第12話 離れ離れ

彼が東京に発った翌日から

二人は離れ離れの暮らしが始まる


それからの彼はきっと

見知らぬ土地の

新しい職場

人間関係

そして独り暮らしの日々

きっと必死に

毎日を過ごして

帰りついた時には

くたくたに疲れていたでしょう

それでも

毎日のおはようと

夜のおやすみのメールは

欠かさずに届いていた

休日には電話で

声を聞いて

日常の出来事を話したり

彼は彼なりに

一生懸命絆を

繋いでくれていたのだった


私は

朝のおはように励まされて

夜のおやすみに

彼の1日が今日も無事に終わったと

安心しては眠りに就くのが

1日の習慣のようになっていた

だから

朝のおはようのメールが

遅いときは

寝坊しているのではと心配で

電話を掛けてしまったり

夜のおやすみのメールが

届かないときは

何かあったのではと不安になり

不必要なメールを送ってしまったり

今思えば

離れていることの不安を

私はいつも抱いていたのかも知れない

傍にいて欲しい時に

傍にいない彼

会いたい時に会えない彼

そんな負の想いだけが

胸の中でどんどん広がって、、


彼は約束通り

長期休暇の時は帰ってきて

時間の許せる限り

傍にいてくれた

絶えず笑顔で過ごせるように

そんな気遣いも見せてくれた

私は

気づかなかったんだ

彼の胸の奥

私を見つめていた瞳に

小さな影が見えていたことを


離れ離れのそんな日も

1年を過ぎようとしていた

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