ラストエピソード


【アーサー王国・ウォール視点】


「お見舞いに来てあげましたよ」

「まったく、言い方が恩着せがましい」


 ウォールとメアはいつものやり取りであいさつを済ませる。


「ウイン君が居なくなって2年が経ちましたね。やっと手が動くようになりましたね」

「そうだな。戦うことは出来んが、普通に生活できる。ウインはまだ帰ってこないか?」


  メアは首を横に振った。


「はあ、ウイン君が帰ってきたら嫁にしてもらう計画だったんですが」

「おまえだけは候補から外れているだろ」

「ひどいです!うっすら感じてはいましたが、そのまま言葉にしちゃだめですよ!」


 俺は騒ぐメアを放置して考えを巡らせる。

 この国は良くなった。

 きつね族の生活は完全に安定し、物流もさらに活発になった。


 ウインに見せたい。

 ウイン、帰ってきてくれ。

 頼む!




【ディアブロ王国・魔王視点】


「エムルが居ないのはいいとして、セイラまで居なくなったのは痛い」


 だが、セイラがウインを想っているのは前から分かっていた。

 民の為、一緒にいる時間を作れなかった。

 今は私が政務をこなそう。


「魔王様、エムル様がSM喫茶の開店をの準備をしています」

「絶対に阻止する!」


 く、おとなしく魔の森でしんみりしていればいいものを!

 魔の森にいてもなお、余計な仕事を増やすか!

 エムルに時間を与えてはいけない!


 ん?気のせいか?


 魔の森の方が光ったように見えた。




【ヤマト・タケル視点】


「ヨウザン、異界の門の事は分かったかの?」

「そんなにしつこく来られても進みは変わらんでござる。タケル様が来ると、皆気を使って作業が進みません」


「じゃがのう、気になるのじゃ」

「気持ちは分かるでござる。所で、ベリー殿の過去の文献が見つかったでござる」


「おお!すぐ見たい!」




 整理された紙に目を通す。


 カムイとフレア、今のウインとベリーか。

 そしてシュテンキは神であり、名前持ちを倒す英雄でもあった。


 二人の恋仲を知ったシュテンキは激怒してカムイを殺そうとした。


 2人は逃げ延びるが執拗にシュテンキが追って来た。

 シュテンキは呪い神になっていた。


 カムイはシュテンキと闘い、魂を砕く炎でシュテンキを打ち倒すが、シュテンキは2人に呪いをかけた。


 カムイの命が消え、フレアは動かなくなったカムイを連れてヤマトに帰るが、呪いを受けたフレアに石が投げられ、追い出される。


 フレアの心が壊れて、魂は3つに割れた。


「石を投げて追い出した、か。ワシらは1000年前と何も変わっておらぬ。いや、ワシが変えればいい話、目標が出来たのう」


 ベリーは1000年前も英雄でありながら呪いを受けたとたんに手のひらを返された。

 そして今はウインの中で眠るほど、心を病んだ。


 だが、もし、心の傷がいえさえすれば、そしてウインさえ無事なら、異界で幸せに2人でくらしておるのかもしれんのう。


 異界は魔力が豊富と聞く。

 シュテンキも豊富な魔力のある異界で力を取り戻した。

 ベリーはすぐに目覚めよう。




【ウイン視点】


 俺は異界の門に閉じ込められ、時を過ごした。

 戦わない生活。


 ただ寝て、起きて、ストレージから食事を出して食べる。

 だが、幸せだった。



 ◇



 もう、1年は経ったか。

 毎日瞑想した。


 そのせいか時間の流れを実感せず済んだ。

 

「今日、か」


 俺の体が光る。


 目の前には、ベリーが居た。


「おかえり」

「ただいま」


 俺はベリーを抱きしめた。

 そして唇を重ねた。


 地面にベリーを倒し、服を脱がせ、俺も服を脱いだ。

 お互いに言葉は無かった。




 ◇




「ちょ、ちょっと、もうダメ、休憩よ」

「ええ!フレアだった頃は、もっと激しかっただろ」


 ベリーが俺の口を押える。


 異界の門から出る方法は分からない。

 でも、食べ物はたくさんある。

 

 ベリーと触れ合える。



 異界の門を開く方法も分からない。

 ゆっくりのんびり、やり方を探そう。




 ◇




【セイラ視点】


 あれから2年が経った。

 異界の門は開かない。

 開ける方法も見つからない。


 エムル様とルナは元気がない。

 笑いはするが、たまにさみしそうな表情をする。


 私達3人は暇があれば異界の門があった場所を見る。

 もう癖になっている。


 私はウインが好きだ。

 もっと早く、想いを伝えていれば良かった。


 異界の門があった場所を見る。


 その場所が光って、私は泣いていた。


「ああ、やっと、やっと」



 終わり




 





 あとがき

あまり読んでいただける作品ではありませんでしたが、最後まで読んでくださりありがとうございます。


次の新作を投稿中です。


『ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た』


投稿中の作品が多いため、少しでもすっきりさせるため完結まで連続投稿しました。

 他の作品もよろしくお願いします。

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「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る。~え?勇者?もう助けないし関わらないからご自由に~ ぐうのすけ @GUUU

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