第170話 中酷No.2李経の造反

李経「このままでは、中酷は滅んでしまう。いや、強酸党も壊滅だ」 


強酸党は人民を駒や肥しと考えている。不毛の中酷に危険を冒して真逆の資本主義を取り入れ、急成長してきた。自由思想を極端に警戒しての話だ。中酷の行うことは「成金」そのもの。自分たちで実現できないものは、盗め。

 人民を踏み台に低賃金・長時間労働で薄利多売を形成し、ローコストで利益を上げたい海外企業を招き入れたのは周知の事実。強酸党幹部・中堅党員は、砂時計の砂のように泡銭をため込んだ。成金は成金。金の使い方を知らない。強酸党の西側諸国の知識が欲しい。成金は見栄を張りたい。二つが相まって米国への留学が増えた。強酸党はこれで多くの知識を盗めると推奨した。しかし、野に放たれた強酸党幹部・中堅党員の子供たちは豊富な資金を背景に自由を知ってしまう。それは自国の行いが誤りである、可笑しな運営であることへの不満を拡大してしまう。


 これでは強酸党思想を剝され、崩壊する。


 経済成長を成し遂げた中酷・秀欣平は、人民は、愚民でなければならない。知恵など付ける必要はない、と工作員以外の留学を禁じる動きに出た。表面上は、金持ちの子息のみが大学に通える不平等さを排除するため、学習塾の廃止を打ち出した。小金持ちは一人っ子政策のお陰で金を惜しみなく子供に費やす。優秀な子を育てることは、自分たちの老後を豊かにすることが儒教の思考が背景にある。欲しがる物は何でも与え、我慢をさせない。我儘し放題が蔓延する。さらに、人口の多さから口喧嘩の優劣が交渉の糧になる思考が化学反応し、今や世界で一番の民度の低さを誇っている。そのどこが誤りかなど憂慮すべき思考など持ちえない。中身のない者は、常に自分が一番だと感じられなければ生きていけない不良の思考と同じだ。同じ思考は儒教を遂行する缶酷も同じだ。自分たちが一番になるためには不正のなど気にしない。善悪の理念が崩壊し、国際ルールやスポーツなどで独自の路線を転げ落ちている。

 「亡者」と化した者は、目先の金に我先に飛びつく。中酷・缶酷の不動産バブル崩壊がその悪影響を顕著に表している。

 人口の何倍かもある住戸。今は、一括で買えないから利用するローンだが、缶酷では支払期日に一括で返済する仕組みがある。賃貸の契約も似たものがあり、その場凌ぎでその後の恐怖を考える能力が完全に欠如している。「亡者」の目には「金」しか映らない。秀欣平は「亡者」に邁進し、身の程の見極めを見失った結果、横暴の暴君と化した。


 中酷強酸党のNo.2国務院総理の李経と側近・則明は今の中酷を憂いていた。


李経「このままでは、中酷は滅んでしまう。いや、強酸党も壊滅だ」

則明「返す目途が立たない金が膨れる一方です。公務員や軍などに給与が払えないど

   ころか返金しろと無茶も度が過ぎた状態に陥っています。 人民から金を巻き

   上げ、アフリカに総額3600億人民元を搬出する暴挙にでています」

李経「返済されない金はどぶに捨てるようなものだ」

則明「さらに後発途上国からの輸入関税の撤廃も行う」

李経「経済が破綻している中、どこからそのような金が湧いてくるのか」

則明「摩訶不思議なことです」

李経「秀欣平にすれば公約の台湾統一のためと言うのであろうが、統一どころか我が

   国がなくなる。ソ連崩壊のようにな」

則明「北戴河会議で指導部の秀欣平への非難は限界点を迎えていました」

李経「長老たちからも動けとの指示が出た。まず、現状での力関係を探るか」

則明「で、どうなされるのです

李経「秀欣平講話の国民会議での記録から奴の名前を消し去ってやるか」

則明「それは面白い」

李経「秀欣平からなぜ、名前がないと言われたら、あなたの講話に態々、いらないか

   と。お気に障ったなら手違いだと謝ってやるわ」

則明「人民を味方につけなければなりませんね」

李経「水害被災地・湖南省を訪問する。人民の災害に無関心だから奴は」

則明「無関心だから無駄なことと思うでしょうね」

李経「人民絡みで学習産業への支援を行ってやる」

則明「秀欣平が出した学習塾禁止令を覆すのですね」

李経「あの手この手で人民に金を使わそうとして失敗してきている。不安の中である

   から子供への投資には金を出すと言ってやる」

則明「秀欣平も黙るしかないようですね」

李経「巨大なダムも蟻の穴から崩壊する、だ」

則明「人民には国内より他国に金を費やしているとさりげなく伝えましょう」

李経「ああ、慎重にな」

則明「暴動も増えてきています。危険ですが、それは自由にさせましょう。内乱が増

   えれば好都合ですから」

李経「崩壊が先か、反逆が実るか。中酷の分岐点にしてやる」









李経則明秀欣平

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