133.真珠の秘密を探る前に爆発しました
魔法陣を解析するルキフェルが、真剣な表情で情報を整理していく。リリスの言う通りだった。魔力が高まって爆発したなら、防御魔法陣が作動している。だがその形跡はみられなかった。
他の魔法陣の発動履歴も確認したところ、おかしな部分がまったくない。爆発が起きてから修復魔法陣が作動した。ほぼ同時に室内に救助対象者がいるか判断し、魔王城の魔法陣は沈黙する。ルシファーやアスタロトに外的なケガはなく、物の修復を始めただけ。
予兆に気づいて反応した魔法陣はなく、ルシファー達も音以外の異常は感じていなかった。となれば、どうやって宝石箱の中にいた真珠が移動したのか。そこが鍵になる。
「真珠が転移したら、防御魔法陣が妨害するはず」
「箱の蓋が閉まっていたなら、転がり出る原因はありません」
閉ざされた宝石箱の中から、突然外へ出た真珠。転がった音がする……ん? そこで違和感を覚えたのはベールだった。突然収納空間から宝石を取り出し、転がす。
「何してんの、絨毯があるんだから……っ!?」
ルキフェルも気づいた。そう、あの部屋は執務室だ。魔王が使う部屋なのはもちろんだが、文官の頂点であるアスタロトの仕事場でもあった。石造りの魔王城は、かつて廊下に絨毯を敷かなかった。しかし実際に敷いてみたら、靴音が軽減されて楽になったと導入が相次いだ。もちろん、室内に敷いていないわけがない。
「絨毯で……どうして転がる音が?」
どこを転がって音を立てたか。謎が謎を呼び、ルキフェルは薄青の髪をぐしゃりとかき乱した。ぐしゃぐしゃと乱暴にかき回した後、髪紐を解く。無造作に机に放り投げた。
「音がするとしたら、机の上だよね。椅子は……転がる場所がないか」
革張りの椅子に木枠もあるが、真珠が転がる可能性は低い。聞こえたという軽い音が、落下音か転がる摩擦音か。それによってまた絞られるだろう。
「本棚、応接用のテーブル、それから窓枠でしょうか」
「修復魔法陣の履歴では、爆発はルシファーの机の真下だった」
この条件なら窓枠、応接用のテーブル、本棚は除外される。ここで疑わしいのは、宝石箱を入れた引き出しのあるルシファーの執務机だった。箱の外へ出た真珠が、何らかの刺激で爆発した?
「条件付きの魔法なら、弾かれたはず」
自分が設置した魔法陣を知るからこそ、外部から操ることの難しさを理解していた。引き出しの中で箱が開いて真珠を吐き出したとしたら……条件や時間指定があるだろう。
「珊瑚と真珠が反発したなどという、単純な話ではないでしょうし」
ベールが最後まで言い切る前に、どんっと爆発音が響いた。魔王城全体がずんと揺れるほど、その爆発規模は大きい。
「っ! 駆けつけるよ」
階下の客間を飛び出し、ルキフェルは大急ぎで階段を登った。執務室へ近づくと、何かが焦げた臭いが充満している。人払いをしておいたので、巻き込まれた被害者はいない。この時点で、ルキフェルとベールは室内の二人を心配していなかった。魔王と大公を吹き飛ばすほどの威力なら、そもそも魔王城自体が残っていないからだ。
唸るような音を立てて、修復魔法陣が発動する。連続での使用に文句を言ってるようだ、とルキフェルは肩をすくめた。臭いと煙が落ち着いた頃、リリスとベルゼビュートが顔を見せる。
「まぁ、派手に爆発したわね」
「陛下はご無事かしら」
感心したようなリリスの隣で、ベルゼビュートがさり気なくアスタロトを無視する。後で報復を受けて泣くのは自分なのに、まったく懲りない辺りが彼女らしい。
「げほっ、髪先が焦げたぞ」
「そのくらい問題ないでしょう、早く出てください」
中から聞こえた二人の声に、無事生還を知った。
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【新作】世界を滅ぼす僕だけど、愛されてもいいですか
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幼子と女王は世界を滅ぼしてしまうのか!
恋愛要素が少しあるファンタジーです(*ノωノ)
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