≪第七話≫
翌朝、マメの吠える声で目が覚めた。
クーもその声で起きたみたいだった。
寝ぼけまなこで2匹して声の方に行ってみるとマメの飼い主がいた。
どうやら散歩の時間らしい。
マメは「おはよう。良く眠れたかい?」と声をかけてきた。
「ああ。おかげさまで。」と、眠そうな私。
「朝食は僕のエサを食べると良いよ。」
「え?いいのかい?」
「ああ。どうせいつも余っているし。」
『変わった友達だね。』とマメとしゃべっていると飼い主が言った。
「僕達の事、変わった友達って言ってるよ。」と、私がマメに話した。
「うん?君は人の言葉が解るのかい?」とマメ。
「クーと同じ事言うね。うん、わかる。君はわからないのかい?」
「わからないんだ。チャゲがとてもうらやましいよ。」
「え?なぜだい?」
「言葉がわかればもっとご主人が喜んでくれるのに…。」
「あ、そうか。」
私たちのやり取りを主が不思議そうにじっと見ている。
じゃれあっていると、仲が良いのを察して首輪につながっている綱を放してくれた。
それから3匹、かけっこなんかして遊んだ。
楽しい時ほど過ぎるのは早い。
あっという間に1ヶ月が過ぎた。
私たち3匹は毎日楽しく過ごしていた。
そんなある日である。
いつものようにマメの声で目が覚め、マメの所へ行った。
すると、いつも優しい主の元気がなかった。
マメも心配そうにしている。
主はマメに『もうすぐ仕事の関係で引っ越すんだ。』とつぶやいた。
マメは私に「何て言ってるの?」と聞いた。
私は主が言った事をそのまま伝えた。
「そうか。寂しいな。せっかく仲良くなったのに…。」とマメ。
「…いつ引っ越すって言っている?」
「…一週間後って言ってるよ。」
「そうか…。」
そんな事があった日の夜、いつもの寝場所でクーと話をしていた。
「もうそろそろまた旅に出るかい?」と私。
「ああ、そうだな。」とクー。
「僕達がいればマメの主が引っ越す事を余計悲しがるよ。」
「そうだな。うん。…で、いつここを出る?」
「…2日後…でいいかい?」
「わかった。」
と旅立つ事を決心した。
次の日、マメに翌日出発する事を伝えた。
マメは何より主の事を思っていたので『悲しいけど…。』と賛同してくれた。
その日の夜、マメと3匹で話をした。
「ネコの楽園ってそもそもなんだろう?」と私。
「そりゃー楽園って言うぐらいだからネコがいっぱいいて皆仲良しで…。」とマメ。
「そんな世界が本当にあるのかな?」と私。
「そんなもん考えたって意味あるかよ。自分の目で確かめるまでさ。」とクー。
「それもそうだな。でももし嘘だったら…。」と私。
「おいおい、母親を疑っているのか?」とクー。
「いや、疑ってはいないけど…。」
「じゃあ信じろよ。」
「そうだな。」
と、その日は明け方まで3匹で話をした。
朝、その日は昼頃になって起きた。
マメの所に行くとマメも眠くて散歩しなかったらしい。
どうりで朝吠える声で自分が目覚めなかったわけだ。
昼食込みの朝食で、その後3匹で昼寝をした。
そして夕方、『もうそろそろ…』とクーに話した。
クーは『わかった。』と言った。
「マメ、もうそろそろ行くよ。長い間ありがとう。」
「もう行っちゃうのか。仕方ないよな。」
「出来ればいつまでも居たかったけど…それも無理な話みたいだね。」
「…ああ。」
2匹泣き崩れた。
「おい、もうそろそろ行くぞ。」とクー。
「そう…だな。それじゃ、バイバイ。」
「君達が見えなくなるまでないているよ。お見送りだ。」
いつまでも…いつまでも、マメの遠吠えは続いていたのだった。
「聴こえなくなったね。」
「ああ。」
なんとなく寂しさが残る中、旅はまた始まった。
私は車道が気に入り、今回はその道沿いに南西方向に歩いていた。
一週間ぐらい経っただろうか、道の斜坑は緩やかな下り坂だ
そんな中での出来事である。
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