第4株 複利とか積立とかドルコスト平均法ってなに?

「じゃあ次は運用方法について教えるね」


「MIKIMOTO……じゃなくていーまく……何だっけ? 世界中の会社の株買えるやつ」


「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)ね。まず楽天証券のサイトでログインして『投資信託』の欄を押して」


「ほい。何か今のあたしのステータスみたいの出てきたよ? えーと投資信託資産合計0円、トタルリターン0円、評価損益0円、投資信託買付可能g……」


「ストップ! 最後のそれ、あんたの貯金額よ。楽天銀行に入ってる預金額」


「え! あ、そうだあっぶな! まぁ別にバレてもいいけどそんなにないし」


「投資信託資産合計=投資信託に投資した金額、トタルリターン=投資の収支がどれくらいプラスかマイナスか、評価損益=実際どれくらい得してるか損してるか、投資信託買付可能額は楽天銀行に入っている預金額、って感じ」


「なるほどー。で、この後どうするの?」


「それらのそばに『スポット購入』『積立注文』ってボタンあるでしょ? そこ押すと買える。『スポット購入』は1回だけ単発で買うこと、『積立注文』は同じ商品を定期的に一定額自動的に買うこと。毎日1,000円ずつ買う、とか毎月1日ついたちに3万円ずつに買う、とかね」


「ん? 同じものを定期的に一定額買い続けるの? いつ売るのそれ?」


「いや、売らない。たぶん20年くらい売らない。下手すればもっと長い期間売らない」


「えー!? それじゃあ全然儲からないじゃん!」


「短期や中期で売って利益出そうと思えばできるけど、せっかく複利が効いてるから勿体ないのよ」


「ふくり……?」


「そう、複利。これが投資、資産運用で一番重要な知識だからしっかり説明聞いてね」


「は、はい!」


「株や投資信託の年間利回りの相場が5~9%と云われてるの。つまり100万円を1年間運用したら105万円~109万円になるってことね」


「ふむ」


「じゃあそれをそのまま放っておいたら10年後にはいくらになってると思う?」


「え!? やだ数学嫌い! あたし超文系!」


「超文系でもこれくらいの計算できるでしょ。っていうか超文系って何。ほらやって。スマホの電卓使っていいから」


「えーっと、1年で5~9万円増えるってことは10年で……50万~90万円! てことは100万円は10年後には150万~190万円になる! なーんだ簡単じゃん! ってかめっちゃ増えるね! 何もしてないのに!」


「……これが、違うんだな」


「え、やっぱりこんな都合よく儲からない……?」


「答えはね……100万円は10年後には 162万8,895円~236万7,364円 になる」


「え!? 増えすぎじゃね!? しかも細かっ!」


「これが『複利』の力よ。あんたの計算方法は単利」


「なんでなんでなんで!? どういう計算?」


「最初の1年目は同じなのよ。100万円に5~9%の利子がついて105万円~109万円になるってのはね」


「うむ」


「でも2年目からが違うの。2年目は105万円~109万円に5~9%の利子がつくの。すると2年目は110万2,500円~118万8,100円になってるわけね」


「あ! あたしの計算だと2年目は110万円~118万円だから2,500円~8,100円多い!」


「そそ。で、3年目はこの110万2,500円~118万8,100円に5~9%の利子がつくから単利での計算とはどんどん離れていって、10年後には単利だと150万~190万円だけど、複利だと162万8,895円~236万7,364円になってるってわけ」


「すごい! 複利の方が12万8,895円~46万7,364円も多く儲かってる!」


「そこは計算はえーな。でもこれでわかったでしょ? 長く持てば長く持つほど増える金額も膨らんでいくから短期や中期で売っちゃうのは勿体ないってことが」


「わかりました! 欲しがりません! 売るまでは!」


「いい子。複利は味方にしないとね。ちなみにこの複利を逆に敵に回すのが借金ね。借金の返済がなかなか終わらないのは複利で貸されてるからなの。投資をしてればカウカウファイナンス側に居られるけど、借金をすると債務者側になっちゃうイメージ」


「えーこわ! 絶対借金しないようにしよ! ウシジマくんになろ!」


「で、話し戻すけど、同じものを積立で買うのが何でいいかっていうとね、ドルコスト平均法によって平均購入単価を抑えられるの」


「ど、どるこすと……?」


「投資信託も分散投資してるとはいえ価格は毎日上下するのね。だから最初で一気に買うと高い時に買っちゃってたって可能性あるわけ。そこで投資金額を定期的に一定額分けて買うことで、価格が低いときには購入量(口数)が多く、価格が高いときには購入量(口数)が少なくなって、平均購入単価を抑えることができる投資法をドルコスト平均法って云うの」


「んー、よくわかんないけど、一気にたくさん買うのは危険! ってことね!」


「そそ。投資する会社を分散させるのと同じで、買う時期も分散させるとより危険を回避できるのよ。分散方法も毎日か毎月かだけど、毎月でも十分分散になるから毎月でいいと思うよ」


「ふむ、でも毎月も買えるかなー。その月のバイト代にもよるし……」


「じゃあまずは試しにスポットで低額購入してみれば? それでしばらく様子見て、『これくらいなら毎月でも買えそう』って思ったら積立にしてみれば?」


「そうする! っていうか投資って買って売って終わり! を繰り返すものだと思ってたけど、同じものをずっと買い続けるものなんだねー」


「そうだね。そういう勘違いをしてる人がなかなか投資を始められなかったり、いざ始めても失敗しちゃったりするんだよね」


「なるほどー。てかさ、17歳でこれ知れたあたし、ヤバない?」


「ヤバいね。たいていの人がおじさんやおばさんになってやっと始めるか始めないかくらいだから超先取ってる。みんなが始めた頃にはあんた既に毎月チャリンチャリンよ」


「うふぉー! 漲るぅー!」


「まぁ私はその上いくけど」


「うふぉー! 遮るぅー!」


「ま、その間もちゃんと勉強は続けてね。未来のことは誰にもわからないから。じゃ、スポットで全世界株かってみようか」


「ほーい。スポット購入をポチっとな! えーっと、ファンド名? と運用会社? とか書いてある空欄が出てきた」


「そうね。そこのファンド名のところに『全世界株』って入れて検索してみて」


「ほい! 全世界株……っと。お、たくさん出てきた。いーまくなんとかもたくさん出てきたけど、さっきのMIKIMOTO的なやつどれ?」


「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)だね」


「えっと、これか! 何か他にもeMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)とかいうのもある。ちょ、日本ハブられてんだけど超ウケる」


「日本は別で投資してるからここからは外したいとかそういう理由で入ってない商品もあるんだよね。あと日本はあんまり今後の成長が見えないしね」


「マジかよ日本頑張れよー。でもあたしは日本ハブったりとかそういうイジメは許せない派の人だからオールカントリーで! ポチっとな!」


「どんな理由。まぁでもオルカンの方が手数料は安いしね。初心者はそっちでいいと思う」


「オルカンって略し方かわいい! お、出た出た! えーっとなになに? 基準価格16,726円……たっか! 高すぎ! 買えるかこんなの!」


「いや、それは売ってる値段じゃなくて基準価格だから」


「どゆこと?」


「投資信託での株価、みたいな。100円から買えるから安心して」


「100円!? そんな安いの? お菓子じゃん!」


「お菓子ではないけどな。個別株とかだとこんな値段で買えないからね。さっき出てたトヨタの株とか最低でも20万くらいかかるし」


「やば。無理無理そんなの。え、投資信託はどんくらい買うのがいいの?」


「そりゃたくさん買った方がその分利益も多いし、複利もたくさん効くから有利ではあるけど、さっき言ったように一気に買うと高い時に買っちゃうかもだから少しづつね」


「ほい! じゃあとりあえず奮発して10,000円! でどうかな?」


「いいんじゃない? とりあえずどんなもんかそれで見てみなよ」


「はーい。って待って! これさ、マイナスになりまくって10,000円以上マイナスになって後から多額の請求されるとかないの……? ほら、エロサイト見てたら請求画面出てくるみたいにさ……」


「あんたそんな男子中学生みたいな経験あんの? ないない。どんなに減ってもマイナス10,000円以上にはならないから。ってかそもそもそんな値動きの仕方しないし」


「よかった……じゃあ買います! えーっと、買付金額のところに1,000って入れればいいの?」


「そそ。次のポイント利用は楽天ポイント持ってたらそのポイントで投資できるってやつね」


「え、それってお金なくてもポイントあれば投資できるってこと?」


「うん。そこも楽天証券の利点ね」


「へー。でもポイントないからこれは『使わない』を選択して、次の分配金コースは?」


「それは迷わず『再投資』で。『受取型』だと定期的にお金は入るけど、複利にならないから」


「え!? 受け取れんの!? ちょっとこっちのがいいかも……」


「別にいいけど、長期的に見たら損するよ。まあ元本10,000円じゃどっちもどっちだけど」


「いや、さっき聞いた複利はすごかったから再投資で! 次の口座区分は?」


「それこそ迷わず『ジュニアNISA口座』。これを選べば20%の税金を免除できるってわけ」


「ここで出てきたNISA! 20歳になったら『つみたてNISA』にするんだよね!」


「おお、よく覚えてんじゃん。もしNISA上限額までいってもっと買いたくなったら『特定口座』を選んでね。『一般口座』だと確定申告しに行かなくちゃいけなくなるけど、『特定口座』ならそれを自動でやってくれるから」


「あー、何か面倒くさいでお馴染みの確定申告! 推しがTwitterでたまに愚痴ってる!」


「アイドルとかの自営業者は毎年確定申告あるからね」


「じゃあこれでOKかな? 確認ボタン、ポチっとな!」


「入力内容確認して、口座開設の時設定した取引パスワード入れれば購入完了ね。つーかさっきから気になってたけどその『ポチっとな』って何?」


「知らん。お母さんがボタン押す時にいつも言ってるからうつった」


「へー。うちらでいう『めめたー』みたいなもんか」


「じゃあこれで、買います! 注文ボタン、ポチっと……わ、緊張する。美咲! 一緒に言お。そしたら押す」


「え? ああ、じゃあせーの……」


「「ポチっとな!」」


「買えたー! マジで投資家デビューしちった!」


「おめでとう。投資信託は1日に1回前日の損益結果が出るからチェックしたければ朝とかに見ればいいと思うけど、積立とか始めたらもう放っておいていいから。逆に見ちゃダメ」


「見ちゃダメってどゆこと?」


「見た時減ってたら凹むじゃん。そしたらちょっとでもプラスに時に売りたいって思っちゃうじゃん。だからダメ。一時的にマイナスでも長期でやればプラスになるから」


「あたしはそうならないよ。ちゃんと教えてもらったし」


「そう? じゃあそろそろ私行くわ。葵どうする?」


「え、一緒に帰ろうよ」


「あ、いやごめん。彼氏……」


「うーわ、この後デートかよ早くフラれろ」


「ひど。今日結構いいこと教えたよ私」


「ごめんごめんここは奢るから」


「マジ? お金ないのに大丈夫?」


「まぁよ。これからお金持ちになる予定だからさ」


「だからその顔やめろムカつく」


★今日のまとめ

・複利の効果を利用するために短期、中期では売らない(借金はこれを喰らう側になってしまうのでやめよう!)

・ドルコスト平均法の効果を利用してリスクを分散しよう

・投資信託は100円から買える(個別株は高いので手を出しづらい!)

・注文の際は『再投資』『ジュニアNISA口座』を選ぼう(20歳以上の人は『つみたてNISA口座』)

・投資信託は1日1回損益が確定する(でもいちいちチェックしなくていい!)

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女子高生、投資で稼ぐ 霜月トイチ @Nov_11th

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