告白
彼氏彼女という名前のある関係になりたかった。私達は多分セックスフレンドでもなかったと思う。何回か身体を重ねた関係、寂しさを紛らわすために会える孤独者達。
お互い寂しがりやだったのだと思う。
「寂しい」「会いたい」というメッセージをお互いが送り、泊まりに来る日々が続いた。すぐに身体を重ねるようにもなった。彼は絶対に私に腕枕をしてくっついて眠った。途中目を覚まして寝返りを打つと、私の身体を引き寄せてまた眠った。暑い夏の夜、エアコンで涼しくしている夜は寝ぼけながら布団を私にかけ直して、くっついて眠る、そんなところも大好きだった。好きという言葉がなくても、彼の大切な一人になれているのかと錯覚するほど。
「好き」抑えられなかった。いつもどおり来て、私の隣ベッドに腰掛けて適当な番組を見ていて、そんなとき言ってしまった。言いたくなかった。でもやっぱり言いたかった。言ったら関係が終わるのかもしれないって考えていたけれど、彼にとって特別な人になりたかったのだ。もっとどこかにデートだってしたかったし、用もないのに電話だってしたかった。私のアパートの一室内だけの関係ではなく、もっと青空の下、二人手を繋いで歩きたかったのだ。
「どこが」そりゃあそうだ、私達は何もお互いのことを知らない。
「んー、なんでだろう、一緒にいてすごく落ち着く」
「嬉しい、照れる」
はぐらかされた、これ以上はだめなのだと。今なら、ここで止めれば、付き合えなくてもまた会うことができると思った。
本当はもっと一緒に居たい、付き合ってほしい、という言葉は出ずに、喉の奥に詰まって、出したくて、でも飲み込んだ。こんな関係でも、都合のいい相手だったとしても、本当に好きだったと思う。苦しいほど。こんな短期間で、こんな何も知らない相手を好きになることなど信じられないかもしれないが、そんなことが人生にはあるみたいだ。
私の好きが流されるのを流したのは自分だ。彼の気持ちはどうしても聞けなかった。いつか終わるかもしれない。でももしかしたらもっと期間が経って、お互いのことを知れば彼氏彼女という関係になれるのかもしれないという期待もあった。
彼も私への気持ちを言うことはなかった。でも会いたいとメッセージは来るのだ。私が生理だと言っても、一緒に眠りたいと。言われなかろうが、彼女にはなれなかろうが、私は彼に大切にされていると思っていたのだ。もしかしたら彼にとっては当たり前の優しさだったのかもしれない。でも、大切にされていると、少しは私に特別な優しさをかけていると信じたかった。
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