老人が喜ぶ。
「えっと、俺達はダンジョンの踏破に来たんですけれど?」
グランが老人に尋ねる。
「はっはっは♪ ダンジョなぞ泥棒避けの警備装置、正統な主であるアースマイト家の方と王家の方をひっかけるなんぞしませんわい♪」
老人は笑うが説明になっていない。
「俺達、さっぱり訳が分かりません」
「本当にわからないわ」
グランとアニーはさっぱりだった。
「まあ詳しい事は、神殿でどうぞ♪ 要はお二人は、この街の領主夫妻になれる権利が与えられて大地母神様に招かれたのです♪」
老人は自分がわかっている事だけしか言わず笑うのみだった。
「どういう事、グラン?」
アニーがグランに尋ねる。
「どうやら、ここは俺の先祖が治めていた街で俺達の祖父さん達はここに来た事があり俺とアニーにはとんでもない遺産を相続できるかもって事かな?」
グランはノームの老人の言う事を自分なりに推測する。
「うん、グランの言う事が大体合ってる気がするこの人達が私達に友好的だもん」
アニーは街の住人であるノーム達の態度から推測した。
「なら、答え合わせはあの神殿かな?」
「ええ、行きましょう」
アニーとグランは、ノーム達に見守られながら街の奥に聳える金色の三角錐型の神殿へと歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます