第167話(総裁選・中)狂犬応援の失態で漁夫の利で新総理に。《中》

 石庭の船出は前途多難だ。支持された総理ではなく、反感贔屓でならされた総理。

決選投票になった時点で、「いつものことだ、負けたな」と落胆していたら、あら、びっくり、勝っちゃった。議員支持46票、高壱氏の72票に全く及ばない。大逆転の裏では岸部、菅野、反高壱の票が入った。岸部・菅野にとって「神輿は軽くてパーが良い」だ。

 決選でも半々。内容は自らの力で勝ち取った高壱氏とは異なる。よって、組閣づくりにおいても菅野元総理、岸部現総理の意向が大きく影響する。一方、麻僧派閥は蚊帳の外に追いやられ、影響力は格段に落ちたことは間違いない。

 自民党は故泉が総理になるとその「勢い」で解散を10月に決めていた。石庭は最短で年内と考えていたが、その思惑は予定通り早々に打ち砕かれた。独裁的・強権的な米国や露西亜、中国の代表とは違い、首につけられたリードを多数に引っ張られ、船頭多くして船、山に上るが起こりそうな政権だ。狂犬応援に足を引っ張られた高壱氏。白黒つける言い方が議員の不安を煽る形になった。個別の大将ならカリスマ性があっていいが、異なる意見が同じ組織にいるのであれば、「適切に」を用いるべきだった。その思いから、ならば、ブレーキの利く安全な石庭に入れるか、どうせ、決選で負けるから、と思う議員が想像以上に多かった。


 やっちまったぁなぁ。


 今回、決選時に合間の時間がなかった。携帯持ち込み禁止だったが、多くの議員がボスからの指示を待っていたが届かない。まぁ、いいや、で入れたから摩訶不思議が起こった。流石に韓国の受験時に使われる妨害電波が放たれていたと考えるのは逸脱し過ぎだろう。

 さて、今度は国民の審判を受ける番だ。党友・党員は脱退者が出て大幅に減ることも考えられるが感情的にならないことが望まれる。高壱氏の反撃に水を差さないように注意するべきだ。戦国時代を見れば分かる。城(ローマ)は一日にしてならず、だ。内部にいて乗っ取るのが一番効率的だ。そのためには、二通りの考えがある。新たに城を設け、異なる主張を強調する方法と内部で支援者の拡大を図ることだ。ネット内で盛り上がり党員を増やしている日本保守党は、国会議員の数でみれば意見の言える立場でも叶えられる立場にもない。関西を中心に盛り上がった維新でさへ野党第一党にはなれない。成れなければ、口だけ大将の域を抜けられない。自民党を抜け新党を立ち上げるなど馬鹿げている。夢物語として新党が奇跡を起こしても、その政権は他党との連立を余儀なくされる。捻じれ国会も充分に懸念される。そんな危ない橋を渡る時間など、国益を考えればない。高壱氏は沈む船に乗らず、「それ見た事か」

と優柔不断な議員に現実を突きつける方が改革に値する。


 高壱氏は、1位に立ちながらも2位だった石庭に決選投票で21票の差で大逆転を許して新総裁の座をつかみそこねた。逆転負けの要因は、高壱氏が総理になった場合、日本は中酷と大喧嘩するだろう、野党やマスゴミから戦争容認だ、と叩かれるに違いない。その先、どうなるんだ?独裁政治化しないか?など米国の前大統領カードのような豪傑な指揮官に慣れていない日本政府関係者は不安になっていた。

 投票前、領海・領空侵犯が度重なる中、海自艦が台湾海峡を始めて通過するニュースが飛び込んできた。中酷の激怒は不安感を広げさせ、高壱氏で総選挙に勝てるのか?保守票は固いが穏健な保守層や無党派を立憲民臭党の野駄新代表に奪われてしまうのではないか?裏金議員が高壱氏の推薦者に多くいて選挙で叩かれるのではと議員は考えるようになった。そこに高壱氏を応援する角田隆正が地方に演説に同行した際、自民党・議員の悪口を言いまくっていた。激しくディスり捲り、高壱氏を取り巻く攻撃性に嫌気が指した。その間違った意気込みが議員の士気を傷つけた。今回は、無能で穏便な石庭にするのが無難だろうと動いたのが、高壱氏の敗因だろう。何事も度の過ぎた応援は毒にはなるが良薬にはならない。「褒め殺し」であれば考える余地を与え、考えさせることで思考操作・洗脳できる。

 投票前のリーフレット配布の問題は、党が配布した名簿が使われたことが問題になった。本来は自分の脚で稼いだ名簿を使うべきだった。注意を受けたのは暗黙の自民党のルールを誤って使ってしまったことへのクレームだった。


石庭「まさか、でしたねぇ。いつもここで敗退していたからまたかと思っていたの

   に。まさかが味方してくれるとは。選挙は水物ですねぇ」

岸部「高壱の応援団が我が党、議員を苔降ろした。漁夫の利だ」

石庭「悪口を吹きまくられた者が私に投票したということですか」

岸部「組閣はこちらで決める。麻僧派閥は排除だ」

石部「こちら、と言うのは?」

岸部「党内基盤が弱いだろう。敗者が八人もいる。調整が必要だ」

石庭「候補者を組閣に入れますよ」

岸部「高壱をどうするか難しいな」

石庭「分かってますよ。あれこれ口出しされるのは困りますからね」

岸部「官房長官に森芳正を据えろ。故泉は選対委員長だ」

石庭「それで行きましょう。解散は討論会の後で」

岸部「いや、予定通りに10月後半に行う」

石庭「話が違うじゃないですか」

岸部「長引かせば党は分裂する。決選投票の議員票数を見ただろう。解散総選挙で公

   認をチラつかせ、高壱にいれた議員を追い込んでやる」

石破「そ、そうですね」


 石庭は自民党を離脱し、新生党に移るが考えが違うとすぐに復党。周りの冷たさから伊吹文尾大臣が救ったが、閣僚が派閥に属するのはいかがなものかと伊吹を裏切り離れる。麻僧降ろしが勃発し、二人の関係は犬猿になった。事実、石庭の新総理誕生時、麻僧だけが拍手をしなかった。内部分裂の兆候が既に見られている。偏向報道がお家芸の放送局のTBSが選挙ライブを行った際、立憲民臭党の辻元を呼んでいた。「くさっ」。石庭に決まった瞬間「よかったわ~」と辻本は言い喜んで見せた、これが如何に危ない政権かを物語っている。



 


 

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