選べないよ 僕ってこんな奴だから
@amadeusion
第1話 選べないよ 僕ってこんな奴だから
とある国に留学しているボクは、とても親切な5人家族の家でホームステイをさせてもらっている。
3ヶ月ほど経ったある日、大きな段ボールが家に届いた。差出人を確認するとボクの母からだっだ。段ボールを開けると中には大量のお菓子やインスタント食品がいっぱい入っている。こっちでは手に入らない品もあり嬉しいと思うと同時に気になることもある。ボクはこの家での暮らしにとても満足している。ホストファザーとホストマザーが振る舞ってくれる料理はとても美味しいし、ボクと同い年のホストブラザーは一緒によくゲームをしてくれる、ボクより6、7歳下のホストシスター2人は暇さえあればボクに話かけてくれたり、日本のことについて色々と質問してきたりと遊んでくれる人懐っこい2人だ。つまりボクはホームシックになっていないし、1ヶ月前に家族にあてた手紙にも早く帰りたい、日本食が恋しいといった泣き言は一つも書かず、ホストファミリーに恵まれている話などを近況報告したのにこの大量の物資は、ホストファミリーにホームシックを疑われても仕方がない量ではないか。
ボクが段ボールから物を取り出していると、ホストシスターの姉、メギーが話しかけてきた
「何をしているの?」
「これはボクの家族が日本から送ってきた日本の食べ物とかだよ」
「日本の!? 見せて!」
2人で物を取り出していく。その中である商品がメギーの目に留まった。
「この赤と緑のインスタントヌードルは何?」
「それは赤いきつねと緑のたぬきだよ」
「きつね? たぬき?」
「あぁ、ごめん。赤のヌードルはうどん、緑の方がそば」
「ワオ、うどん、そば! どっちも食べてみたかったのよ!」
「メギー何をそんなにはしゃいでるの?」
テンションが高くなったメギーが気になりやってきた妹のロール。
「ロール! これがうどんとそばのインスタントヌードルよ」
「へぇ、そうなんだ。この写真の上に乗ってるやつは何?」
ロールがお揚げとかき揚げを指さす。
「そっちは豆腐を揚げたもの、こっちは野菜や魚を揚げた天ぷら」
「天ぷら!? 美味しそう!」
赤いきつねと緑のたぬきを見つめる2人。
「食べてみるかい?」
大きく頷く2人の目は好奇心に満ちキラキラした目をしている。
だが完成し、2つを両者半分くらい食べたところで争いが起こってしまう。
うどんよりそばの方が風味があるから緑のたぬきが美味しいと言い張るメギーと油揚げの方がかき揚げより汁を吸って美味しくなるしかき揚げは浸し過ぎるとドロドロになるから赤いきつねの方が美味しいと主張するロール。なんと食べてまだほんの数分で赤いきつねと緑のたぬきどっちが美味い論争が始まった。
互いに一歩も譲らずしばらくするとボクの方をみてどっち派なのかと尋ねられる。正直なところうどんよりそばの方が好き。だけどトッピングは油揚げの方が好き。そんなことを説明してもお互いに納得してくれるかわからない。しかもこの2人は喧嘩するとどっちかが勝つまたは泣くまで中々やめない。困ったものだ。
段ボールの方に目線を落とすとあるものが視界に映る。これも入っていたのか、それにたまに入れていたアイツを使えば……
この争いが収束するか分からないがやってみよう。
ボクは紺のきつねそばを手に取り調理を始める。そして完成した紺の月見そばに生卵を落とす。
「ボクが好きなのはこれだ!」
「おぉ、あなた最後に何を入れたの?」
メギーが尋ねる
「生卵さ、これを月見そばと呼ぶんだよ」
「えぇ?…… 生卵よ?」
怪訝な表情のロールが月見きつねそばを見つめる。
そしてボクは一心不乱にそばを啜る。
「オーマイガー」
メギーとロールが信じられないといった表情でボクの食べる姿を見ている。
その後、お互いに顔を見合わせ
「多分考えていることは同じね」
「そうね、この生卵入りそばより私達が食べてる2つの方が絶対に美味しいはずよ」
ボクが食べ終わる頃には2人は仲良く赤いきつねと緑のたぬきを分け合って食べていた。上手くいったようだ、というのも以前、食事で白米をホストペアレンツが炊いてくれた時のこと、余ったご飯を食べて良いと言われたボクはたまたまあった醤油と卵で卵かけご飯を作って食べた。すると皆驚いた顔でボクの行動を見た。何をそんなに驚いているのか尋ねると日本では当たり前かもしれないが海外では卵を生で食べる習慣がなく、必ず焼いたりして調理するのが当たり前だということを教えてくれた。だからボクの行動に驚いているしなんなら少し気持ち悪いとまで言われたことを思い出したのだ。
ボクが母から教えてもらったアレンジそばを2人に酷評されてしまったが争いは止まったからこれで良いんだ。完食し、また段ボールの中を物色すると手紙が入っていた。内容は家族の近況報告と、ホストファミリーに感謝の気持ちを伝えくれという伝言とホストファミリー、特にまだ少し幼いホストシスターにお菓子などをプレゼントしたいということで大量の物資を届けたのだ。そして手紙の最後には体に気をつけて迷惑をあまりかけないように残りの留学生活を楽しんでこいと書かれた一文があった。手紙を読み終えた時、ほんの少しだけ日本と家族が恋しくなったボクがいた。
※この話は事実を基としたフィクションです。
選べないよ 僕ってこんな奴だから @amadeusion
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