第23話 寝る皇子、ドリルモールの里を訪れる


「ミスリル…?」


思わずといった様子で周囲に散らばる他の鉱石も手に取り確認する


「鉄鉱石に黒曜石、こっちは金まであるだと…」


「そこにある石は欲しけりゃ好きなだけ持っていっていいモグよ?」


「いいのか!?」


「そんな魔力を込めると光るだけの石が欲しいなんてネルスは変わってるモグね」


固くて処理に困ってたから助かるモグとなんでもないことの様に鉱石を譲ると言うドリー。

ミスリルや鉄鉱石などは質の高い武器を作るために必要とされる。

しかし、己の肉体や魔力で十分戦っていけるロストアースの住人たちにとってそれは石ころに過ぎず、処理に困るというなんとも言えない理由で山積みにされていた。

それ故にドリーだけでなくネールスロースで暮らすギリーでさえも石を見て喜ぶネルスが理解出来なかった。


「ならありがたく貰おう。」


ミスリルを元あった場所に戻し、先導するドリーのあとを追う。

すると、開けた場所に辿り着いた。


「ここが俺たちドリルモールの里だモグ。今みんなを集めるからそこで待っててくれモグ。」


待っている間に里の様子を確認すると、そこら中に小さな穴が掘られており、そこを潜るとドリルモールたちの家にたどりつくようだった。

そんな里の様子をギリーと観察していると5人のドリルモールを連れたドリーが戻って来た。


「待たせたモグ。俺の奥さんのモリーと補佐役のドギー、ドビーとその奥さんたちモグ。」


「はじめましてモグドリーの妻のモリーモグ。なんでも移住のお誘いに来られたと聞いたモグ。」


モリーの言葉に頷くドギーとドビーとその奥さんたち。


「あぁそうだ。俺たちはもともとミノタウルスたちが暮らしていた場所のそばに新たに街を作った。今はそこに様々な種族が1000人ほどで暮らしてる。最近は育てている果物や野菜も収穫出来る様になってきて大分街らしくなってきたと思っている。」


「果物!?野菜!?新鮮な果物や野菜が食べられるモグ?」


思ってた以上の食い付きを見せるモリーたちを見てネルスとしては珍しく押され気味に答える


「あ、あぁ、そうだが?ドリルモールは食事に困っているのか?」


「そうなんですモグ。地下にいるからなかなか新鮮な野菜や果物は食べられなくてそれが悩みだったモグ。」


なるほどとこれまでのドリルモールたちの暮らしを想像し理解を示す。


「それに関しては心配しなくていい。食材は街でも取れるし、もし不足したとしてもさっきドリーがくれた石があれば他の街から大量に買う事も出来るだろう。」


「「「あんな石が!?」」」


「あぁあの中には街で売るととんでもない価値のモノが混ざってる。まぁ俺としては売るよりも街の住民の武器やアクセサリーなんかに使いたいがな。」


「武器になるのはありがたいンモ。でもどうして売らないンモ?」


「人間は欲深い生き物だ。俺たちの街やドリルモールたちが大量にミスリルを持っていると知ると戦争をしかけてくる馬鹿が出てくるだろう。それにいざ戦争になった時に武器の質でアドバンテージになるからな。皆を守るためにも強い武器になるような鉱石は街で使った方がいい。」


「そういうことかンモ。わかったンモ。」


「まぁ金や少量のミスリルは売って食事や服の購入にあてるがな。」


「その話を聞いて安心したモグ。食糧も心配せずに済みそうですし、何よりネルスさんが信用出来そうだと言うことがわかりましたモグ。私たちはネルスさんの街に行こうと思うモグ。」


目先の利益よりも住民たちの安全を優先すると言ったネルスを見てモリ-は信用できる人間だと判断し、移住を決断する。


「そうか!!これからもよろしく頼む!」


その後ドリー夫妻が里のドリルモールたちに移住の話を伝えに行き、97名のドリルモール達がネールスロースに移住することとなった。

また里の周辺に放置されていた貴重な鉱石はネルスの重力魔法でネールスロースに運び込まれる事になった。


ドリルモールたちはネルスの魔法やネールスロースの巨大な壁、街並みを見る度に歓声を上げ、住民達に歓迎された。


「家はどうする?地下の方がいいのか?」


「確かに暗い方が好きだけど、地下でないとダメとかではないモグ。みんなと同じ様な家で窓を小さくしてくれたらそれに住みたいモグ。」


「わかった。家が完成するまでは悪いが臨時用の宿を使っててくれ。」


「わかったモグ。俺たちはどんな仕事をしたらいいモグ?」


「たまにでいいからまた鉱石を掘ってきてくれればいいよ。あれがあれば街としては大助かりだ。」


その後、採掘担当となったドリルモール達は大量の鉱石を街にもたらし街の発展に大きく寄与する事となる。

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