第2話

「あ〜、れいちゃ〜ん(笑)おはよぉ〜」

 うざいのが来た。有栖ありす 瑠菜るなだ。今の生活でこいつが一番嫌い。そこそこのルックスしかないくせに自分が可愛いと思ってるナルシスト。小学校のときに持久走で私に負けたのを根に持って落ちぶれかけている私を嘲笑いにきたのだ。毎日よくやるよなと半分呆れながら

「ああ。おはよ。」

 と返事をする。

「最近部活の朝練あんまり来てないけどどぉしたの?練習しないといい結果出せないよぉ?」

 心配してますと言わんばかりの顔でアリスが言う。私はそんな挑発には乗らない。こんな腐りきった教室せいかつから早くおさらばするんだ。あと1年もあるけど。




「ねー、ルナちゃんって隼人はやとくんが好きらしいよー」

 どうでもいい会話が流れてくる。授業中だってのに。私も人のことは言えないけど。私は窓の外をぼんやりと見ながら先生の話を聞いている。どうせ聞いてても何言ってるかわからない。これも苦痛の時間の一つ。




 キーンコーンカーンコーン

「わー、やっとご飯だー」「つっかれたー」

 給食の時間になって各々がお弁当を持って移動する。私は特に食べるような人もいないから一人で屋上に向かおうとする。

「あ〜、れいちゃん〜。一人?一緒にごはん食べるぅ〜?」

 アリスが話しかける。心のなかで舌打ちして

「あぁ、大丈夫。遠慮しとくわ。」

 と行って屋上へ向かう。あんな奴と一緒だなんて絶対にゴメンだ。あいつと一緒に食べるとご飯が不味くなる。


 屋上へ着いたらヘッドホンをして好きな曲を流しながら食べる。みんなの青春みたいな雑音が音楽にかき消される。嫌なことはヘッドホンがかき消してくれる。私の宝物。

 コウが中1の誕プレでくれたものだけど。

 コウが、

「ないだろうとは思うけど、もし嫌なこと言われたらこれでかき消してね。レイは、可愛くて運動ができて友だちがいっぱいいるかみさまみたいな人なんだから。難癖つけて先輩とかに僻まれるかも。私はレイのそばでレイと話せないから。寂しくなったらこれで好きな曲聞いてね。」

 と心配してくれたもの。コウは私の「今」を知らない。今、一番コウのことが苦手にも関わらず、皮肉にも、この状況をどうにかしてくれるのはコウだった。




 授業が全部終わって部活の時間。この時間が一番イヤ。

「はあっ、はあっ…。」

「三郷!タイムまた落ちたぞ!」

 うるさいなぁ。わかってるよ。私がだんだん落ちこぼれてきてるってことくらい。

「有栖!お前最近調子いいな!この調子で行けば選抜メンバーも夢じゃないぞ!三郷もみんなも有栖を見習えよ!」

 アリスがニコニコしながらこっちに近寄ってくる。

「れいちゃん〜。選抜メンバーだってぇ〜。私なんかに務まらないよぉ。れいちゃんのほうが合ってるよぉ〜。」

 嫌味たっぷりに言ってくる。ほんとにうざい。


 早く終われ。早く終われ。

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わたしのかみさま 橘 璃子 @Riko_CouLei

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