第124話 おから国家

 中酷の経済成長を牽引する投資・消費・輸出が完全に停滞している。中酷の消費は若者が握っている。その若者が就労機会を大きく失い消費が低迷。高齢者は早寝早起きで消費しない。強酸党は人民に耐える心を求めている。人民は借金が膨らみ生活の破綻が間近に迫っている。安定した公務員でさへ給与の未払いや大幅な減額が余儀なくされている。秀欣平は台湾侵攻を念頭に軍隊への参加を提唱している。今まで生活に苦しむ農民族が安定した収入を求めて入隊してきたがその軍隊でさへ給与の未払いが発生している。元々が愛国心ではなく経済的安定を求めて入隊した人民の不平不満は蓄積するばかりだ。

 政府の収入源の多くは不動産・貿易による外貨・税収から得ており、地方政府は借金を返済する余裕がない。収支バランスが崩壊した今、「お金がない」のが現状だ。

 若い世代は失業し、多額の住宅ローンが払えない。手に入れた不動産は未完成であり、また幸運にも完成した物でも「おから建築」で住むに堪えない恐怖に置かれる未来への恐怖は高まると同時にこの悲劇を招き入れた秀欣平への批判も高まりを見せている。その中で可笑しなことが起きている。中酷強酸党の元党首・古今唐の息子の

官二代のトップである古海邦は重要な会議を欠席し、SNSでは名前が禁止ワードになる異常事態が発生している。2022年10月22日の第20回党大会の閉会式で古今唐が秀欣平の指示により強制退場されたことは強酸党の内部闘争の最も熾烈な場面であり、その息子の古海邦の政治的効力も封じ込められていることを意味している。

 武力統制に参加した強酸党の特権階級・紅二代の一部が秀欣平の政策に異論を投じ結託。その意を組んでいると見られるのが官二代のトップである古海邦だ。古海邦たちは秀欣平の文化革命への回帰政策に反対し、民主化に向けた政治改革を支持していた。古海邦の不可解な処遇は秀欣平によるクーデター首謀者の粛清ではないかと囁かれている。紅二代の一部は国際社会に向けて、秀欣平の個人独裁に反対する認識を形成し、行動に移す準備が出来ていると表明している。それに古海邦は賛同し、民主社会主義の道を目指していたとされる。

 秀欣平は民衆の反乱を随所で抑え込んでいる。その一例が刀狩りだ。民衆が武器として用いる包丁にワイヤーを取り付ける義務を法案化させた。紅二代・官二代のエリートが反乱を起こした所で民衆が同調しなければ威力はない。民衆の不満分子を早期に封じ込めることは紅二代・官二代のエリートの中の反乱分子を抑え込むことにもなる。秀欣平の不安は紅二代・官二代・民衆の不満だけでなく、軍部・軍人にも広がりを見せている。中酷経済の低迷で軍人に給与が支払われない事態が発生。軍人たちは軍の燃料の横流しを行い、代わりに水を流し込む。軍備のメンテナンスは部品の調達不備に加え、作業そのものも行われい事態にあり、ミサイルの発射口が劣化し開かない事態に陥っている。配備されたミサイルやその他軍備も使えるかの確信が得られない事態に陥っている。このような状態では台湾侵攻など叶うわけもない。

 更に紅三代は秀欣平との決別で意見が一致する傾向が生じてきている。紅二代は軍部のへの影響が大きい。その中でロケット軍を始めとする軍隊への粛清が広がりを見せていることが中酷内部に何が起こっているか物語っている。

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