珈琲少女

新宮しんぐうキイ:

 お姉ちゃん、モヤさんがコーヒー淹れてくれたから戻ってきて!


新宮カナメ:

 わかったわかった、すぐ行くから。それにしてもモヤさん、こんな面白い人形どこから仕入れてくるんですか?


藤堂モヤ:

 それはワヤンといって、父が現地で見つけたインドネシアの伝統工芸品なの。さぁ、コーヒーが入ったからお茶にしましょう。


リズ・ハーフェルベルク・赤池:

 それ、ワヤン言うデスネ!昔、バリ島に旅行いったときに、それ使った人形劇を観マシタ。影絵、すごく幻想的で感動しマーシタ!


カナメ:

 ちょっと高いけど、この人形欲しくなっちゃった。ほら、アオイも突っ立ってないでこっち来て座って。


モヤ:

 ちゃんと自分の隣を開けてるなんて、カナメちゃんも可愛いわね。ふふふ。


カナメ:

 そ、そんなんじゃないです!こいつは…ただのクラスメイトで幼なじみで、腐れ縁というか何というか…


キイ:

 出た、お姉ちゃんのツンデレ芸…コーヒー冷めちゃうから早く飲むよ。


                  ◇


モヤ:

 インドネシアといえば、実はコーヒーの産地なの知ってる?


キイ:

 コーヒーはブラジルとか南米で採れるって学校で習ったけど、知らなかった!


リズ:

 ジャワコーヒーなら、日本でも有名デースネ。


カナメ:

 あ、それ聞いたことある。


モヤ:

 さすがリズちゃん、よく知ってるわね。ジャワコーヒーはカフェインが多くて、苦みが強いからミルクや砂糖がよく合うわ。


カナメ:

 キイはミルクと砂糖ないとコーヒー飲めないもんねー。


キイ:

 むー!キイだって、コーヒー牛乳以外のめるように頑張ったんだもん!


                  ◇


カナメ:

 コーヒー牛乳…懐かしい響きね。いま思えばあれはコーヒーというより、コーヒー風味の砂糖水だったような…


リズ:

 私の国にはああいう味のコーヒー無かったカラ、小学校転入したときすごく新鮮デーシタ!コーヒー牛乳、ココアみたいで大好きデース。


モヤ:

 変わり種のコーヒーといえば、アラビアコーヒーはシナモンとか香辛料を入れて味付けするそうよ。


キイ:

 それ美味しそう!


リズ:

 ママの友達に会いに中東行ったトキ、アラビアコーヒーとデーツご馳走してくれマシタ。独特の風味とデーツの甘さが合わさって、最高デーシタ!


カナメ:

 あんたのママって、たしか伯爵令嬢でお城住みじゃなかった…?知り合いって、まさか王族とかじゃないでしょうね…


リズ:

 一応、王位継承権ある言ってマーシタ。あのあたりは王子様、沢山いるみたいデースネ。


カナメ:

 くっ……石油王に、俺はなる!


キイ:

 はいはい、お姉ちゃんはその前に受験頑張ろうね。


                  ◇


カナメ:

 それにしても、モヤさんの雑貨屋は品揃えもさることながら、いつもコーヒーのいい香りがしててつい長居しちゃうのよね。


リズ:

 カナメに誘われて来てみて、私もすぐに気に入りマーシタ。いろんな国の伝統工芸品がエキゾチックな雰囲気で、モヤが淹れてくれるコーヒーも美味しくてゼーアグート、デス!


モヤ:

 ふふ、気に入ってもらえて嬉しいわ。うち本業は雑貨屋だけど、いちおうカフェも名乗ってるからね。最近は自家焙煎にも手を出してるから、そのうちオリジナルコーヒーをメニューに載せるわ。


キイ:

 モヤスペシャル、たのしみ!


モヤ:

 そうそう。香りといえば、コーヒーには人をリラックスさせるアロマ効果もあるって、最近どこかで読んだわ。


カナメ:

 たしかに、休日の朝にお父さんが淹れてくれるコーヒーの香り、すごく落ち着くかも。


キイ:

 お父さんが聞いたら嬉し死にそうな台詞だね。お姉ちゃんもいい加減反抗期じゃないんだから、家でももっと喋ろうよ。


カナメ:

 キイ、余計なこと言うな!


                  ◇


リズ:

 これまでペーパードリップとかコーヒーメーカーで淹れてたケド、日本のお洒落なカフェにあるガラスの道具、すごく素敵デース。


モヤ:

 フラスコとロートを使うのはサイフォン式よ。アルコールランプの炎で、コーヒーがポコポコ沸騰する音だけで美味しさ増し増しなのよねぇ。


カナメ:

 わかる!個人経営の小さなカフェで、サイフォンで淹れてるとこは大体こだわりがあって穴場なんですよね。


キイ:

 わたしはブラックがまだ飲めないから、お姉ちゃんアオイとカフェ巡り行ってくれば?


カナメ:

 ふん、その手があったか……じゃなくて!こいつはただのクラスメイトで幼なじみで…


モヤ:

 デートの時はぜひうちに寄ってちょうだいね。特別にサービスしてあげる、ふふ。


カナメ:

 だから違うってばー!


                  ◇


キイ:

 今日は楽しかった。モヤさん、美味しいコーヒーありがとう!


モヤ:

 キイちゃんみたいに可愛い子はいつでも歓迎よん。


リズ:

 モヤさん、本当にありがとうございマーシタ。また、カナメとアオイと来たいデース。


カナメ:

 モヤさんの店はコーヒーだけじゃなくて、雑貨も一級品なんだから。またよろしくお願いします、モヤさん。


モヤ:

 お得意様が一気に増えて嬉しいわぁ。それじゃ、みんな気を付けて帰ってね。

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日常にひそむヒロイン+=1 ユーリカ @eureka512

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