第122話 痺れを切らした地雷原

 戦狼報道官が米国に亡命。中酷強酸党には「紅二代」という層がある。元高級幹部の子弟で構成されるグループ「太児党」のうち、1949年の新中酷成立の前に強酸革命に参加し、日中戦争や中酷国民党との内戦で貢献した幹部たちの子女の呼称だ。それに加え、戦争を経験せず平和な時代に党や政府の指導者となった幹部らの子女である「官二代」と呼ばれる層がある。紅二代の十数人が秀欣平の罷免を求める連署を行い2024年に秀欣平の権力は衰えると予言した。

 粛清が日常化する中での出来事だ。中酷強酸党の本家と呼べる紅二代でもある秀欣平だが文化革命の際、秀欣平の父が迫害を受け、冷遇された経歴がある。腐敗政治に躍起になるのもその仕返しの感が拭えない権力闘争の成りの果てだ。地方勤務が長かった秀欣平は経済成長の中、賄賂・水増し報告の問題などを経験していた。国民の不満の原点もそこにあった。その浄化に努めた秀欣平だからこそ指示を得ている。強酸党員の襟を糾そうとすればするほど経済は悪化し、権限政治の脆さが暴露される結果となった。

 共産主義ではあるが資本主義を積極的に取り入れ成長を遂げてきたが、党員や国民が経済力を得ることは強酸党の意思伝達の障害になると考えた秀欣平は積極的に紅二代と官二代の粛清を実施し、地方政治でともに尽力してきた者を優遇した。その結果、自由競争が抑制され、教育が制限されたため、本家とも言える紅二代が立ち上がった。内紛の兆しだ。秀欣平も強酸党の有力者であり功労者である紅二代を封じ込めるには骨が折れる。

 紅二代の一部による秀欣平の罷免を求める内容は、秀欣平が10年間の政権運営でで唐翔平の改革開放路線を完全に放棄したことは文化革命時代に逆戻りし、政治・経済・社会・外交の全面的な危機を招いた裏切り行為だという点。秀欣平が台湾との戦争に突入しようとしてる点。秀欣平の個人独裁が経済悪化で失業者が増え国民の不満を募らせ、給与不払いや遅延で役人の疲弊も踏まえ社会的危機が一触即発の事態である点。対外的に戦狼外交を展開し、中酷を先進国体制内で公然の敵に仕立て上げた点。更に現中強を放棄し、社会民主党に変え議会政治制に向かう事。台湾への武力行使による脅威国策を放棄し、国際関係の改善を行う事が挙げられている。

 秀欣平への反乱の狼煙となるか。秀欣平が猛沢蕩の真似をして紅二代に政治的迫害を行えば、党内でも穏やかではなくなる。命を狙われる危険性から益々、公に出る機会を喪失し、秀政権の衰えを露呈する。

 紅二代の中強の既得権益者や権力層の幻想に終わらないかを見守る必要がある。

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