第144話 秀欣平の心中 

 学歴・専門知識のコンプレックスから他人の言うことを聞かなく、聞けなくなった秀欣平が唯一、心から話せるのが琳鄭りんていだった。地位の特権を用いて側近として囲っていた。琳鄭との関係はペットと主人の関係にあり、琳鄭には自分で餌を補う術を一切教えないでおいた。自分に忠実な人物にするためだった。学識のなさを補うように優秀な者を次々に粛清した結果、経済に疎い主導者として世界に認知され、同時に中酷への元々怪しまれていた信用も間違いなく信用できないものとなり、政府が打ち出す華々しい数字に世界は失笑する有様迄に下げていた。


琳 鄭「主席、失業者が大変なことに」

秀欣平「分かっている。猛沢蕩が築き上げた上海閥の解体の結果だ。不動産に群がる

    利権を崩壊させたのもな。この国が崇めるのはこの私だけでいい]

琳 鄭「はい」

秀欣平「住居は住む場所。投資目的ではない、そうだろ」

琳 鄭「はい。前主席の猛沢蕩・李哭凶の犯した罪です」

秀欣平「そうだ。それを私が正しただけだ。それで人民が苦しむのは奴らの口車に乗

    った人民の自業自得だ」

琳 鄭「人民の金融資産が目減りしています」

秀欣平「消費が低迷し、猛沢蕩の自慢の上海は閑古鳥を飼っているようだな」

琳 鄭「賑わっていたのが嘘のように衰退しています」

秀欣平「愉快じゃないか。私に苦言を呈する老害たちの慌てようが目に浮かぶ」

琳 鄭「はい」

秀欣平「民間の企業の創設者が資産と言う力を付け、欧米諸国に感化され、我が強酸

    党に歯向かう図式など許せるはずがない。出る杭は打たれるだ」

琳 鄭「はい。しかし、不動産が値下がりしては人民が黙っていないかと」

秀欣平「放っておけ。騒げば抑え込むだけだ。直ぐに静まる。それに動きが取れなく

    なった不動産企業に救いの手を差し伸べてやる。余り溢れた住宅を安く買い

    叩いて人民には適正価格で貸し与える。私欲を肥やし、人民に感謝される。

    いい手だろ」

琳 鄭「はい。しかし、それでは不動産業の新規建築に影を落とすのでは」

秀欣平「浅はかな。私利私欲に飢えた無計画な強欲な者を粛清するまでのことだ。歪

    んだ認識を正すだけだ。企業は人民に本当に役立つものを作ればいい。愚か

    な人民は目を覚ませばいい。人民を裏切ったのは前主席たちのせいだと言う

    ことを人民に知らせることで私の存在価値・意義・尊厳を確認させ、私はこ

    の国の皇帝になる。押しも押されぬな」

琳 鄭「はい」

秀欣平「人民の不満は私以外に被って貰えばいい。私は人民を苦境から救う救世主と

    なる。そのためには人民が苦しめば苦しむほど有難みがあるだろ」

琳 鄭「はい」

秀欣平「私腹を肥やした不動産業者には不手際に対応する資金はない。それに手を差

    し伸べてやる、私への忠誠と引き換えにな。老害たちの利権は全て奪ってや

    る」

琳 鄭「はい。EV車で世界を席巻した。日本を除いてですが」

秀欣平「生意気な日本か。台湾にも肩入れているようだな。価格につられ自国の産業

    の影響も考えずほいほい騙される欧米諸国と違い疑い深い日本には通じな

    い。汚染水と言い放つのが関の山か」

琳 鄭「台湾に関しては、先日、利教首相が子飼いの犬の野党議員を呼びつけ、加担

    すれば日本を火の海にすると釘を刺したようです」

秀欣平「子飼いの犬には憲法改正の邪魔を徹底的にさせるように伝えよ」

琳 鄭「はい」

秀欣平「フィリピンのバンバン市長が我が国のスパイだと疑われている状態では、余

    り目立った行動は出来ないか」

琳 鄭「オンラインカジノの収益が絶たれるの痛いですね」

秀欣平「ふん、潰されればまた作ればいいだけだ。民主主義は数が決め手だ。人民を

    大量に送り込めばいいだけだ、問題ない」

琳 鄭「フィリピンで問題でも日本では問題ないです。沖縄にしても呼びつけた野党

    議員も企業も主席に逆らえません。追及をされるような危機感は微塵も感じ

    られません」

秀欣平「世界も日本を見習えば上手く関係を保てるのにな、あはははは」

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