4-155 オルヴァ王と十二人のシナモリアキラ㉑
男根城の内側に満たされた仮想の海水が振動し、遊泳する幽霊魚たちが逃げ惑う。洞窟に似せた人工的な岩壁に亀裂が走り、即席の改装が台無しになっていく。
爆音、衝撃、ぱらぱらと落ちる建材の欠片――崩壊の時は近い。
破壊の足音は着実に近づいてきている。少年は身震いした。
男根城は内側から瓦解しつつある。巨大な塔の根本、奥の広間では巨大な氷塊が揺れ、壁際に垂れ下がる鎖が音を立てていた。繋がれた囚人たちが小さく呻く。
ふたりの囚人のうち年若い少年の方――
もうひとりの囚われ人――クレイとかいう青年はどうやら敵勢力にとって重要な人物らしく、先ほどまでヴァージルの手駒となった『公社』の者たちによる責め苦を受け続けていた。人の好さそうな笑みの後ろに冷酷な本性を隠した恰幅の好い老人、嗜虐的な笑みを浮かべる魔女の姉妹たちは嬉々としてクレイを嬲りものにして精神を屈服させようとした。少年が思わず目を背けてしまうほど残虐に。ちなみにファルはわずかな時間だけセージによって小突き回されていたが『ファルくんいじめてもつまんないし』と早々に飽きられ、放置されたまま想い人がクレイを楽しそうに虐めるのを見せつけられることになった。
ちらりと横目で隣人の様子を伺うファル。
裸の上半身は濡れており、白い肌に浮かぶ無数の火傷や蚯蚓腫れが痛々しい。長い髪が張り付く肢体は意外にも筋肉質で、女性的にも思える顔立ちとは裏腹に同性のファルですらどきりとするような色香があった。確かにこれは魔女たちが夢中になって構いつけるのも無理はない。その上、この男は精神まで強靭だ。どれだけ痛めつけても屈服するということを知らない。
自分ならとてもこうはいかないだろう、と少年は密かに感服した。
羨み、妬むと同時に敬意を抱く。ファルのアストラル体の深層には太陰の王妃が唱えた永劫の呪詛が刻まれており、彼が拷問によって屈しそうになった際には自動的に本人の脳を精神爆弾に変質させることになっている。セージが不用意にファルに触れようとしなかったのも自爆の気配を察知してのことだ。
「レミルスさんがいてくれたってのもありますけどね」
小さく呟く。なんだかんだと言ってもあの虹犬の少年は頼りになった。この異常な城における数少ない常識人だ。かつて一度イアテムと交戦して親友の遺品を強奪したほどの腕前と聞いていた通り、イアテム率いる『眠れる三頭』らはレミルスがいる限りファルにちょっかいをかけてくることはなかった。
現在、イアテムたちは侵入者の迎撃のために出払っている。カーティスを襲撃してあっけなく撃退された失点を取り戻そうと必死なのだろう。失敗した配下を見るヴァージルの酷薄な瞳と退屈そうな口調は今思い出してもぞっとする。
そのヴァージルは、氷の牢獄に背を預けて静かに目を閉じている。どこか遠くにアストラル体を投射しているのだろう。ファルの見たところ、投射先は複数。
この少年は多数の勢力を同時に相手取って互角以上に渡り合っていた。驚嘆すべき言語魔術師としての技量であり、異常なまでの精神力だ。
ファルは圧倒的な実力差に打ちのめされた。無力感に苛まれ、屈辱に視線が下がる。眼鏡型端末も取り上げられ、封印によって呪文を紡ぐことも叶わない。
深くため息を吐いた。
爆音は徐々に大きくなり、騒乱の気配は今にもこの広間に到達しそうだ。
隣人は意識を朦朧とさせながらも瞳から闘志を絶やしていない。
本当に強い人間というのは彼のような者を指すのだろう。
――セージさんも、こういう人の方が格好いいって思うんだろうな。
危機的状況にも関わらず、こうした感情を抱いてしまう自分をファルは情けなく思う。女々しくてやってられない――こんな思考を抱いてしまうのも、男根の城に長く囚われていたせいだろうか。
そのとき、ファルは更なる異変に気が付いた。
ヴァージルの様子がおかしい。
城での異変を察知して投射していたアストラル体を戻したのかとも思ったが、どうにも奇妙だ。震える手で顔の輪郭を確かめるように撫でさすり、荒く息を吸っては吐き、吸っては吐きを繰り返している。血のような瞳に重なるように、黄色い月の輝きが明滅している。
「黄の色号――? 異界、いや神々の呪法?」
ファルは正体のわからない不安に襲われながらも目の前の異変を必死に分析しようと試みる。月の王子は小さな声で何かを呟いている。
ヴァージルの表情、声の抑揚、そして視線の性質。
やはり奇妙だ。何かが違う。決定的な異常を言語化できない。
ファルは
ヴァージルもまた彼と同じ混血のように見えた。太陰の王家がウサギ種族のものである以上、最後の純血の王子と称されるヴァージルの場合は『妖精ウサギ』とでも呼ぶべきだろう。
ウサギの垂れ耳と妖精の長耳を併せ持つ麗しの王子ヴァージル・イルディアンサもまた現代の太陰社会を反映した外見を――。
あれ? と首を傾げるファル。
純血、純血ってなんだっけ。史料で、絵本で、母親の昔語りで、恐ろしい狂王子ヴァージルのことは何度も見聞きしてきた。彼の事を知らない太陰の民はいない。
昔々、太陰がまだ賑やかだった頃。
カニや獅子、ワニやトカゲ、犬やウサギ、水運びや薪運び――大いなる司書の眷族たちが仲良く共存していた頃のお話――お決まりの文句と共に始まる伝承は、ヴァージルが出てくると決まって血塗られた結末で終わる。
けれど、どうしてそうなったのか、歴史書にどのような詳細が記されていたのか、何故か鮮明に思い出すことができない。記憶に靄がかかったように――。
「これは何らかの記憶封鎖が、いや、歴史そのものが歪んで――?」
疑念は曖昧に口の中で解けて、ファルの瞳が混濁する。
半ば消えかかった意識が曖昧に溶けて、ファルは深い微睡みに落ちていく。
夢の中ではヴァージルの容姿が目まぐるしく変化していた。
アシンメトリーな長耳と垂れ耳の左右が入れ替わり、両耳がそろってアヴロノに、あるいはウサギになったりと変幻自在に姿を変える。
ヴァージルの声は幾人もの少年が同時に囁いているかのように折り重なり、合唱じみた響きを奏でていた。
異なる意思、異なる性格、異なる声質。
ファルの混乱は頂点に達した。
記憶が揺らぎ、現在と混ざり合う。
――探れ。観ろ。そして解体しろ。
誰かが少年に命じる。それは機械女王のようでもあり、十字の目を持つ賢王のようでもあり、あるいは名も形も無い悪魔のようでもあった。
『サイバーカラテ』の使い手でありながら、『言理の妖精』の担い手でもある呪文使いだ。ならば、この少年にしかできないことが一つある。
「言理の妖精――語りて、曰く」
口の中で消えそうな呪文を呟く。
そして少年は遡った。
その日、広間ではヴァージルが氷の中のコルセスカを見つめながら陶然としており、壁際ではレミルスが棍から伝う電流でクレイに責め苦を与えていた。ファルはと言えば震えて縮こまるばかり。
ヴァージルは囚われの姫君を見つめながら自分だけの世界に閉じこもり、虚ろな目でぶつぶつと何かをつぶやいている。その様子があまりにも狂気じみていたから、ファルはぞっとして目を背けてしまう。それでも透き通るような声は途切れ途切れに聞こえてきてしまう。ファルは泣きそうになった。腕が束縛されていることがこんなに苦痛だなんて! 耳を塞げればどれだけ気が楽になっただろう。
「ねえお母さん。お母さんはいつだって優しかったよね。あいつにいじわるされた僕の頭を撫でてくれた。でもおかしいよ。どうしてお母さんはあいつと一緒にいるの。あいつとの間に僕をつくったの? 汚い、汚い、汚い! あいつの血、血、血が、この肉が肉が肉が、穢れたあいつから僕が」
しなやかな指で全身の肌という肌を掻き毟る。
真っ白な皮膚が裂けて血が滲み、痛々しい肉色が覗く。
黄色っぽい浸出液がヴァージルの指先で固化して、汚れきった指すら厭わしいと左右の指を擦りつけて自傷を続ける。
「お母さん、大好きだよ。大好き、だいすきなんだぁ――あのね、僕ね、姫を従えて、死人の森を完成させるよ。再生者という単一の秩序によって統べられる、美しい新世界を。異界の理によって立つ、全く新しい景色を見せてあげる」
独白はそのまま呪詛となって大気に融けていく。
断片的な言葉は意味が不明瞭で太陰出身のファルであっても理解できない。
『再演』『父様』『浄化』『統合』『ウサギ』『純血』『さかさまの森』『冥道』『境界』――これらの単語が幾度も登場し、無秩序に散りばめられていくが、一貫した意味は見いだせない。出鱈目に単語を並べてそれらしい文章を機械的に作っているようにも感じられる。
かと思えば唐突に両手で左右の耳を掻き毟り始めて、
「僕が、僕を、こんな、こんな――が因果の流れを滅茶苦茶にしたせいでもう僕でも解きほぐせない。この、穢れた穢れた穢れた穢れた穢れた――」
などと激情を露わにして怨嗟の言葉を吐き出したりもする。
控えめに言って錯乱しているとしか思えず、最後には膝を抱えて泣き出すからファルはもうどうしたらいいのかわからない。
すぐ傍のレミルスに縋るような視線を向けた。
「たたた助けて下さい、ていうかあの人明らかにヤバイですおかしいですなんであんなのに協力しちゃってるんですか!」
必死の訴えに、虹犬の少年は淡白な答えを返す。
「正直、『あの』ヴァージル様は俺も恐ろしいです」
「なら!」
「でも、ジャッフハリム解放戦争で勇士たちと力を合わせて『呪祖』を倒した偉大な言語魔術師でもある。俺たちにとって『銀』の賢者ルウテト様と六王というのは、大昔の英雄ですから」
レミルスの視線はファルの恐怖とは性質を異にする『畏怖』だ。圧倒的な存在に対して震えて縮こまることと畏まって平伏することの間には大きな溝がある。
「なんか、地上とは『死人の森』に対する認識がずれてる?」
「みたいですね。ルウテト様は世が世なら天主として『山』の聖領を管理されていてもおかしくない方――危険な
「あー。天主って、『下』の権力者でしたっけ」
トリシューラに対する暴言は聞き流して会話を続けようとするファル。どうせ忠誠心など持ち合わせていない。レミルスはクレイに棍を押しつけながら続けた。
「権力というか、権威と尊敬を一身に集める方々です。かつて獅子王が従えていた十二賢者の正統なる後継、あるいは今も生き残っている本人たち。『上』の形だけ真似した十二賢者とはものが違う。何しろ獅子王の系譜に連なる貴種によって任命される本物です。まあ、ろくでなしのクソジジイもいますけど」
「獅子王の――? それってつまり、猫の信任を得て――」
ファルには新鮮な、『下』を生きる者の世界観。
気になる情報は幾つかあったが、『獅子王』という言葉がとりわけ耳に残る。
なにか思うところでもあるのか、レミルスは氷の牢獄の中に閉じ込められている女性を熱心に見つめていた。
「テララ様は役目を放り出してどこぞの異界で遊び暮らしてる。いっそルウテト様が『白銀』とでも名乗って『灰』の座を乗っ取ってしまえばいいんだ。そうしてヴァージル様が『黄』、いや『黄金』の天主を名乗れば良い具合に収まる」
ファルには今一つ理解できない話だった。
少なくとも、この少年はヴァージルの味方でしかないのだと思い知る。
救いはルウテトに対しても敬意を抱いていることだが――コルセスカに対する感情まではわからない。ファルは予断は厳禁だと甘い心構えを捨てた。
「それに俺は、サイザクタートの敵になりたくない」
けれど、そんな風に言われたら張りぼての戦意など簡単に吹き飛んでしまう。レミルスの立場や行動はファルとは全く異なるものだが、ヴァージルのように理解不能な相手ではない。友人を想い、故国の英雄を敬うその有り方は十分に共感可能なものだった。クレイに対する尋問も、『眠れる三頭』のそれに比べればいくらか手心を加えているように思える。
「今のサイザクタートは仮想使い魔だけど、それでもサイザクタートだから。きっとヴァージル様は俺の事情を知った上であのサイザクタートを再現してる。それでも俺はあいつの――あいつが仕えるヴァージル様の味方でいたいんです」
レミルスの述懐は続く。おそらく現実が見えていないわけではない。ヴァージルの危うさも正しく把握できているはずだ。それでも、虹犬の少年は機械女王と狂王子を天秤にかけて、後者に味方することに決めた――そこまで考えてファルは気付く。価値観によっては前者も十分に狂っている。消去法で後者を選ぶ人、もしや結構いるのでは。日頃の行いって大事だなあと実感する少年だった。
「サイザクタートは、あいつらの家系はただ主に忠節を尽くしたいだけ。何かを守り通す事が番犬の誇りだから、俺はそれを否定したく無い」
正しさや信念とは関係なく、ただ友人と同じ道を行きたいという理由。
思考停止と非難することは簡単だったが、ファルは彼を嫌いになれなかった。
肩から力が抜けていくのを感じる。
「参ったな、それを言われると何も言えないじゃないですか」
主への忠節、尊き存在への崇敬――そうした感情が彼には痛いほど理解できてしまう。『マレブランケの』中傷者ファルファレロとしてではなく、太陰のウサギ妖精ファルとして。『杖の座』のトリシューラに従っているのは形だけで、実際のファルは『呪文の座』のハルベルトの臣下だ。
「僕は
ファルの言葉を聞いて、虹犬はわずかに穏やかな表情になった。犬の顔でも、鼻や耳のわずかな動き、目の開き具合などで感情は出るものだ。
「もうグラッフィアカーネとは呼ばないで欲しい。レミルス。レミルス=プラパーシュ。それが俺の名です」
ファルはそっか、と頷いて「じゃあ君はこれから僕の敵だね、レミルス」と言った。決別の言葉に悲壮感は無く、敵対が決定的になった二人の間に険悪さは無い。
ヴァージルがレミルスを呼ぶ。虹犬の少年はクレイから棍を引いてその場を離れようとするが、去り際にこんな言葉を残していった。
「――ファルさんでしたっけ」
「うん、そうだけど。ああ、偽名も本名も両方ファルだよ僕」
どうでもよさそうに「そうですか」と流してレミルスは続けた。
「一つ、教えてあげます。『ヴァージル様は二人いる』――正気の彼と出会ったら、その機会を逃さないで」
「それ、どういう――」
「そのままの意味です。いずれわかる」
追及を許さずにレミルスはその場を離れ、それきり戻ってくることはなかった。
ヴァージルの命で第五階層の覇権を巡る戦いに参加しているのだろう。
それからしばらく、ファルはその言葉の意味について答えの出ない思索を続けることになる。
意識が覚醒する。
夢のような回想を終えて、ファルは改めて目の前のヴァージルを見た。
「そうか。鍵となるのは、きっと『ヴァージル自身の物語』だ。彼一人だけが再演の舞台で歴史に干渉されることを免れた。それにはきっと意味がある――」
ヴァージルはわざわざオルヴァを介してシナモリアキラへの攻撃を仕掛けている。それはあの少年が『シナモリアキラではない』からだ。あの少年は六王の中で最もシナモリアキラ性が低い。ならば私がするべきことは一つ。俺は肩の関節を強引に外して縄抜けを試みる。激痛の中、ファルは意識に混じる複数の思考を感じていた。共有される自我、使役される肉体、しかし不思議と違和感は無い。ファルははじめから『彼』だったかのように振る舞う。
語り手すら曖昧なままに、言理の妖精が
ヴァージルは王子。太陰の呪われた子。
『王』には、なれない。
遠い昔、彼は叛逆に失敗したのだ。
ならば叛逆によって弑されるオルヴァを殺すためには過去の運命を乗り越えなくてはならず、その為には再演の儀式が必要だ。
『なぞらえ』の儀式。過去の克服。
もう一人の『失敗した自分』がヴァージルの前に立ち塞がる。
『妖精』が物語と文脈を手繰り寄せる。
王になれなかった王子は、敗北の歴史を乗り越えるために現代で過去を否定する。この場所での戦いはそのための試練でもあった。
そんなヴァージルにとってオルヴァは乗り越えるべき壁ではある。
だが彼に挑む前に、少年は己の似姿を討ち滅ぼさねばならない。
「もう一人の、王になれなかった者。彼の名は――」
呪文を唱えて、世界を歪める。
願望は願い、要請された物語は必然。
かくして現実は変容する。
事態が動いたのはちょうどその時だった。
壁が轟音と共に崩壊し、巨大な呪力が激突しながら広間に乱入してくる。
まずは岩肌の巨漢。アストラル体の巨腕を背中から伸ばして警備用の使い魔たちを薙ぎ払い、凄まじい破壊を振りまいていく。
「見つけたど、ファルファレロ! 恨みはねえが、おらがシナモリアキラになるため、番付一位のおめえには死んでもらう!」
ランキング一位など寝耳に水の情報を聞かされて目を白黒させるファル。迫りくる危機と敵の情報を処理するより先にイアテムと雲の巨人、更にロドウィとその娘の魔女姉妹たちが乱戦を繰り広げている光景が目に入る。少年は思わず叫ぶ。
「セージさん!」
「ちょっとファルくんうるさい、いまそれどころじゃ――うわなにあれ妖精いっぱいでめっちゃキモいしっ」
ファルの姿を見て幼い表情を引き攣らせるセージ。
わけがわからず傷付くファルだった。
「ハ――有象無象が、まとめて砕け散れっ」
そして、巨大な三頭犬を殴り飛ばしながらパーン・ガレニス・クロウサーが登場する。漆黒のボディアーマーを身に着け、ノンフレームの眼鏡は膨大な情報を処理しながら頭部に呪術障壁を展開して幻影の兜を形成している。風圧で背後に流れる前髪が一房だけ青く染まっていた――呪いのように。
続いて半ズボンにダブレット姿のアストラル体が番犬と人形を引き連れて到着。狂王子と称される呪文使いヴァージルの意識体、その仮想使い魔のサイザクタート、ラクルラール人形だ。
彼らを同時に相手にして一歩も退かず、それどころか遂には男根城の奥の間まで追い詰めたパーンの強さには天井が無い。巨人の幻肢が唸りを上げて、広間はたちまち巨人たちの呪力で溢れかえった。
屋内であるにも関わらず、彼らの頭上に幻影の刃が出現する。
僣主殺しの裁きの剣。王国を滅ぼす権力の選定者が振り子のように揺れ動く。
切っ先が選ぶのは、ヴァージルか、それともパーンか。
ヴァージルの背後に『
「いいよ、パーンさん。ここで決着をつけよう。断章ごと僕のものにしてあげる」
「ぬかせ。鬱陶しいラクルラールごと消し炭にしてくれる」
六王の激突により空間が激震する。かくして死闘の幕が上がった。
これでいい。『王になれなかった者たちによる王になるための戦い』という物語が呪文によって実体化する。急造の因縁を、妖精たちが楽しげに彩って盛り上げようとしていた。
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