≪第九話≫
『着いたぞー。ここが私の家だよ。』
そういえば家で飼われるのは生まれた時以来だった。
そこは他のネコのにおいがした。
こわごわ入っていくと灰色と黒のしましまのネコがいた。
「おじゃまします。」と私。
「じゃますんな。」とそいつ。
険悪な雰囲気を察して、草汰さんはそいつをなでた。
『しばらくの間、家で飼うからな。仲良くするんだぞ。』そのネコに言った。
私は『冗談じゃない。』と最初は思った。
「俺はハナ。お前は?」と自らしゃべってきた。
「僕はチャゲ。」
「ま、仕方ないな。主人の決めた事だ。ただし俺の言う事はちゃんと聞けよ。」と少しすね気味だった。
そんな事を言われ、私はなるべくおとなしくしていようと思った。
ハナは自分の事を血統書付きのアメリカン・ショートヘアーだと自慢していた。
私はただ『すごいなー。良い毛並みだねー。』と少しうらやましがった。
そんなハナの雰囲気が私は好きではなく、自分からはしゃべらないでいた。
次の日の夜、面白い事があった。
とても美味しい猫の缶詰を食べた後、少ししてハナが主にどっかに連れて行かれた。
そして「やめてー!出してくれー!!」と叫ぶハナの声。
何事かと私は思った。
次にハナを見たとき、私は大爆笑した。
ハナは水に濡れ、ペッチャリした体になっていた。
『次は君だね。』と主。
私はハナが戻ってきた方向に連れてかれた。
私はとってもとっても恐かった。
少し暴れると私を主は『水に濡れるだけだから。』となだめた。
それを聞いて、私は少し安心した。
シャワーは意外と気持ちよかった。
何であんなにもハナが嫌がるのか私はわからなかった。
シャンプーで洗われる時、気持ち良さにゴロゴロ言った。
主はそんなシャンプー好きの私を『変わったネコだね。』と言った。
そしてバスタオルで拭かれドライヤーで乾かされ、ホクホクになった。
ハナは「すごいなお前。全然泣かなかったな。」とびっくりしていた。
そんな所からか、ハナは私を見直すようになった。
初日、来た当初は『俺が食べ終わるまで食べるな!』と、別の食器なのにそんな事を言っていたハナだが、数日後には私と同じ目線でしゃべったり行動するようになっていた。
ある時、器用に2本足で立って外を見ているハナを見つけた。
私は「何しているの?」と聞いた。
ハナは「外を見ている。」と言った。
私は「外の何を見ているの?」と言う。
「動いているもの全てさ。」
私は何が気になるのか解らなかった。
「外の世界ってどんな所?」とハナ。
私は知っている限りの外の話を教えてあげた。
「へー。自分が知らない事ばかりだ。」
話し合ってたら夜になっていた。
「明日、晴れてたら一緒に外へ出てみようよ。」と私。
「え?恐いから嫌だな。」
「楽しいとこだよ。外。」と、半ば強引に一緒に外へ出る約束をした。
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