第24話 従兄弟、東の街シュバーベンへ行く
リュークは今、彼の部下であるコクガたち黒豹族3人とブームとレーブの2人のミノタウロスの計5人と共に帝国東征将軍であるガルガロッソ将軍の治めるシュバーベンへと向かっていた。
「しっかし本当にこんな石ころがそんな高い値段で売れるんでやすか?」
「ああ間違いないぜ。こいつは帝国でも滅多にお目にかかれないミスリルって鉱石でな。しかもあれだけの量となると小さな国一つ買えるぐらいになるんじゃねえか?」
「ひょえええ。おっそろしいな。でも大将はそれを外に売り出すつもりはなく、加工出来る人材を探してこいってんだからおもしれえよなぁ」
「まったくだぜ」
リュークはフフと笑いながら今朝の出来事を思い返す。
いつも寝てばかりいるネルスが珍しく周辺の調査に行くと言って出かけたと思ったら、新しい住人だけでなくかなり珍しい鉱石も大量に持ち帰ってきた。
その翌日にネルスに呼び出されて行ってみると、いくつかの鉱石を持って東の街へ行って欲しいと頼まれたのだった。
「これを売ってくればいいのか?」
「いや、それだけではなく、武器として加工出来る職人を探してきて欲しい。ウチの街だと武器に加工出来る人間はいないからな」
「他所の街にミスリルが目立たないように加工してくれる職人がほしいってことか。で、金はあくまでもカモフラージュってわけね。」
「そうだ。金を売り込みながらミスリルの加工が出来て信頼の出来る職人と繋ぎを取ってくれ。」
「りょーかい。期待せずに待っててくれ」
「いや、大いに期待して待ってるよ」
ニヤニヤと笑みを浮かべ、リュークはその場をあとにした。
「ってな訳でまずはガルガロッソ将軍に挨拶してそれとなく探ってみるとしようか」
6人は一週間かけてシュバーベンの街へと到着した。
そのまま一行は城まで向かうと、ガルガロッソ将軍と会うため応接室に通される。
「お待たせしましたリューク様」
応接室でくつろいでいたリュークたちの前に筋肉隆々の軍服に身を包んだ獅子の獣人が現れた。
「久しぶりだなガルガロッソ将軍。」
「ガルガロッソの兄貴久しぶりでやすね」
「コクガたちもまた来てたんだな」
「ここは良い街だな。話には聞いてたが本当に獣人が多くてびっくししたぜ」
「ありがとうございます。この街はケルヌンノス獣国と面してますからね。」
「【獣王 白獅子】が治める隣国だな。好戦的な王だって噂だが不思議とウチとは戦争になってないんだよな」
「お陰でこの街は平穏で助かってますがね」
「でも同じ獅子の獣人だろ?ガルガロッソ将軍と隣国の国王は何か関係があるのか?」
色が違うとは言え、同じ獅子系の獣人であるガルガロッソ将軍に対し、縁戚関係ではないのか問うリューク
「ええ、なんでも私の祖先はかの国の王族から枝分かれしているらしいですよ。ところで今日はわざわざどういった御用ですか?」
「そうだ!すっかり忘れるところだったぜ。まずはこれを見て欲しい。ブーム頼む」
「わかったモ」
ドンッとブームが背負っていた荷物をガルガロッソ将軍の目の前に置く
「金ですか。こんなに大量にどうしたんですか?」
「最近ロストアースで見つかってな。これを換金してもらえないか?換金した金はこの街できっちり使い切るからおまけしてくれると助かる」
いきなり大量の金を目にして驚くガルガロッソ将軍に対し、換金を求めたリューク。
その話を聞きガルガロッソ将軍は考えるそぶりも見せずに承諾する。
「ネルス皇子やリューク様には獣人たちが世話になってますからね。喜んで換金させて頂きますよ。」
「助かるぜ。ちなみにガルガロッソ将軍が腰にさしてる剣ってミスリルだよな?」
「ええ、これは陛下から将軍位を授かった時に頂いた剣でミスリルで出来ていますよ」
「ちなみにそのミスリルの剣ってどこでメンテナンスしてるんだ?この街でもミスリルを扱える職人がいたりするのか?」
「これは帝都の専属鍛冶師にメンテナンスしてもらってますね。残念ながらこの街でミスリルを扱える職人はいませんので」
「やっぱそうだよな。ありがとな!」
その後金の換金を終えたリュークたちは街の商店や武器屋巡りをすることにした。
「やっぱりミスリルを扱える職人はいなかったでやすね」
「そうだな。街の武器屋にもミスリル製のものは置いてなかったしな~」
「でも結構質の良い剣が買えたモ」
何件かの武器屋を回り、それぞれが気に入った武器を購入することが出来、ほくほく顔で酒場へ入った6人。
そして酒も入ったことで、いかに自身の武器が優れているかの自慢大会が始まっていた。
その様子を時々チラチラと伺う家族連れがいたが、6人はさして気にすることはなく話を続けていた。
「おでのが一番モ。この見事な大剣で敵を粉砕するモ」
「いや、俺のショートソードの方が取り回しもしやすくていいでやすよ」
「「なんだと~!!」」
「カッカッカ、もうその話は何回も聞いたわ」
「でも残念でやすね。宝の持ち腐れになりそうでやすねこのミスリル」
「「「ミスリル!?」」」
「うぉっなんだ近ぇよ!」
コクガが呟いたミスリルという言葉にチラチラと様子を伺っていた家族がリュークの基へ詰め寄る。
「ミスリルがあるとは本当か!?」
「ミスリルなんて久しぶりね」
「ん、あたしは初めて!はやく見せて」
「なんだよ一体!」
「儂らはドワーフじゃ!!そのミスリル儂らに扱わせてくれんか!?」
それはミスリルという言葉に目を輝かせたキチガ…いや、愉快なドワーフ一家だった。
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