第137話 絵空事

 中酷は経済だけでなく様々な問題が山積みされていた。砂漠に近い場所では黄砂に悩まされ、北部では深刻な水不足がある。その問題解決に乗り出したのが蔣回石率いる中酷民国政府を台湾に追放し、1949年10月1日に中酷人民共和国の建国を宣言した猛沢蕩だった。北方の民からの水不足の不満を解決するため、洪水が起こるほど水が豊富な南方から北方へ送水ルートを築く南水北調プロジェクトを立ち上げるが2mから45mへとポンプで送水するという途轍もなく費用も問題も多く抱えるものだ。費用の十分の一が政府負担で残りが銀行からの融資と建設ファンドで補っている。プロジェクトの中止や破綻は、銀行・投資家の破綻を呼び込むので中止することが出来ない行き当たりばったりの計画だ。これでは人民が政府が管理する株に信用を置けないのも頷ける。しかもこの開発には広大な土地が必要なため森林伐採や八百あった河川が二百河川にまで減し、保水量を低下させる杜撰さ。当然、生息していた固有種の幾つかは絶滅している。結果として洪水が後を絶たない名物のようになっている。治山治水を理解できない金の亡者の末路だ。これ日本にも言える。太陽光パネルを無計画に作り禿山を作り出している。大義名分を高らかに掲げながら、実益が伴っていないだけではなく、メンテナンス・参拝費用・土壌汚染の問題も解決されていない。EV自動車も同類だ。

 中酷の予算は国や人民には向けられない。治水やインフラ工事は海外に向けてアピールするために行われるもので内容より見た目の突貫工事が多い。費用は政府が本の少しで後はこれが一党独裁の元凶だ。生活用水・農業用水に加え工場誘致などで工場用水を必要としていた。降雨量が少ない地域には黄河からの水で補っていたが目先の利益優先の無計画な工場建設で足りなくなった。北京や天津市では市街地の給水の七割以上が南水北調に頼っている。黄河を支援するように長江の水が使われているがこの水が問題だった。中酷が経済発展にかまけて下水処理施設の整備を怠ったため、未処理の排水が河川に投棄され、河に絵の具を流したように異臭と変色の温床になっていた。さらに大きな問題が隠蔽対象にされている。それが三峡ダムだ。長江上流地域と江西省、湖南省、安徽省に至る水力発電ダム。衛星写真で見ると明らかに堤防に歪みが確認できる。事実が公になると中酷政府は改善したと宣言。衛星写真は修整が加えられたものだけが閲覧できる。衛星写真で大規模工事が核にされていないのは修復困難で手の打ちようがない状態であることを物語っている。工事が終わったと宣言された後、三峡ダムを守るため、小規模ダムを決壊させ四川省や重慶市で洪水を引き起こしている。強酸党は面子を守るためなら人民の生活を無視するのが当たり前だ。三峡ダムは既に警戒水位を15mも上回っている。決壊すれば上海など被害者は四億人以上に達するとの報告もある。


琳鄭 「主席、水不足、水質汚染が止まりません…あっ、もしかして工場の閉鎖はダ

    ム決壊を防止するための政策ですか」

秀欣平「馬鹿なことを言うな。しかし、決壊すれば、強酸党も壊滅するだろうな」

琳鄭 「前門の虎、後門の狼じゃないですか」

秀欣平「こうなればお前が言っていた北朝鮮の仕業に見せかけ、鬼城同様、三峡ダム

    を破壊させ、新たな街づくりを行うか。そうなれば、建築業が息を吹き返

    し、雇用も増えるからな」

琳鄭 「中酷には安全な場所がないですからね。道路は陥没するし、建物は倒壊する

    し、洪水が多い。その水は水質汚染され疫病を撒き散らす、大気汚染も」

秀欣平「そうだな、根本的に立て直すしかないな」

琳鄭 「災害で人民が減っても小国よりは遥かに多い。自給自足できる国を目指しま

    しょう。農地開拓に都市開拓と新生中酷を手に入れるチャンスですよ」

秀欣平「希望が見えてきたではないか、わハハハハハ」

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