第139話 琉球を献上する知事

 秀欣平は出口の見えない冥府魔道に入り込んだ。利益を齎した外資を言うことを聞けなければ出て行けと号令をかけた結果、想定外の外資が逃げる有様に豊かな市場を捨てるバカ者と高笑いしていたのが嘘のように外資を招き入れるのに必死だ。積極的に国際的な会議に参加し、経済危機など中酷にはない。あるのは明るい未来だと豪語するが、未来に向けた具体的な政策がなく、騙されていた世界も現実を目にして、中酷の実態を知り、冷ややかな目と欠伸でスルーする事態に呆れるばかり。国内では、鬼城、閉鎖工場、失業者の増大で景気対策の不安が飽和状態に近づいていた。頼りのEV車も薄利多売と国の援助で売りつくした結果、国内業者は淘汰され倒産増加に歯止めが効かない状態に。不動産業社も金策の目途が立たず死刑執行を待つしかない状態。未完成の住宅を買わされローンに苦しむ人民の不満も巨大な地雷そのものだ。国家高揚を望める台湾侵攻も不況下で軍による燃料・備品の横流しが横行し、まともに機能できない状態に。中酷自慢の遼寧・福建・山東などの空母も露西亜の旧式を改造したものかそれを真似て建造したもので現在の戦闘機に耐えられず甲板がひび割れや陥没する始末。カタパルトやレールガンは見せかけで機能しない映画のセットの域を超えない。上海の凋落が今の中酷の象徴だ。


琳鄭「主席、人民の不安が危険水位に達するのも時間の問題化と。台湾侵攻も

   軍が機能しない状態では国際的孤立を招くだけです」

主席「言いにくい事をはっきりと言う奴だな」

琳鄭「申し訳ございません。ただ提案があります」

主席「何だ」

琳鄭「即効性はありませんが、尖閣諸島の領土・領海と潜む石油資源を手中に

   すれば反日を用いて国家高揚につながらないかと存じます」

主席「最近、日本が行動を起こそうとする動きがあるな」

琳鄭「はい。そこで子飼いの猿を利用してみてはと」

主席「子飼いの猿…琉球の知事か」

琳鄭「猿を舞い上がらせるため早々に高官との面談を叶えさせ、琉球の独立を

   煽ってやりましょう。台湾同様に大学に我が学生を大量に送り込み、独立

   運動を起こさせ日本と衝突させ、露西亜のウクライナ侵攻したようにわ

   が国民を阻害したと日本を二分させ、その間に尖閣を実効支配する」

主席「面白い。それなら金は掛からないな」

琳鄭「では早速、五月上旬にでも序列四位の王鄭寧を琉球に行かせましょう」

主席「自衛隊が本格的に動き出す前に琉球を取り込む。日本を黙らせるカード

   を手に入れるのは良い事だ、わはははは」


 秀欣平は国内の不満を外に向けさせ、時間稼ぎできるなら手段を選んでいられない程、追い詰められていた。強酸党の重鎮が秀欣平失脚を狙っている。軍部の掌握は秀欣平の失策で固まりつつあるがクーデターのような荒い手を使えば人民の強酸党への信頼感を大きく損なう恐れがあるから避けたかった。重鎮たちは、秀欣平の粛清の方法を模索していた。



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