第127話 中酷潰し

 中酷が経済崩壊を認めた。不動産市況の悪化で個人消費が低迷し貯蓄に人民は走り、提唱していた内需拡大も自律的回復は望めないでいた。外資が中酷から逃げ、多くの工場が閉鎖。雇用状況に大きな陰りを見せている。特に若年層の雇用・所得環境は失業率が16~24歳で46.5%が収入源をなくしてる。出稼ぎ労働者を含めると60%を超える。消費を減らし、債務の返済を優先するのも無理もない。株式市場も連日の下げ幅を記録し、政府が介入すると投資家は逃げ時期と捉え株を手放す状態で奈落の底へブレーキが効かない状態にある。

 世界的にEV(電気自動車)は低調のベクトルに陥った。世界一のシェア率でテスラを抜いたBYDでは大量の離職者やNIOでは大規模なリストラがなされている。中酷ではよくある過剰な生産によって在庫を抱え、従業員の残業代はなくなり、過剰供給により価格が下落し、給与を払える状態にない。ついには雇用を維持したければ自社の車を買えとの押し付けも発生している。EV車はパーツが割高なため修理代が莫大であり、新車が買えるほどになることも稀ではない。

 強酸主義が蔓延るのを懸念した米国は米国で半導体製造設備に投資する企業に対して五年間の期限付きで大規模な補助金を支給する。その条件がその後十年中酷での投資を大幅に制限させるというチッププラス法を導入しの中酷への締め付けを開始。中酷国内ではいつもの如く補助金目当ての未経験の参入社数が一気に増え、品質が追いつかない半導体事業は一機に瀕死な状態に陥る。チッププラス法は嘗て日本が半導体シェアを得た際に仕掛けられたものに類似する。そのお陰で日本の半導体シェアはその影も見えない状態にまで落ち込んだ。米国は半導体の特許を持つ台湾のTSMCや日本・オランダを巻き込んで中酷の半導体事業潰しに罹った。特にTSMCは台湾有事を睨んで製造拠点を世界に分散し始めた。中酷は半導体の主要鉱物であるレアアース輸出に制限を掛けたが米国は自国での生産に着手し、日本はレアアースを使わないで済む高性能磁石の開発に漕ぎ着けたほか、EEZの海底にあるレアアースもあり、中酷の思惑を一掃した。

 日々、進化と変化する半導体事業に対応できずなんちゃって中酷企業は倒産の山を築いた。最新の半導体が手に入らなければ新兵器の開発は於保つかず、中酷の苦手なメンテナンスにも部品が手に入らず金に物を言わせて買い揃えた兵器は実用化には向かない鉄屑となろうとしていた。

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