わたしのかみさま
橘 璃子
第1話
「こらー!コウをいじめるなー!」
「うわっ!レイがきたぞー!にげろー」
「ありがとう。レイちゃん。
"レイちゃんは私のかみさまみたいだね。"」
その言葉が今も私を縛り付ける。
ピピピピピピ
目覚ましの音でまた憂鬱な今日が始まる。
「学校…やだなぁ…。」
私、三郷 麗はそうつぶやきながら支度を始めた。小学生の頃は学校が好きだったのに。中学になってから何もかもがうまくいかない。また「あの子」との差が開く。
ガチャ
「行ってきます…」
「おはよ!レイ!」
やっぱりいる。櫻葉 虹だ。私の幼馴染。親友。でも今はこの子が嫌い。この子といると惨めになるから。私が劣って見えるから。でも、あのこの前ではそんな姿は見せてやらない。見せちゃいけない。私はコウのかみさまなんだから。
でも本当はわかってる。コウのほうが優れてるって。コウは私立のお嬢様学校で私はフツーの公立中。コウは学年一位で、私は下から数えたほうが早い。コウはルックスもいいのに私はフツー。何かくらべて勝てるのは運動神経くらいだ。小学校のときはリレー選手に選ばれるくらいは運動ができた。今となっては、中の上くらいで選抜メンバーになれないくらいだ。仲の良かった子とも別のクラスになって孤立している。コウはそのことを知らない。だから、私は運動ができて明るくて友達も多いかみさまみたいな人だって信じている。
そんなんじゃないのに。
コウの話にテキトーに相槌をしながら学校に向かう。しばらく歩いて私の学校の門の前につく。どれだけ見てもフツーだ。コウの学校と比べ物にならないくらいしょぼい。グッと唇を噛みしめるがコウは気付かない。
「もう学校だ…。もっとレイと話してたいのに。しょうがないよね。じゃあまた帰りに!後でね!」
と笑顔で手を振りながら歩いていく。何もかもが満ち足りた青春の代名詞みたいな後ろ姿。私はコウに気付かれないように舌打ちをした。
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