第13話 綻び

何度目のゴールデンウィークを

迎えようとしていた頃だったかな


何時ものようにメールで

今度のゴールデンウィークは

帰って来るの?と送る

今度は

友達が東京に来るから

東京案内するんだ

だから帰らないよと

ちょっぴり寂しい返事が届く

そっか、そうなんだ

友達と楽しんでね

私も友達と遊んで過ごすね

そうしてゴールデンウィークは

それぞれの場所で過ごすことになった


その時の彼は

東京の暮らしにも慣れて

多忙だけど充実した日々を過ごしてた

私は大学を卒業して

地元の小さな会社に勤める

新米社会人として

バタバタと落ち着かない日々

出勤の準備で

おはようのメールに

返事が返せなかったり

おやすみのメールには

おやすみの一言だけを送ったら

そのまま眠ってしまったり

自分のことに精一杯で

彼を気遣うことに

気持ちが回らなくなっていた


それでも

私は友達とショッピングをしたり

食事を楽しんだり

家族と共にゆっくり過ごしながら

ゴールデンウィークの日々は

過ぎていった


ゴールデンウィークも終わってから

しばらく経った頃に

私は友達から意外なことを聞く


あの人、ゴールデンウィークに

帰っていたよね?


えっ?


私、あの人を見たよ

あれっ?と思ったけど

間違いなく彼だったよ


嘘でしょ?

見間違いじゃないの?

だって彼は東京に友達が来たから

東京案内して過ごしたと言ってたもの


うーん、そうなの?

でも、間違えるはずは無いんだけどな

私、あの人の顔を知ってるからね


見間違いだよ、きっと

東京にいる人が

地元にいるはず無いじゃない


私は友達の声を遮りながら

心の糸が

すっと

綻び

留まり続けていた

掴めない不安が

胸に広がっていくのを感じていた





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