≪第三話≫

辿り着いた家は少しくさいにおいがした。

くさいにおいの方に行くと、家より大きな建物があった。

そこには白黒の生き物がいて、そこからにおいがするみたいだった。

その建物につながっている小屋から懐かしい甘い匂いがした。

行ってみると、地面の上に食器があり、その中にはご飯に牛乳がかけられた食べ物があった。

私は夢中になって食べた。

少し食べ過ぎたようだ。

いっぱい食べて眠くなった。

なのでその建物の中に寝床を探して眠りについた。



『クンクン』

…なんだろう…

『クンクン』

…誰かが自分の匂いを嗅ぐ音で目が覚めた。

「誰だ?」と私。

「それは俺のセリフだ。」と、その黒いネコは言った。

「僕は北の方から歩いてきて疲れているんだ。しばらくここで休ませてほしいんだ。」私は言った。

「ああ、いいよ。」と、そいつは意外にあっさりと了承した。

「それにしても珍しい毛の色してるな。」とそいつ。

「うん?そうかい?」

「ああ。見たことないね。俺に似ているけど違う。」

「ふあ~あ。悪い。もう少し寝かせてもらうよ。」

「わかった。起きたら声をかけておくれ。」

「うん。じゃあおやすみ。」とまた寝たのだった。



『…チャゲ、…チャゲ!』

「うん?」

自分を呼んでいるケンの声の夢で目が覚めた。

「…なんだ夢か…。そうか。一軒の家に辿り着いていっぱい食べて寝たんだったなー。あの黒ネコは…と、いた。」

少し離れたところでその黒ネコは寝ていた。

「もしもーし。起きてくれー。」

「…うん?あー、お前か。起きたんだな。」

外はもう真っ暗だった。

その黒ネコは暗闇で見ずらい。

「俺は黒猫のクー。君の名は?」

「僕はチャゲ。そう呼んでくれ。」

「チャゲか。良い名だな。」

「そうか?」

「まあいい。で、これからお前はどうするんだ?」と黒ネコ。

「南に向かって歩こうと思っている。」

「南?どうしてだい?」

チャゲはクーにここまで来た経緯を話した。

クーはその話に聞き入っていた。

「…楽園か…。面白そうな話だな。」

「でしょ?」

「でもそんなガリガリの体じゃあ無理だ。しばらくここでのんびりしていきな。」

「え?でも…。」

「い・い・か・ら!言うとおりにしておけ!」

「ああ。わかった。」チャゲは言った。

「それにしてもお腹が減ったな。」とクー。

「あー、僕も。」

「お前はさっきすっげ食っただろ?」

「なんで知ってるのさ?」

「おいらのエサがすっごく減っていたからね。」

「ああ、そうか。君のだったのか。すまない。」

「いやいいよ。…にしてもまだ起きてるかな?」

「?」

「エサくれる人だよ。君も来いよ、腹減ってるんだろう?2匹分くれるかもしれないぜ。」

「どんな人なの?」

「良い人だよ。とっても。一生ここに居たいぐらいさ。」

「わかった。行く。」


牛舎から少し歩くとその人の住む家があった。

『ニャー』と鳴きだすクー。

「お前も鳴けよ。」

「わかった。」

『ニャーニャー。』と2匹して鳴いた。

すると突然『ガラガラ』と玄関の戸が開きおじいさんが出てきた。

『クーか。…おや?見慣れないネコだね。』

「見慣れないネコ?僕の事だよね。」とチャゲがクーに話す。

「お前!人間の言葉が解るのか?!」

「うん。なんとなくね。」

「すげー!」

「いや、なんとなくだから。」と、それが普通だと思っていた。

それからおじいさんにネコ用の缶詰をもらった。

私は大満足だった。

そして2匹、また牛舎で寝るのだった。

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