エピローグ
天蓋をつけたベッドには、真っ暗が嫌いな私の趣味で電飾がつけてあって、キラキラと夜の暗闇を星のように光っている。
彼のために枕とクッションも買った。ベッドシーツもレパートリーを増やした。私のためだけの空間に彼のために買ったものが増えた。
シーツだって、いつ彼が来てもいいようにこまめに洗濯をして、私の大好きな洗剤の匂いを保つようにした。部屋もこまめに掃除機をかけた。彼と一緒に買ったアロマスティックもある。
いつの間にか、慣れない一人暮らしの部屋も、彼がいたおかげで大好きが溢れた空間になった。
大好きな空間に、大好きな匂い、大好きな彼の匂いと彼の腕に包まれて私は幸せだった。
彼と別れて半年経つ。私の習慣は変わらない。私の部屋は変わらない。
アロマは残り少しになった。この匂いがなくなったとき、私はどうするのだろう。どうなっているのだろう。同じものを買うのか、新しいものを買うのか。彼を忘れているのか。他に彼以上に好きだと、一緒にいると落ち着くという人が現れているのだろうか。
新しい生活を送っていて、不安と孤独を抱えて溢れてしまいそうだった私にとって彼は心の支えであり、明日と未来の希望だったのだ。
流れ星のように本当に一瞬のことのように過ぎ去って、流れ星を見たときのレアで嬉しくて幸せな感情だった。
寂しい夜は毎日で、誰にも埋められなくて、彼の存在が忘れられない。あの手を握って眠りたい、あの腕に抱かれて眠りたいと、私の身体が彼を欲している。
彼はいるべき場所に戻ったのだ。
私は夢を見た。幸せな記憶。一夏の思い出。もう彼は私の前に現れないだろう。でも私は彼がいない夜も眠らなくてはいけない。眠る直前ベッドに寝転がり、光る電飾を見上げて彼を思い出すとともに、心から祈る。彼が今、孤独な夜を過ごしていませんように。幸せな毎日を過ごしていますように、できれば私以上に可愛くて私以上に優しくて、彼が支えてもらえるような、彼の心の支えになるような素敵な人でありますように。彼が幸せでありますように。でもたまに私のことを思い出してくれますように。
天井の星 @kyamchan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます