川沿いのカフェ ―大輔―

 

 まだ肌寒いというのに、大輔は浩太に誘われて、あのカフェに来ていた。


 七年前、美弥に引きずって来られた店だ。


 いつも通り、二人で居ても、そうベラベラしゃべるわけでもない。


 浩太はカップを手に、ぼんやり川を見、大輔は膝の上で昨日纏めたレポートをめくっていた。


「結局、昨日何を調べに行ったわけ?」


 ようやく話しかけてきた浩太に、大輔は目を上げ、言ったじゃないか、と答える。


「いや。

 他にも調べてきたことがあるんじゃないの?


 例えば――


 0型の人間」


 大輔は膝の上のそれを閉じ、浩太を見た。


「それは予言か?」


「違うよ、推理。

 同じ川原で見つかった二つの事件の凶器。


 八巻の死以降現れなかった通り魔。

 何か関係あるんじゃないかなと思うでしょ、普通」


「だが、通り魔は昨日現れたんだろう?」


「あれ、通り魔かな?」


「え?」


「言ったでしょう?

 最初から美弥ちゃんを狙ってたみたいだったって」


「……美弥に何か狙われる理由があるとでも?」


「ま、今、彼女に本気で消えて欲しいと思ってんのは、あの寺の娘くらいだよね」

と浩太は笑う。


 美咲のことらしい。


「それか、やっぱり、通り魔はただの通り魔じゃなくて。

 最初から、これと思った人間を刺していたか」


「法則性がない」


「らしくないこと言うね。

 だから、普通の人間にはわからない法則性があるんでしょうよ。


 あれ? 三溝さんだよ」


 見ると、入り口からラグビー選手のような男が手を振っていた。





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