第125話 病巣削除して国、亡ぶ

 香港の高等法院は中酷本土の中酷恒第集団に清算命令を出した。中酷恒第集団が中身の伴わない債務再生案による引き延し案に具体性が乏しいと19ヶ月に及ぶのらりくらりに痺れを切らし、返済能力がないと鉄槌を下したものだった。香港証取は恒第と関連二社の株取引停止。ただ、実行力は中酷本土が握っており、施行される可能性は明らかに低かった。それはGDPの三分の一を占める不動産業の企業の倒産は秀欣平の汚点となり許すはずもなかったからだ。不動産業で私腹を肥やした強酸党の重鎮たちは敵であり保護することなど考える余地など微塵もなかった。犠牲になるのは一部の人民と私腹を肥やした党幹部たち。秀欣平からすれば自業自得の思いが強かった。国内の情報管理など朝飯前。秀欣平にとって自分の地位を脅かす資金源となる賄賂の温床を撲滅させることが重要課題だった。

 しかし、世界の見方は違った。香港の高等法院の判決は実際の中酷の不動産の実態を知らしめるには十分だった。強酸党は香港の決定をSNSから完全に削除し、人民には知らせない。人民は、井の中の蛙大海を知らずで危機感を実感することはない。国内の状況を知らされない人民もローンを返済し続けても物件が引き渡し期限を過ぎても一向に手渡されない状態では流石に可笑しに気づく者も出てくる。

 中酷の不動産は投資目的であり、実際に住もうとする者は購入者の二割に満たない。住もうとする者は明日の生活に関わり騒ぐが何かと言い訳を浴びせられ、警察も企業側に加担し強制的に黙殺される。

 投資した資金に余裕のある富裕層は、資産を減らす厄介な物件を叩き売りし、損失防止に動く。強酸党は不動産不況を浮き彫りにしないため、販売事態を抑制。騒げば拘束・処罰。地代貸与で濡れ手に粟で稼いでいた地方政府は大きな収入源をなくし、従業者への給与さへ支払えない状況に陥っていた。

 強酸党は鎮静化を図るために不動産会社に未完成の物件を完成させ、購入者に引き渡すように命じたが自転車操業で建築してきた不動産会社に完成させる能力などない。さらに、投資物件が前提であり住むための物件ではないことから既定の建材より安価な物を使用し、工期を短縮。その差益は賄賂と高官・重役の私腹として消え、日本のような地震が起こればドミノ倒しで高層建築の建物が倒れる懸念は拭えないでいた。

 公称14億人の人口に対し、戸数は34億戸。年収一万にも満たない農村部の住民を含めても需要が有り余る過剰な戸数。

 中酷では儲かる事業に群がり後先考えず食い散らす国民性があり、不動産・電気自動車など需要と供給と言う経済の根幹が理解できない。欲が勝り競い合い、主導権争いを繰り広げ、市場を独占を目指す破綻しかない妄想に憑りつかれ事実を見ることができない。市場を無視した強欲で膨らみ過ぎた風船は弾けるしかない。政府の補助金を得て市場を獲得しようとした電気自動車産業はあっという間に弾けた。格安の陳腐な電気自動車は、レンタルで儲けようとした業者も加担し、土壌汚染を確定させた大量放置の電気自動車の墓場を築き上げた。

 オリジナルがない中酷産業は秀欣平の特許を寄こせと言う無謀な政策により、海外企業の撤退を招き、破綻の一途を辿っていた。資金源を自らの政策で閉ざした秀欣平には国策として不動産業を支える資金などない。国民の生活をおざなりにし軍事に投資する。まさに中酷は北朝鮮化しているのが現実だ。

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