ぼくとナタルのクリスマス

 ご飯を食べたあと、ぼくはナタルと一緒にベッドに入って、おやすみのお祈りをした。ナタルは外の様子が気になって、ずっとぬいぐるみをいじっていた。

「ねぇ、お兄ちゃん。さっきから、たのしそうな声が聞こえてくるよ。みんなみんな、クリスマスのおいわいをしてるんだ」

 くたくたになったくまをにぎって、ナタルは悲しそうな顔をした。くまの茶色い手をにぎって、口をへの字に曲げている。

「たのしい歌をうたって、おいしいごはんをたべて……。ぼくだって、みんなとおいわいしたいのに……」

 ぼくは優しい気持ちになって、ぎゅっとナタルを抱きしめた。ナタルが悲しい夢を見ないように、よしよしと頭をなでてあげる。

「ナタル、いいお話を聞かせてあげる。まずはしっかり目を閉じて、不思議な森を思い浮かべて」

「ふしぎな森……?」

「うん。小鳥が楽しい歌を歌いながら、おいしい木の実を食べている森だよ。うろの中には茶色い小りす、草の中にはかわいいうさぎ。そして、まっすぐのびた道の先には、大きなトンネルがあるんだ」

 ナタルはぼくの胸に顔を当てて、ぎゅっとしっかり目を閉じた。ぼくがつくったクリスマスのお話を、わくわくしながら聞いている。

「トンネルの中に入ると、キラキラのお星さまが、遠くの遠くまで続いてる。だからね、トンネルはちょっと暗いけど、ぜんぜんこわい気持ちにならないんだよ。ぼくもナタルもスキップをしながら、トンネルの中をどんどん歩く」

「……トンネルの先には、なにがあるの?」

「トンネルを抜けるとね、大きな大きな木が立ってるんだ。きれいな飾りがいっぱいついた、大きな大きな木。その下にはお母さんが立っていて、ぼくとナタルのためにプレゼントを用意しているんだ。……見て、ナタル。ナタルの大好きな、大きなくまのぬいぐるみがあるよ」

 ナタルはぼくの話を聞きながら、むにゃむにゃと口を動かしている。いろいろ考えているうちに、だんだん眠くなってきたみたいだ。

「くまのぬいぐるみ……。新しい、ぼくのおともだち……」

「そうだよ。ナタルの新しい友だち。ふわふわもこもこの、かわいいかわいいお友だち……」

「ぼくの、おともだち……。クリスマスの、おともだち……」

 外のお祝いもだんだんと遠ざかって、ぼくたちは二人だけのクリスマスを迎える。プレゼントなんかなくてもいい。だって神さまはぼくたちに、楽しい夢を見せてくれるんだから。

「ナタルはくまのぬいぐるみをもらって、ぼくはふわふわのミトンをもらう。そしたら大きなテーブルで、みんなと一緒にごはんを食べるんだ。おいしいおいしい、クリスマスのごちそうを……」

 ……ナタルはすっかり眠くなって、すぅすぅと寝息を立て始めた。ぼくはそっと顔を近づけて、ナタルのほっぺたに優しくキスをした。

「おやすみ、ナタル。メリークリスマス」

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ぼくたちのメリークリスマス 中田もな @Nakata-Mona

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