最終話 ハムスターとドラゴンとコタツ
「
湯船に浸かりながら、
「出ましょうかね。二人と話せて楽しかった。ありがとうシリアちゃん、ランちゃん」
風呂から上がって、寝床の準備をする。
幽霊であっても、多鶴子さんの寝る場所は
「明日の朝には、いなくなっていると思うわ。でも心配しないでねー」
多鶴子さんが、縁起でもないことを言う。
電気を消すと、多鶴子さんは本当にいなくなっていた。
「あたしらより、イキイキしている人だったな」
「とんでもない人だった」
ランが、わたしの布団に入ってくる。
「あのさ、今日は一緒に寝ようぜ」
「なんだよ、子どもかよ?」
こちとら、風呂上がりで少々熱い。
布団の中で、過剰に熱がこもる。
「人恋しくなったっていうか、ああいうの見ちゃうとさ」
「お前の場合は、人肌が恋しいんじゃないかって、こっちは思うぞ」
「そうとも言うな。ただ、生きている奴が側にいるって実感がほしい」
「……しょうがねえなぁ」
スペースを空けてやると、ランがさらに奥へと潜り込んできた。
「シリア。お前さ、絶対勝手にいなくなるなよ」
「行かないよ。お前は自由に生きていいぞ」
「そこは、『お前もな』だろ?」
布団の中で、二人で笑い合う。
結局、何事もなく朝を迎えた。
だが、コタツに異変が。
「あれ、多鶴子さん!?」
「まだいたのか!?」
なんと、多鶴子さんがまだいたのである。
「なんでかしら? きっと、まだお迎えって時期じゃないみたい」
多鶴子さん自身も、困惑していた。
ただ、大将やわたしたちが接客中、他のお客さんからは見えていないようである。
気配はなんとなく、感じ取っているようだが。
「店が以前より神々しくなった」と、客の一人が言っていた。
「地縛霊から、コタツの土地神にレベルアップしたのかもね。ただ、おうち以外では身動き取れないけれど」
「コタツの土地神って、すげえパワーワードだな」
まあとにかく、これで大将ともずっとコンタクトが取れることになる。
何がよかったって、水炊き以外の料理も並ぶようになったことだろうか。
「雪青くん、もっとお料理教えるからねー」
「……ああ。頼む」
大将も、心なしかうれしそう。
「わーうまそ。いただきまーす」
ランが、から揚げにかぶりついた。
「いただきます」
わたしも、みそ汁をすする。
元魔法少女のマスコットだった、ハムスター亜人のわたし。
元勇者のお供だった、ドラゴン亜人のラン。
幽霊から、コタツの土地神へと変化した、多鶴子さん。
で、大将の雪青さん。
この四人は、今日もこたつを囲んで尊くダベっている。
(完)
ドラゴン娘とハムスター娘が、コタツで尊くダベる 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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