第136話 中酷に戦術核を撃つ露西亜

 経済音痴の中酷の秀欣平のその場凌ぎの愚策で、深みに突き進むだけの沼から抜け出せないでいた。旧反スパイ法と比べて、スパイ行為の定義が拡大され、当局の偵察手段も強化された中華人民共和国反間諜法は、外国資本を欲しがる中酷の思いに真逆の効果を発揮した。海外企業が中酷に拠点を築こうと現地調査を行えば、国家秘密、情報およびその他国家の安全と利益に関わると逮捕・拘留される。投資先の調査が出来ない状態で投資など出来ない。自ら道を閉ざして、海外企業を誘致できるはずもなく、自国を守ることと盗人根性で技術を横取りし、楽して儲けようなど虫が良すぎることにさへ気づけなくなっている。人口の多さが購買層の多さと訴えだまし続けてきた他国は挙って中酷の嘘に気づき始めた。前首相が告白していたように九億の人民の

平均月収は二万円。富裕層と言われるのは一億人以下。その一億人は利権で搾取し儲けているだけで生産性はないに等しい。海外企業が撤退する中、富裕層は金種を失っているので将来に不安を感じ金を使わない状態に陥っている。以前なら不動産投資していたがそれが溶けて泡銭に。銀行に預けても思うように金を動かせない。それ以上に泡と消える可能性もある。タンス預金かインゴットに変える。その金でさへ国家の発行するモノでさへ金メッキや青銅色になる始末。海外企業への株式投資も国によって監視・管理されるなか消費は底冷えするのが現状だ。不動産投資が崩壊し、工場が閉鎖し、新たに経済を刺激するものがない。世界通貨を目指す人民元は、紙屑になる日も近い。それも政府が嘘と改竄で作り上げた数値に踊らされ、嘘が明るみに出た時に一気に紙屑になる。人類が経験したことのない国家破綻が間近に迫っている。


琳鄭 「我が国が露西亜の衰退に乗じて侵攻を企てていたことがプチン大統領に漏れ

    た疑いがあります」


 琳鄭りんていとは秀欣平が唯一、心を開いて話せる血縁関係にある者で秘密裡にされている人物だ。


秀欣平「なぜ、そう言える」

琳鄭 「露西亜軍の機密文書をイギリスが手に入れたものがあります。そこには中酷 

    強酸党が露西亜侵攻した場合、戦術核兵器で中酷軍を壊滅させるというもの

    です。既にシミュレーション、演習が終わっているのこと。中酷国境に近い

    極東地域で核ミサイルの強化と訓練は続けられています。核能力を持つ

    9K720「イスカンデル」ミサイルの演習が現実味を帯びています。その多く

    のシステムにあるのは、中酷を攻撃する射程だけとのことです」


 戦術核と呼ばれているが広島・長崎に落とされた物より破壊力は大きいい。


秀欣平「カザフスタン、ウズベキスタンの勢力圏内の奪い合いか…。道理で侵攻で忙

    しいプチンが上海協力機構のサミットに参加してきたわけだ」

琳鄭 「四面楚歌に陥れば何を行うか分かりません。現にウクライナに核を使えと言

    う勢力をプチンが国際批判を考え抑えているのも事実です。それが我が国が 

    対象であればハードルは下がると考えられます。現に資源を格安で売らせて

    いるわけですから」

秀欣平「小癪な。情報はどこから漏れた…ロケット軍か」

琳鄭 「定かではありません」

秀欣平「いつまでも高飛車の露西亜にこの機に一泡吹かせてやろうと思っていたが、

    次期早々ということか」

琳鄭 「主席、もし我が国が露西亜に侵攻すればどうなるでしょうか。米国・西側諸

    国にしてみれば両国とも敵。我が国への批判は当然、高まるでしょうが露西

    亜への後押しはないでしょう。どちらかが弱り果てたとき襲い掛かって来る

    やもしれません」

秀欣平「奴らからすればこれ幸いの高みの見物か」

琳鄭 「今は台湾・フィリピンとの紛争もあり手が回らないかと」

秀欣平「そうだな、露西亜の軍事演習は我が国への警鐘ということか。見せかけの友

    好関係を自ら露呈させるとは枕を高くして眠れない自白か、追い込まれた鼠

    は何事にも恐怖を感じる証だな」

琳鄭 「これを知った所で刺激なさらないように負け犬の遠吠えですから」

秀欣平「分かっている。しかし、国内の不満・不安を逸らすためには、人民の意識を

    外に向ける必要がある」

琳鄭 「起死回生の経済策が見当たらない以上、仕方ないかと。しかし、ロケット軍

    は指揮官不在で機能せず、電磁式カタパルトを搭載した空母・福建は重くて

    低速で敵の恰好の的になる有様。搭載機もなく甲板に亀裂も入った。山東は

    艦載機の訓練による離着陸で基準以下の構造で甲板損傷。遼寧は発艦方式は

    スキージャンプで甲板の先端を14度上に反らしたもので力任せでの発艦。

    そのため艦載機はフル装備できず、燃料・ミサイルも積み込めない有様。現

    時点で故障して稼働の見通しがついていません。主席の思惑に反し訓練では

    問題なくても実戦では役に立つかは未知数というか期待できないのが現実で

    す。働き口のない若者を徴兵したはいいが一人っ子政策で出来た奴らです。

    訓練の時点で辞めたり逃げ出す始末。まともな戦力がないに等しいのが現状

    です。上陸戦であれば勝ち目もありますが上陸できるかが問題です」

秀欣平「我が国が四面楚歌ではないか」

琳鄭 「言いにくいですがそれが現状です」

秀欣平「不動産企業が潰れようが自業自得だが政府が関与する融資平台の債務不履行

    は強酸党の面子を潰すものだ。それだけは避けなければ…」

琳鄭 「避けられません、今となっては。地方は政府の交付金頼り、それも賄えな

    い。一体一道の不良債権や過剰なインフラ投資の借金も莫大です。こうなれ

    ば戦争でも引き起こし、未完成の物件や鬼城を破壊し、他国のせいにし、逃

    げ切るしかないのでは」

秀欣平「その手があったか。相手国は台湾か、いや北朝鮮か」

琳鄭 「それはいいですね。北朝鮮であれば国際的批判も受けないでしょう。北朝鮮

    国境付近から複数ミサイルが撃ち込まれ被害を受けた。そうなると北朝鮮を

    挑発しなければなりませんね」

秀欣平「絵にかいた餅は食えないが、嘘もつき続ければ本当になる例えだな」

琳鄭 「我が国の発表する数値予想と同じです。都合がいいことに奴らの行動は理解

    不可能な面も多々ありますから問題ないでしょう」

秀欣平「恨みつらみを北朝鮮に向けるか、悪くない。北朝鮮の核爆弾・格納庫を調べ

    ろ。特に移動式の制度をな」

琳鄭 「主席、私にそのような権限はありません」

秀欣平「そうだったな、あははは」


 暗中模索の中秀欣平は奇想天外の思い付きに一縷の望みを抱いていた。


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