≪第四話≫

次の日。

『モー。モー!』

「…うるさいなー。」と私。

「むー。」と、クーは寝ている。

「朝か…。」


クーは寝ているので、暇つぶしに牛舎の中を散歩してみる。

「あ、おじいさんだ。あれ?おばあさんもいるぞ。」

『ニャー』

『あ、おはようネコさん。』おばあさんが言った。

『このネコだよ、昨日エサをあげたネコは。』とおじいさん。

『そうかいそうかい。このネコさんにも名前付けてあげないとね。』

『後で考えてあげな。』とおじいさんは言った。

チャゲはどんな名前が付くのか楽しみだった。


寝床にかえるとクーが起きていた。

「おはよう。」私が言った。

「オッス。」クーは言った。

それから2匹で牛乳かけご飯を食べて、そのあとで話をしながら周りを探索した。

聞いた話によるとクーは1年ぐらい前、元居た場所を他の猫に追い出され、今の場所まで旅をしてきたという。

ここは他のネコがいなく、最初はエサもなかったという。

そして3日ぐらい経ち、おじいさんに見つけられた。

怒られるかと思った。が、おじいさんは牛乳かけご飯を見ず知らずのクーに与えたという。

私はそれを聞いて思った。

たぶんクーが来る前に昔、ネコを飼っていたんだろうと。

だから私もクーも迷いもせず温かく迎えてくれたんだなと。


あと散歩をしながらクーから得られた情報は、この家は町までものすごく遠いという事だ。

人が作った道を北東へ3日間歩いたところに小さな町があり、そこからクーは来たと言う。

ほとんど反対の方向の南への情報は結局得られなかった。


その家での一番面白かったのが、そこの小さな外の飼い犬にちょっかいをだす事だった。

鎖でつながれているので近くに言っても吠えるだけだ。

2匹はどちらがどこまで近づけられるかを競争した。

これはクーの勝ちで、さすが育てられている家だなあと私は思った。


それから数日間経った。

だいぶ体の調子も良くなった。

おばあさんからは『サスケ』という名前をいただいた。

かっこよさそうで自分では気に入っていた。


それから3ヶ月ぐらい経ったある日、チャゲはもうそろそろ旅立とうと思っていた。

目標は太陽の方角ただ一つ。

そう思った矢先、事件があった。

いつものようにエサを食べに行くといつもあるエサがない。

牛乳を搾る人もいつもと違う人。

私はおじいさんが住んでいる家に行き鳴いた。

そうするとおじいさんが出て来て、その時初めて家の中に入れてくれた。

家の中ではおばあさんがベットで横になっていた。

『あれ?サスケじゃないかい。サスケ。』とおばあさん。

その後、家の中で悲しい事を聞いた。

おばあさんが病気で働ける状態じゃないのが一つ。

酪農そのものを止めてしまおうと考えているのが一つ。

以上、要点を言えば今の2つだった。

全ての事は二人の会話を聞いて解った事だ。

そしてどうしても2人には気がかりな事があった。

今いる2匹のネコの事だ。

少ししたら引っ越すので、エサをあげられなくなるとの事だった。

私は家から出たあと、外で待っていたクーにその事を伝えた。


「そうか。そんな事になっていたのか。」

「僕はこれ以上2人に心配かけたくないから南へ行くよ。クーはどうするんだい?」と私。

「お願いだ!俺も連れてってくれ!」

「いいけど厳しい旅になると思うぞ。」

「それは解っている。でも一匹でここにいても迷惑かけるだけだ。それならいっそのこと…。」

「そうか。わかった!一緒に行こう!」

「ありがとう!これからもよろしくな。」

2匹はその日の夜になってから旅に出たのだった。

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