第166話(総裁選・前)悪の巣窟、総裁選(裏話)
総裁選投票日間近、高壱氏の人気に業を煮やした故泉、石庭陣営は、議員に忠告という脅迫めいた取り込みを行っていた?「もし、高壱氏が総裁になれば中国への風当たりが強くなる。そうすれば連立している公明党バックの創価学会が君を支援できなくなる、それでいいのか」と。気骨な議員はそれでも日本のためにと高壱氏に72人が支持した。拙いよ拙いよという議員は、石庭か故泉で悩んだ。石庭は嫌われているから馬鹿でも絵になる進次郎に入れるかで、故泉は75票を獲得した。石庭は46票だった。コバホークの41票は安部派のお陰。高壱氏とコバホークは同じ釜だが、白米と麦飯。中身が異なっていた。何かと話題となった興梠太郎は22票で最下位は逃れた。最下位は16票で加藤で一人だけ推薦人の数を割った。
結果は、高壱氏が議員票72票、党員算定票109票、合計181票。故泉は議員票75票、党員算定票61票、合計136票。石庭が議員票46票、党員算定票108票、合計154票。前回、興梠太郎が大幅に獲得したと党員算定票は8票しかなく、合計も30票に留まりブービー賞を獲得。
決選投票は議員票72票、党員算定票109票、合計181票の高壱氏と議員票46票、党員算定票108票、合計154票の石庭との戦いとなった。決選投票は、議員票で大きくリードした高壱氏が優位に立っていた。高壱陣営も裏ではガッツポーズをしていたことだろう。しかし、選挙は、派閥を表面上は失い水物になる。派閥が解体されて間もない。実質上は繋がっている。議員の多くがその派閥によって選挙支援を受け、今の位置にいる。事実上の親方の鶴の一声は揺るぎない。
自民党党内で考えも異なり、支持も得られない石庭は諦め、敗戦ムードに包まれていた。そこに魔風が吹く。現総理の岸部は、自分の政策を拒否する高壱氏を何としても落としたかった。事前活動は入念だった。辞任が確定したのに米国に飛び、米国の民主党を裏で操るオーマン元大統領と次期大統領候補のリスに会っていた。米国が態々会ったのは、新総理に関する情報だったからだ。そこには靖国神社の問題があった。海外では靖国は戦争崇拝の証と捉えられている。岸部は、米国民主党幹部と会い、靖国神社に参拝する高壱氏を何としても阻止すると約束していたのだ。
岸部 「新総理に靖国神社を参拝する高壱がなる可能性が出てきました」
オーマン 「それは受け入れられない。どうにかならないのか」
岸部 「そこで、ご相談とお願い事があります」
オーマン 「何でも聞いてやる、言ってみろ。日本との関係は大事だ」
岸部 「高壱が戦争をしたがっていると言う印象を与えたい」
オーマン 「で、何をしろと」
岸部 「海軍をお借りしたい」
オーマン 「海軍だと」
岸部 「台湾海峡を通過して欲しいのです、海自艦とね」
オーマン 「そんなことをすれば中酷が黙っていないはずだが」
岸部 「手は打っておきます。奴らも高壱を嫌っていますから」
オーマン 「そうか。分かった」
岸部 「日時は総裁選前日でお願いします」
オーマン 「引き受けた」
米国の承諾を受けた岸部は、中酷・秀欣平主席に連絡を取った。
秀欣平「深圳の話なら聞かないが」
岸 部「それは問題にしないことを約束する」
秀欣平「賢明だ。では何だ」
岸 部「次期総理に高壱がなるかも知れない」
秀欣平は、眉をひそめた。
岸 部「やはり、お気に召さないですか」
秀欣平「避けてもらいたいものだ」
岸 部「それを叶えるために一芝居お願いしたい」
秀欣平「芝居か、反日の芝居なら上手いぞ」
岸 部「そのようで。その反日を煽って貰いましょうか」
秀欣平「煽る?」
岸 部「海自艦を台湾海峡に向かわせます。米軍と共にね」
秀欣平「何!」
岸 部「超えてはならないレッドラインとか言って抗議してください」
秀欣平「それと総裁選とどう関係する」
岸 部「高壱は貴国と戦争をしたがっていると印象操作したいのです」
秀欣平「そこに何故、米軍がくる?」
岸 部「米国も靖国を参拝する高壱を嫌っている。目的が同じと言う事です」
秀欣平「そこまでして高壱を降ろしたいか」
岸 部「再起不能にしたいのが本音だ。私に敬意を払わない奴は排除だ」
秀欣平「日中関係を悪化させたくないは、米国も同じだろうからな」
岸 部「お互いの利害が一致しましたね。では、適度に騒いでください。スクランブ
ルなど大袈裟な真似は避けてくださいよ。中酷は敵だと言う印象を与えない
ようにくれぐれも暴走しないようにお願いします」
秀欣平「分かった」
総裁選投票前日、海自艦が米軍ともに台湾海峡を始めて通過した。中酷外務省は「超えてはならないレッドラインだ。政治的意図に強い警戒心を持っている」と日本に抗議してきた。
総裁選は予想通り、高壱が残った。相手は故泉が自滅し、石庭となった。高壱の検討は予想を遥かに超えていた。「俺を苔にした愚かさを思い知れ」と岸部は、岸部派閥や反高壱は勿論の事、故泉を支持する者、総選挙で当確が危ぶまれる議員に「海自艦が台湾海峡を通過した。中酷は怒っている。高壱を応援することは、日本を中酷との戦争に引き込むことになる。光迷壱以外の候補者に入れるように、わかったな」と電話連絡した。
無派閥で国民を味方につけた高壱氏だったがその支持が高まるにつれ、議員の中で嫉妬と不安が高まっていた。消費税を含み増税を行いたい財務省の圧力もあり、ひ弱な議員は反高壱に回った。故泉の75票、女性初を渡したくない上河の23票、興梠太郎の22票、石庭の46票、コバホーク、茂季、森、可藤に投じていた岸部派閥の票、三階派閥から計23票が石庭に投じられた。
嫌われ者だった石庭は、議員票を46票から189票に伸ばした。驚いたのは石庭本人だった。嫌われ者は、石庭から高壱氏になった瞬間だった。
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