≪第八話≫

ある日、私はだいぶお腹が空いていた。

そんな中、車道の真ん中に鳥が止まっていた。

そしてクーの言いつけを守らず、車道に飛び出した時である。

『あぶない!』と言う声と『キー!』というブレーキの音。

そして『ドン!』という私を突き飛ばす衝撃。

それは一瞬の事だった。

最初は何が起こったかわからなかった。

自分は…どこも痛くなかった。

周りを見直してみる。

車は…いなくなっていた。

「クーは?」…近くの歩道で倒れていた。

「クー!」

私は急いで駆け寄った。

「クー!大丈夫?痛い?痛い?」

「体は…大丈夫だ。」と、クー。

ゆっくり起き上がろうとする。

しかし起き上がれずまた倒れるクー。

「足をやられたようだ。」とクー。

「ごめん!僕のせいだ!」


あの時、鳥が気になって音が聞こえなくなってた私と走ってくる車を見て、飛び出して私をかばいはねられたらしかった…。


「どうしよう。どうしよう。」おろおろする私。

その時である。一台の車が止まった。

そして一人の男性が走ってやってきた。

『大丈夫?ひかれたのかな?』

私はびっくりして近くの陰に隠れた。

そしてクーの状態を一生懸命診ていることが喋っていることから解り、そっと出て行った。

『おや、誰だい?』

私は気が動転していてその人を威嚇した。

『何を怒っているんだい?大丈夫、大丈夫だよ。』と、私にそっと手を差し伸べる。

私は悪い人じゃないと感じ、クーに近づき傷口をなめた。

『この子とお友達なのかな?』と言いつつ、クーの怪我の具合を見ている。

『これは病院に連れてかないとだめだな。』とその人。

クーを抱いて車に乗ろうとする。

その後を私がついていく。

それを見たその人は『君も行くかい?』と言い、後部座席を開いた。

すかさず私は乗り込む。

『まるで僕の言葉が解っているようだね。っと、急がないと手遅れになる。』

そして南西の方に走り出した。


その人は急いだせいもあって、あっという間に町に着いた。

そして一軒の病院に入った。

どうやら動物の病院みたいだった。

そこには怪我をしたたくさんの動物がいた。

『先生、このネコなんですが診てやってください。』と、先生と呼ばれた人にクーを託す。

『お?草汰(そうた)さん。どれどれ。うーん、足を痛がってるな。このネコどうしたんですか?』と先生。

『どうやら事故みたいです。車で通りがかったら倒れてました。』

『ほうほう。…一応レントゲン撮った方が良いな。』

『お願いします。』

先生とその草汰と呼ばれた人は知り合いみたいだった。

診察が終わるまで部屋の一角に草汰さんは座り、そのひざの上に私が乗ってしばらく待った。

草汰さんは私に、先生は一人でこの病院の動物全部診ていると言った。

この病院にはたまに自分の家のネコを診てもらった事があったと私に言った。


『お待たせしました。』と先生が来た。

『どうでしたか?』

『左後ろ足が骨折してました。他は特に問題ないですね。』

『よかったー。おい。助かるってよ!』と私に向かって言った。

私も嬉しさで鳴いた。


クーは退院するまで2週間は入院しないとだめらしかった。

そしてその間、私は草汰さんに飼われる事になった。

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