≪第十一話≫
クーは入院してたのがわからないぐらい元気だった。
家に入ってみるとクーとハナは相性が悪いらしく、お互いほとんど話さなかった。
退院して数日は様子見で、草汰さんは私達2匹を外に出さなかった。
そして大丈夫そうなのを確認して、2匹で外に出してもらった。
いつものように草汰さんも一緒だ。
「外の空気はどうだい?」と私。
「ああ。ここはいい。花の良いにおいがする…。」とクー。
2匹でのんびり過ごした。
数日が経ち、いつもの様に2匹、外で遊んでいた。
主は『もう見てないでいいな。』と思ったのか一緒に出なかった。
そしてガリガリと玄関の戸を引っかく音を主が聴いて、入れてもらえるようになった。
そしてとある日、外でクーが「外、カラスが多いな。この家。」と言った。
「そうだね。そういえば…。」と私。
「なんだ?」
「ついこの間、主はカラスが嫌いだと言っていたな。」
「…そうか…。よし!」
「うん?どうしたの?」
「俺がカラスを退治する!」とクー。
「え?無理でしょ。」
「まあ見てろよ。リハビリがてらだ。」と颯爽とカラスに近づいていった。
だが逃げられた。
「くそ!昔の俺ならわけなかったのに…。」と悔しそうなクー。
それからクーとカラスの戦いが始まった。
そして2日後、見事カラスをしとめた。
「どうだい!次もやっつけてやる!」
クーの勝利だった。
私は改めてクーのすごさを知ったのだった。
次の日、カラスは一羽もいなくなっていた。
「恐れをなして逃げたか…。」とクーは悔しそうだった。
主はというと、急にいなくなったカラスを不思議に思いつつ喜んでいた。
次の日、外へ散歩していつものように家の中に入れてもらおうと玄関の戸をガリガリしていたが、一向に入れてくれる気配がない。
そして玄関の横にはいつも食べているエサが置いてある。
私は思った。もう主は、私たちが外で生活してても問題無いと判断した、と。
そして、もうそろそろ旅立つ時が来たな、と。
夏がもう始まろうとしていた…。
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