ぼくとお母さんのクリスマス

 クリスマスの日になると、外はすっぽりと雪におおわれた。ぼくは窓のそばに立って、じっと通りをながめていた。

「ノエル、一体何をしているんだい? そんなところでぼうっとしてないで、早くこっちに来て手伝いな!」

 小さな黒パンを切りながら、お母さんはぼくに言う。弟のナタルは部屋のすみっこで、さっきからずっとをこねていた。

「お母さん! ぼくも教会にいって、クリスマスのおいわいしたい! おいしいごはんとあまいおかしを、おなかいっぱい食べたいの!」

「全く、あんたってやつは! いい加減、あたしを困らせるのは止めておくれ!」

 ナタルは鼻をぐずぐずさせながら、くまのぬいぐるみを抱きしめている。ナタルがあんまりにも涙をこぼすので、くまの頭もすっかり濡れていた。

「なんで、なんで!? なんでぼくたちは、クリスマスのおいわいができないの!?」

「ナタル! あんたは本当に、聞き分けの悪い子だね! そもそもクリスマスってのは、お祝いの日でも何でもないんだよ!」

 お母さんはナタルにいらいらしながら、乱暴にスープを盛りつけた。おいしいお肉の入ったスープじゃなくて、豆と葉っぱだけのスープ。

「よく見てみな、あのクリスマスってやつを! あんなの、町の連中がバカ騒ぎしているだけさ! 神様のためになんか、これっぽっちもなりゃしない!」

 ぼくはナタルをなぐさめて、お母さんの手伝いをした。三つのスープと三つのパン。いつもとまったく同じご飯だ。

「ほんの少し前までは、クリスマスの祝い事は違法だったじゃないか! あたしはね、あれが正解だったんじゃないかって、いっつもいっつも思ってるんだよ! あたしたちの宗派では、クリスマスは祝わないんだからね!」

 ぼくたちの通う教会は、友だちのユールたちが通うところとちょっと違う。「宗派」が違うから教会も違うんだって、お母さんは言っていた。

「さぁ、ナタル! これであんたも分かっただろう! うちは町の連中とは違って、堕落したクリスマスは祝わないってことがね!」

 ぼくにも、弟のナタルにも、お母さんの話は難しかった。だけど、クリスマスのお祝いをしないってことだけは、はっきりと分かった。だからぼくは、ナタルみたいにをこねないで、いい子にご飯を食べた。

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