第18話 寝る皇子、可愛い客人を迎える
「ネルス様!起きて下さい!」
「んぁ?なんだ?そんなに慌てて。」
今日も今日とて昼寝をしていたネルスを叩き起こすのはチュータロウ。
「門番から対応に困るお客様が来たと連絡がありました。とにかく早く来てください」
かなり慌てた様子のチュータロウを見てもネルスは動じることなくトボトボと歩いて後ろをついて行った。
「だから働かせてほしいのです」
「いや、それはいいんだが私たちでは判断がつかないからネルス様に確認するまで待って欲しいんだゾ」
「ココはすんごく美味しそうな匂いがするです!」
「「ですです」」
門へ近づいていくと象人族のゾオンが誰かと言い争っている様子が見えてくるが…
「ゾオン?お前一体誰と話してるんだ?」
「これはネルス様。こちらの客人たちがいきなり現れたんだが、働かせてほしいの一点張りで会話が成り立たなくて困ってたゾ」
「いや、その客人の姿が見えないんだが」
「ココにいるです」
「ん?」
ネルスが視線を下に向けると20cm程で背中から羽を生やした子どもの様な生き物がうじゃうじゃと群がっていた
「もしかして妖精か?」
「そうなのです。僕たちは妖精族のブラウニーです。ここからすんごく美味しい匂いするから働かせてほしいのです」
「よっ妖精?」
「ブラウニー!?」
チュータロウたちは滅多に他種族の前に姿を現さない妖精族が現れたことに驚きを隠せない
「そうか。俺がここで領主をやってるネルスだ。ウチに来たいってんなら歓迎するが、その前に確認させてくれ。美味しい匂いってのはなんのことだ?」
「僕たちは果物が大好物なのです!なんだか最近この辺りから急に美味しそうな匂いがしてきて我慢出来なかったのでみんなで移住しに来たです!」
先日、栗鼠人族たちが行っていた果樹園がようやく実をつけたので初めての収穫が行われたばかりだった。
そして野菜よ同様、濃密な魔力を吸った果物は他の街で採れる物とは比べ物にならないくらい美味となっていた。
「あぁ、最近この街でも果物が採れるようになったからだな。街に住んで働いてくれるなら好きなだけ食べてもかまわんぞ。ちなみにブラウニーは何が得意なんだ?」
「家事なら任せるです!掃除・洗濯はおちゃのこさいさいです!」
「家事か!家事を担当してくれるとなると町民たちの手が空いて助かるな。まずは俺の屋敷で実力を見せてくれ。」
「このマロンに任せるです!」
マロンたちを連れたネルスたちはブラウニーの実力を確認するために街の中央にあるネルスの屋敷へ向かった。
「「「リンゴ・メロン・イチゴ~♪」」」
「ふぅぁ~美味しそうな匂いがするです~」
「「ですです!!」」
「ブラウニーたちはいつもこうなのか?」
外壁内で育っている果物を目にしたブラウニーたちが謎の歌を歌ったり、楽しそうに声をあげている
「いつもはここまでではないです。これだけ美味しそうな果物に囲まれるとこうなっちゃうです!」
「賑やかになるのは歓迎するゾ」
「しかしこれだけの数で歌うと圧巻だな」
門で見た時も多いと思ったが、屋敷へ向かおうとするとどことかしことブラウニーたちが現れ今や300人以上のブラウニーが集まっていた。
「何をしておるかと思ったらブラウニーか。また珍しいのを誑かしてきたのじゃ」
「フォッフォッフォ。若の周りは賑やかですのぅ」
ワイワイガヤガヤと騒いでいると屋敷に到着し、その様子を見に来たフランメとフレデリックがネルスに声をかける
「じゃあ頼むぞ、マロン」
『ちちんのぷい!』
マロンが人差し指を立たせて一振りすると屋敷がピカピカに磨きあがる
「「な、なんじゃこりゃー」」
あまりの規格外ぶりに見たいた者たちは開いた口が塞がらない
「お前たちを全力でこの街で歓迎する!果物も好きなだけ食べていい!だからずっとこの街に住んでくれ!」
「やったー!」
「「食べ放題です!食べ放題!食べ放題!」」
「ち、ちなみになんでも綺麗に出来るのですか?」
横から遠慮がちにチュータロウが質問を投げかける
「どんな汚れでも綺麗に出来るです!」
それに対し胸を張って答えるマロン
「では、トイレも綺麗にしてもらえませんか?」
「任せるのだ!でもトイレは何回も行くのは臭いので浄化を状態維持にして魔法をかけておくです!」
「そんなことが可能なのか?」
「出来るです!これでトイレはずっと綺麗で臭くないです」
これまでネールスロースではトイレは水魔法で簡単に薄めたものをフレデリックが作った下水道を経て下流に流すという処理を行っていた。
薄めたといってもやはり匂いは少しあり、特に嗅覚の強い獣人たちにとっては悩みの一つとなっていた。
しかし、ブラウニーたちはそれをあっさりと解決してみせた。
「これから街の衛生面は全面的にブラウニーたちに任せる!頼んだぞマロン!」
ネールスロースに明るく可愛らしいブラウニーたち337名が加わったのだった。
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